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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第二章:社会構造の変革(魔物との共生)
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第二十八話:魔物インターン、村へ行く

「皆さん、おはようございます。今日から一週間、我が村で『社会科見学兼・労働体験』を行う特別講師の皆さんです」


ノアの村の中央広場。ツヨシの爽やかな挨拶とは裏腹に、村人たちは石像のように固まっていた。

それもそのはず、ツヨシの背後に整列しているのは、重装備のオーク三体と、目から怪しい光を放つスケルトン五体、そして引率役(学級委員長)のデス・バロンだったからだ。


「ツ、ツヨシさん……これは一体、どういう状況で?」

村長のノアが、震える声で尋ねる。


「ああ、魔王軍との業務提携ですよ。彼らの有り余る筋力と不眠不休の特性を、村のインフラ整備に活用させてもらうことにしました。もちろん、私が責任を持って『指導』します」


ツヨシはそう言うと、手にした出席簿でオークの腹をパチンと叩いた。


「いいかね、オーク君。君たちの今日の目標は『威嚇』ではなく『共生』だ。村人に挨拶する時は、斧を置いて、語尾に『です・ます』をつけなさい。いいな?」


「ブォッ……ハイ、ワカリマシタ……デシュ」


「よろしい。では、第一作業班(オーク組)は北側の灌漑用運河の掘削。第二作業班(スケルトン組)は、夜通しの道路舗装。夜間勤務手当として、後で魔力結晶を支給するからね」


村人たちは最初こそ悲鳴を上げて逃げ惑ったが、ツヨシの徹底した管理教育により、魔物たちが驚くほど従順に働いているのを見て、次第に表情を変えていった。


特にスケルトンたちの働きぶりは目を見張るものがあった。

彼らには「疲れ」という概念がない。ツヨシが設計した「ローラー式道路転圧機」を、無表情(そもそも顔に肉がないが)で引き続ける姿は、まさに究極の重機だった。


「……信じられん。あのスケルトン、私が三日かかるはずだった石運びを、たった一時間で終えてしまった」

村の大工が、ポカンと口を開けて呟く。


一方、オークたちは休憩時間に配られたツヨシ手作りの「特製おにぎり」に涙していた。

魔王城では「奪い合い」か「生肉」しかなかった食生活に、日本の「おもてなしの心(塩加減絶妙)」が深く突き刺さったのだ。


「これ……ウマイ……。オレ、ニンゲン……コロス……ヤメル」


「おやおや、食育の効果がすぐに出たね」

ツヨシは満足げにノートに筆を走らせる。


その日の夕方、女神ステラが(いつものようにポテトチップスを片手に)空中から現れた。


「ちょ、ちょっとツヨシ! 天界の監視モニターがエラー吐いてるんだけど! 『魔王軍の凶悪度が急低下し、勤労意欲がカンストしました』って、どういうこと!?」


「ステラ様、良い教育は種族を救うんですよ。次は魔王ゼノン君を呼んで、秋の収穫祭の企画会議プレゼンをやらせようと思っていましてね」


「アンタ、もうそのうち『世界平和』とかいうレベルじゃなくて、『多種族共生型・超福祉国家』とか作りそうね……」


ツヨシの開拓生活は、もはや単なるサバイバルではなく、異世界のことわりそのものを書き換える「教育改革」へと進化しつつあった。

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