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月守アポロの鬱屈  作者: 美水
第五章:発覚
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第五話:解決

 母さんが帰ってきた。時計を見ると19時前だった。母さんは


「疲れた~」


 と言いながら持っていたハンドバッグを自分の身体ごとソファに放り投げた。


「手くらい洗いなよ……というか……」


「何よ」


 母さんに面と向かっていうのは少しはばかられたが僕は何か言わないといけないと思った。きちんとけじめはつけないと。


「さっきは、ありがとうございました」


「何言ってんのよ。水臭いわ」


 母さんはそう言うと


「ちょっとそこに座って聞きなさい」


 と僕が帰ったあとの出来事を話し始めた。


「アポロが帰った後、私と教授はあなたの後姿が見えなくなるまで見送った。それでね……」


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「先ほどは失礼なことを言いましたね」


 鈴宮教授はこう言ったの。私はこう返したわ。


「いえ……胸が痛みました。お父様は娘さんのことを心より大切にされているのですね」


「はい。親ならば当たり前です。まあお茶でも飲みながら話しませんか」


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「そう言って鈴宮教授は私をリビングに案内してくれたのよ。レモンティーを入れてくれてね。でもちょっと甘みが足りなかったわね。私だったらもう少し砂糖を足すわ」


「そんなことどうでもいいから! 」


「ああごめん。それで……」


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 お茶に口を付けた後、教授はこう問うてきたの。


「あなたはアポロ君のこと信頼しているのですか? 」


「え? 」


「いえ、私から見てアポロ君は人のこと信頼していないようにうつりましたので」


 私は少し黙っちゃったわ。だって本当のことだもの。そしてこう言った。


「……そうですね。うちのアポロは昔一時期いじめられていたんです」


 鈴宮教授は黙ったわ。私は続けた。


「それはアポロって言う名前が原因でした。アポロという名は私がつけたんです。私、神話に出てくるアポロンが好きなんです。理由はさておき、アポロには太陽のように明るい子に育って欲しかった。でもいつしかあの子は太陽とは似ても似つかない暗い子になってしまった」


 鈴宮教授はずっと黙ったままだった。私の話に真剣に耳を傾けていてくれたのね。


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「暗いって……ま、本当のことだけどさ」


 僕は答えたが母さんは


「ごめんねアポロ。これには続きがあるからよく聞いて」


 と言ったので、僕は


「うん」


 と答え話の続きを聞くことにした。


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 私は続けたわ。


「でもあの子は私にとってはまさしく太陽なんです。あの子がいるだけで私は救われる。頑張ろうって思える。あの人が、元夫が残してくれた宝物なんですから」


「宝物……」


「そうです、宝物です。月子さんもお父様にとって宝物でしょう。だからお願いです。私はあの子の願いを叶えてやりたい。月子さんとお友達を続けさせてはくれないでしょうか」


 鈴宮教授は少し黙って、くすくす笑ったのよ。そしてね。


「……あなたにはかないませんね。お母さん、私のことが怖くありませんか? 」


「いえ、全く。だってあなたは月子さんのお父様でしょう? 」


「……はい、月子の父親でありよき理解者であるつもりです。……それでも私はあれだけ()()()()()のですよ? 怖いのではありませんか? 」


 私はそれを聞いて少し安心したの。『怒っている』ではなくて『怒っていた』だったからね。そしてこう答えたの。


「怒る気持ちは痛いほどわかります。私でも同じように憤る。息子が怪我させられたとしたら、クレームをつけにいきますよ。それが子供を守る親の役目ですから……。でも今回のことは全部アポロの責任、ひいては親である私の責任です。心からお詫びします。申し訳ございませんでした」


 すると教授はこう言ったの。


「わかりました。私の考えは親のエゴですね。娘もおたくの息子さんももう高校生だ。親がいつまでも干渉するのもおかしな話かもしれません」


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「はい、おかしいですよ」


 話の途中だが僕は母さんのその言葉に


「え、母さんそう言ったの? 」


 と突っ込んだ。すると母さんは


「心の中でね。本人に言うはずないでしょう」


 とケロッとした顔で答えた。全くふざけた母親だ。僕と全く似ていないんだから……。


「まあ……」


 そう反応したが僕は「でも母さんなら言いかねないな」と思った。しかし反論されそうなので胸に止めておいた。


「ということは鈴宮教授を説得できたっていうこと? 」


 僕がそう尋ねると母さんは


「まあそうね」


 と答えた。その顔は晴れがましく、どう? 私やったわよ! と言わんばかりに誇らしげだ。僕はそんな母さんの表情を見て安心してしまった。そして安堵の涙と笑い声をおなかの中から思い切り出した。その日は僕も母さんもすぐに床に就いた。そして、僕は久しぶりにぐっすりと眠れたことを喜んだ。

ご覧いただきありがとうございました。今回はアポロの母親に語らせる、という仕様になっております。わかりにくく、うまくストーリーが進んでいない可能性もございますが、ご容赦いただけますと幸いです。

結果的に、アポロは月子と今後も仲良くしても良い、と鈴宮教授に公認されたことになります。よかった!


次回も読んでくださいますと嬉しいです!

(次回:決着)

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