7/7
第7章:バクと熱帯魚
夢を喰わなくなったユメクイだから、“僕”はバクと名づけた。
夢を喰うのではなく、夢を守る存在。
包み紙の服を着て、黒い目で世界を見ている。
先生が言った。
「じゃあ、みんな、夏休みの作品を出してね」
教室がざわつく。
机が隣り合うアヤと“僕”は、目を合わせた。
「いっせーのーで」
アヤが出したのは、熱帯魚。
“僕”が出したのは、バク。
先生が言った。
「これは…どちらも、すごく個性的だね」
アヤは言った。
「これはね、か〜なしい熱帯魚って言うの。
ネイルは、ぜんぶ誰かの忘れた記憶なんだ」
“僕”は言った。
「僕のは…」
そのとき、アヤが小さく笑って言った。
「わたし知ってる。それ、〇〇〇〇…」
その言葉の続きを、“僕”は聞かなかった。
---