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月守アポロの鬱屈  作者: 美水
第五章:発覚
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第三話:母との誓い

「バカじゃないの!!! 」


 帰宅後、連日の出来事を話すと母さんに怒られた。


「あんたね……もうダメだわ。母さん限界だわ。実の息子として恥ずかしいわ」


「ちょっとちょっと、そこまで怒ること……? 」


「当たり前でしょ? 月子ちゃんがいじめられてるのよ」


「まだ確定じゃないから」


 椅子に浅く腰かけていた母さんはまた身を乗り出して、僕に喧嘩をけしかけるように怒鳴り散らす。まあ僕が悪いのだから自業自得なのだけれど。


「そうねぇ……母さん天体観測の日もあんたのこと、なんか変だと思ってたのよね。まさかそんなことがあったなんてね」


「うん……」


「というかね、もっと早く言いなさいよ!! 母さん何とかしたわよ! 月子ちゃんの親御さんに謝りにも行ったし」


「余計なことしないでよ」


「何言ってんの?! あんたって子は本当もう……情けないわね……世の中には正直に言わないといけないこともあるのよ」


「親にしりぬぐいさせるわけにもいかないし……」


「それは単にアポロが格好着かないからでしょ? ダメよ……そんなんじゃ! 」


 母さんは束の間少し目線を落とした。そして顔を上げ僕の目をしっかりと見つめてこう言った。


「何事もはっきりと打ち明けることが大事な時があるのよ。今はあんた一人で抱え込んで解決も何もできない状態になっている。それじゃ本末転倒だってことわかるでしょ。月子ちゃんも親御さんのことも心配させたことになるのよ。それは神に背いたってこと。アポロには『誠意をもって人を助ける』そんな人間になって欲しかった」


 そしてこう続けた。


「別に『すべての人を守れ』だなんて言ってるわけじゃないわ。せめて自分の周りの、大切な人だけは守りきる。私はあなたにそう育って欲しかったのよ。でも今からでも間に合う。明日、一緒に鈴宮さんの家に謝りに行こう」


 僕は少し考えたが母さんが正しいことは明白だった。


「うん」


 と僕は答えた。それにしても母さんのこんな真剣な顔を久しぶりに見た気がする。


 次の日、学校は普段通りあったが僕は母さんと放課後月子の家に謝罪に行くことに決めた。時刻は17時ちょうどだ。僕は部活動もやっていないし、月子もあれから屋上に行っていないようだ。17時に鈴宮教授が自宅に居るかはわからないのだが、それでもことは早い方が良い。母さんは


「絶対に早い方がいいわ。明日にしましょう。もしお父様がご不在なら再度伺いましょう」


 と言っていた。そうだ、と僕も思った。月子に怪我をさせた日からもう数日が過ぎている。なのに僕はきちんと彼女に謝れていない。保身に走ってばかりで人とうまくかかわることもできていない。


「自分のこと情けない、なんて言わないでね」


 母さんが僕に対してこう言った。


「アポロは今まで他者と関わってこなかっただけ。だからこれから真剣に関わっていけばいいだけよ。そのためにもまず今回のことにけじめをつけないとね」


「うん」


「大丈夫。アポロはちゃんと信念を持ってる。月子ちゃんのことが好きなんでしょ? 」


「……うん」


 僕は答えた。


「その気持ちだけがあればなんとかなる場合だってあるわ」


 母さんはなんでもお見通しだな。僕は幼い頃から母さんの背中に父さんをも見てきた。母さんは父さんのような存在でもあった。だから僕と母さんはうまく家族関係を築いていけたのかもしれない。



ご覧いただきありがとうございました。二回連続で投稿させていただきます。(話の筋的にわけた方がよいと思いました)

一つの文字量が少なくて申し訳ございません……。


この話でアポロの母親とアポロとの『絆』のようなものが活かされました。私の思い描くアポロの母親像は快活な女性。そして母性と父性を併せ持つパワフルな人です。

伝わっているといいな、と思っています……!


次回も読んでくださいますと嬉しいです!

(次回:反論)

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