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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第二章:社会構造の変革(魔物との共生)
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第三十四話:聖女三姉妹と禁断の調理実習

運動会の熱狂が冷めやらぬ村に、新たな来訪者が現れた。

純白の法衣に身を包んだ、麗しき三人の乙女。聖教国が誇るエリート集団「審問聖女隊」――通称、聖女三姉妹である。


「……あ、あれはコンスタンス大司教様? なぜ……なぜ骸骨と肩を組んで踊っていらっしゃるの!?」


長女のクラリスが絶句する。彼女たちの目の前では、運動会の打ち上げ(通称:バーベキュー大会)が開催されており、元特使たちが魔族と一緒に肉を焼き、談笑していた。


「おのれ、ツヨシという男……。よほど強力な精神汚染魔法を使っているようね」

次女のベアトリスが杖を構える。

「お姉様、まずは様子を見ましょう。あの男の『術』の正体を暴くのが先決です」

三女のドロシーが冷静に分析する。


そんな彼女たちの前に、エプロン姿の老人が現れた。


「おや、新しいお客さんかな? ちょうど良かった、今から『調理実習』を兼ねた炊き出しを始めるところなんだ。君たちも手伝ってくれるかい?」


ツヨシの屈託のない笑顔。その背後には、彼を「神」のように慕う魔王ゼノンと、ライバル心を燃やすステラの姿があった。


【特別授業:カレーライスという名の衝撃】


ツヨシは彼女たちの正体を知ってか知らずか(おそらく知っている)、三人に包丁とエプロンを持たせた。


「いいかい、料理は教育だ。火加減、水加減、そして何より『相手を思う心』。これが欠ければ、どんな魔法も料理も人を幸せにはできない」


聖女たちは、ツヨシの威圧感ゼロ、しかし教員としての年季が入りまくった「指導」に、思わず「はい、先生!」と返事をしてしまう。


今回のメニューは、ツヨシがスパイスから調合した「特製・魔界野菜のカレー」である。


「……何ですの、この香りは? 鼻腔を突き抜け、魂を揺さぶるような……」


クラリスが一口食べた瞬間、彼女の脳内に「草原を駆け抜ける純白の一角獣」のイメージが広がった。


「辛い……。でも、止まらない。このジャガイモのホクホク感、聖教国の配給食とは比べ物になりませんわ!」

ベアトリスが涙を流しながらスプーンを動かす。

「先生……おかわりを、おかわりをお願いします……」

ドロシーはすでに三杯目に突入していた。


【ステラの防衛本能】


その様子を、ステラがじっと見つめていた。


「(……いけません。あの三姉妹、ツヨシ様の料理に完全に胃袋を掴まれていますわ。これでは『教え子』という名のハーレムに新入生が加わってしまう……!)」


ステラはツヨシの隣を確保し、甲斐甲斐しく汗を拭く。

「ツヨシ様、お疲れではありませんか? デザートのプリンは、私が魔法で冷やしておきましたわ」


「おっ、気が利くねステラさん。流石は私の自慢の教え子だ」


ツヨシに頭を撫でられ、ステラは勝ち誇ったような顔で聖女たちをチラリと見た。聖女三姉妹の間に、妙な火花が散り始める。


【その頃、聖教国では】


「……まだか。聖女たちからの報告はまだか!」

審問官長が憤怒に震えていた。


そこに届いた一通の通信書。

『先生のカレー、最高です。現在、ナンを焼く修行に入ったため、帰還は無期限延期とします。 追伸:ここの魔王様は意外と話が分かります』


「……どいつもこいつも! 洗脳だ! 完璧な洗脳だ!」


聖教国はついに、最終兵器である「異端審問騎士団」の総動員を決定しようとしていた。


しかし村では、ツヨシが新しい教え子たちに「キャンプの火起こし」を教えている。

「いいかい、マッチがない時は摩擦熱。これ、テストに出るからね」


異世界の脅威よりも、ツヨシの「生活の知恵」の方が、着実に世界を塗り替えていた。

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