第二話:神話と思い出
それからしばらくが経った。僕は少し大きくなって小学生に成長した。あの頃の会話をぼんやりと覚えており、名前の由来でもある神が登場するギリシャ神話に興味を持ち始めた。
僕が通っていた小学校の図書室では扱っていなかったため、近所にある図書館まで足を運んだ。母さんが大切に持っていたギリシャ神話の図鑑はもうぼろぼろで、ページが千切れていたり、セロファンテープで補強されていたりで、到底読める状態ではなかった。
母さんは
「ごめんねえアポロ。この本はお母さんの宝物だからあげられないの」
そう言って悲しそうな顔をした。
僕は
「母さんの宝物は僕なのに、どうしてこの本はもらえないんだろう?」
と内心腹が立ったが、それでもその本が父さんの遺品だと知ってからは、そんな感情は消え去り、どんどんギリシャ神話の世界に引き込まれていった。
僕は月の女神、アルテミスが好きだった。
月の女神である彼女は純潔を貫き、いつだって皆のために身を削る。快楽主義な他の神々と比べ、アルテミスはまるで神々しく、目の前にいたとしても近づいたりできない程の光を放っているのだろうな、と子供ながらに思ったものだ。
しかし月は自分一人では輝けない。その時、母さんがアポロンが好きな理由がなんとなくわかった気がしたのだ。
「父さんの好きな神は何だったのだろうか」
ふとそんなことを考える。母さんは僕にアポロという名前をくれた。でも本当に太陽神アポロンからとったのだろうか。僕には知る由もない。
ご覧いただきありがとうございます!どうでしたでしょうか……?今回も文字数は少なめです。今後調整していく予定です。次回もぜひよろしくお願いいたします。
(次回:アポロの由来)