第百話:建国:ツヨシ・エデュケーション・ステート
王都が発行していた不換紙幣は、今や冬の焚き付けにもならない紙屑と化した。飢えた民衆が最後に辿り着いたのは、かつて「僻地」と蔑まれたツヨシの開拓地だった。
ツヨシは押し寄せる数万の群衆を前に、丘の上からメガホンを手に取った。
「皆さん、落ち着いて聞いてください。ここには施しはありません。ですが、『役割』と『学び』ならいくらでもあります」
1. 憲法第一条「終生学習」
ツヨシは新しい国の名を**『聖学公国』**と定めた。この国の基盤は軍事力でも黄金でもなく、「知識」である。
「この国に入る条件はただ一つ。一日一時間、読み書きか算術、あるいは何らかの技術を学ぶこと。学ぶ意欲がある者は、我が国の市民として歓迎します」
2. インフラのデバッグと再生
ツヨシは、かつて王都の騎士団だった男たちに剣を置かせ、スコップを持たせた。
「重力魔法を土木工事に応用するんだ。力任せではなく、ベクトルの計算をして効率よくね」
水道局: 浄水魔法と活性炭フィルターを組み合わせた、全戸水道完備。
保健室: 「魔導CTスキャン」を導入し、早期発見・早期治療を実現。
給食センター: ツヨシの品種改良した「スーパー・ポテト」が、栄養不足の子供たちを救う。
3. 民主主義の「ベータ版」導入
ツヨシは自分が王になることを拒んだ。
「僕はただの教員ですから。定年退職した身で、政治の責任を取るのは御免ですよ」
代わりに導入したのは、ツヨシ・コイン(TC)を用いた「直接民主制投票システム」だ。
「国の予算をどこに使うか。自分たちのスマホ(魔導端末)で投票してください。ただし、関連する科目のテストに合格した人だけが、その分野の投票権を得られる仕組みです」
4. 王族の「再教育」
捕らえられた王族や貴族たちは、処刑される代わりに「公立図書館の司書」や「清掃作業員」としての奉仕活動を命じられた。
「元国王陛下、床の拭き掃除が甘いですね。物理的に摩擦係数を考えれば、もっと効率よく汚れを落とせるはずですよ」
ツヨシの厳しい指導(教育)により、かつての暴君たちは「勤労の喜び」と「科学的思考」を強制的に学ばされていった。
エピローグ:百話目の放課後
夕暮れ時、ツヨシは新しく完成した学校の屋上で、カイルと並んで沈む夕日を眺めていた。
「ツヨシ様、ついに国が形になりましたね。かつての王都よりもずっと平和で、活気に満ちています」
「……まだ、ベータ版(試作品)だよ、カイル。でも、学び続ける限り、この国は腐敗しないはずだ」
ツヨシはポケットから、元の世界で使っていたチョークの粉がついたままのハンカチを取り出した。
「さて、明日の『公民』の授業の準備をしなきゃな。次は……そうだな、『三権分立』について教えてあげよう」
( 完 )
最後まで読んでいただきありがとうございました。明日からは「ツヨシ」シリーズ第2弾が始まります。




