表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第5章:夢の終わりとユメの選択

夢が、崩れ始めていた。

水槽のガラスにヒビが入り、熱帯魚の形をした飴玉が溶けていく。

色が流れ、床に染みを作る。

赤、青、黄色、オレンジ──それらは、記憶の断片だった。


ユメは、静かに立っていた。

キャンディーは、ドレッドヘアの包み紙をほどきながら、何かを探していた。

「夢が終わる時は、少しだけ痛いの」

そう言って、銀色の包み紙を差し出した。


「これは、ラストキャンディー。

 味は秘密。

 でも、食べたら選べる。

 ユメとして残るか、“僕”として目覚めるか」


“僕”は飴玉を見つめた。

包み紙には、何も書かれていなかった。

ただ、指先に触れると、少しだけ温かかった。


ユメクイが戻ってきた。

今度は、何の色も纏っていなかった。

真っ白な影。

記憶を喰い尽くした後の、空っぽの姿。


ユメは言った。

「ユメクイは、夢の終わりを告げるの。

 でも、終わりは始まりでもあるよ」


キャンディーはサングラスを額に戻した。

「色を拒む方法は教えたけど、選ぶのはあなた」

そして、笑った。

その笑い声は、もう“僕”の記憶にはなかった。


“僕”は飴玉を口に入れた。

味は──わからなかった。

でも、涙が出た。

冷たくて、温かくて、懐かしくて、怖かった。


水槽が割れた。

夢が崩れた。

ユメクイが消えた。


ユメは、“僕”を見ていた。

「さよなら、ユメちゃん」

“僕”は言った。

でも、ユメは微笑んだだけだった。


目を開けると、現実だった。

でも、口の中には、まだ飴玉の味が残っていた。

それは、涙ミントの味だった。


---


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ