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第3章:キャンディーの訪問者

キャンディーは、ユメの友達だった。

でも、“僕”はその名前に覚えがなかった。

夢の中で出会ったはずなのに、どこか現実の匂いがする。


キャンディーは、ドレッドヘアだった。

髪の毛には、飴玉やそのカラフルな包み紙が巻き付けられていた。

赤、青、黄色、オレンジ。

水槽の魚と同じ色。

包み紙が風に揺れるたび、カラカラと鳴った。


額にはサングラス。

真っ黒なレンズ。

キャンディーは言った。


「色を拒みたい時、色を見るのに疲れたら、こうするの!」

そう言って、サングラスを目にかけた。

世界が黒く塗りつぶされる。

色の洪水から逃れるための、夢の中の避難所。


“僕”はその方法を見て、少しだけ戸惑った。

それは、僕には必要のない方法だった。

でも、キャンディーが親切に教えてくれたから、僕は言った。


「ありがとう」


キャンディーは笑った。

その笑い声は、どこかで聞いたことがある。

“僕”の記憶の中にある、誰かの声。

母か、姉か、昔の恋人か。

でも、思い出せない。


「ユメちゃん、今日の夢はどんな味?」

キャンディーが尋ねた。


ユメは少し考えてから、答えた。

「今日は…ピーチとペッパーを混ぜるね」

「ピーペッパー味よ」


キャンディーは満足げに頷いた。

「それなら、ユメクイも簡単には見つけられないわね」

「うん、だから隠してるの。夢の底に」


水槽の底には、色とりどりの飴玉が沈んでいた。

金魚の形をしたものもある。

それは、甘くて、少しだけ痛い味がした。


ユメクイの影が、水槽の奥で揺れていた。

キャンディーの髪の色に似ていた。

赤、青、黄色、オレンジ。

夢を喰う影は、キャンディーの後ろに立っていた。


「キャンディー、後ろ…」

“僕”が言おうとした瞬間、ユメが振り返った。


「知ってるよ。あれは、私のペット」


ユメクイは、ユメの夢を守る存在だった。

でも、時々間違えて、ユメ自身の夢を喰ってしまう。

だから、キャンディーが必要だった。

夢の味を調整する、夢の調味師。


「ピーペッパー味は、ちょっと刺激的だけど、記憶には残るわよ」

キャンディーはそう言って、飴玉を一つ取り出した。

それは、金魚の形をしていた。


「食べてみて、“僕”」

ユメが差し出した飴玉を、“僕”は受け取った。

口に入れると、甘くて、少しだけ痛かった。


夢の味が、現実に近づいていた。


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