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異世界転生:66歳元教員ツヨシの悠々自適な開拓生活  作者: 羽越世雌
第一章:教務部長の村おこし
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第十七話:魔法の「ファイアウォール」

デマ放送の騒動が落ち着いたのも束の間、ノアの村のネットワークにこれまでにない異常が発生していた。


「顧問! 管理コンソールに過負荷オーバーロードが発生しています! 未知の術式が、外部からサーバー……いえ、マナ回廊に不正アクセスを試みているようです!」


情報処理部の実習生エルナが、青ざめた顔でキーボード(魔導入力盤)を叩く。画面上では、赤いアラートが激しく点滅していた。


「ほう、デマの次は『サイバー攻撃』ですか。学校のネットワークにいたずらを仕掛けてくる生徒はいたが、これは少々規模が違いますね」


ツヨシは老眼鏡をくいと上げ、冷めた緑茶を一口飲んだ。かつて情報処理担当の教員として、成績処理の時期にセキュリティをガチガチに固めていたあの緊張感が蘇る。


「エルナさん、パニックにならない。まずは『パケットフィルタリング』だ。オンライン百科事典の『暗号化理論』に基づき、認可されていない魔力波をすべて遮断ドロップしなさい」


「やってみます! ですが、敵の攻撃は千変万化で、遮断してもすぐに別の『ポート』から侵入してきます!」


犯人は、王都の急進派に雇われた「影の魔導士」たちだった。彼らはノアの村の利便性の要である「魔導タブレット」を遠隔操作し、村の機能を麻痺させようとしていたのだ。


「アルフォンス先生、出番です。敵の攻撃パターンは、かつての『分散型サービス拒否攻撃(DDoS)』に酷似している。私のオンライン百科事典にある『負荷分散ロードバランサー』の術式を展開してください。マナの奔流を一箇所に集中させず、村中の地蔵(中継局)に逃がすんだ」


「ふむ、知識を分散させて力を殺ぐというのか。ツヨシ殿の知恵は、常に魔法の常識を逆転させるな」


アルフォンスが杖を振ると、村全体のネットワークに幾重もの魔法の「壁」が出現した。


攻撃が防がれている間に、ツヨシは反撃の準備を進めていた。


「ただ守るだけでは、教員は務まらん。次は『ハニーポット』、つまり甘い罠を仕掛けよう。エルナさん、偽の『機密情報フォルダ』をわざと脆弱な場所に配置しなさい。そこをクリックした瞬間、敵の術式をこちらに逆流バックトレースさせる」


数分後、敵が罠に食いついた。


「捉えました! 攻撃源は……西の山間部、古い遺跡の跡地です!」


「よし、校外学習の時間だ。ドローン編隊、発進。ターゲットを物理的に特定し、私の『高圧洗浄杖』の座標を同期させなさい。……アルフォンス先生、仕上げに『情報の汚染除去ウイルススキャン』をお願いしますよ」


ツヨシは電動アシスト自転車を全力で漕ぎ出し、ドローンの誘導に従って現場へと急行した。

遺跡の陰で怪しげな水晶玉を囲んでいた魔導士たちは、上空から降ってきた高圧の水流と、アルフォンスの精密な雷撃によって、デバイス(魔導具)ごと一掃された。


事件が解決し、平穏を取り戻した放送センター。


「顧問……凄すぎます。魔法の知識がなくても、理論だけで最強の魔導士を圧倒してしまうなんて」


「エルナさん、これは魔法じゃない。ただの『管理』だよ。どんなに強力な力も、正しいルールと構造アーキテクチャがなければ、ただの暴走に過ぎないからね」


ツヨシは、オンライン百科事典の『ネットワーク・セキュリティ』の項を閉じ、安堵の息を吐いた。


「さて。これでしばらくは静かになるだろう。……アルフォンス先生、今夜はウイスキーを飲みながら、この『ファイアウォール』を村の常設設備にするための会議をしましょう。名付けて『校内ネット検閲……』いや、『ノア・シールド』だ」


六十六歳のツヨシ。

彼の「ニュータウン計画」は、今や異世界で最も安全な「デジタル・オアシス」を構築しようとしていた。


その頃、王都では。

最強の魔導士たちが一人の「老人」に敗れたという報を受け、ついに王国の「賢者会議」が動き出そうとしていた。

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