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月守アポロの鬱屈  作者: 美水
第五章:発覚
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第一話:初動

 月子は驚いていた。僕が立ち去った後教室に呆然としたようすで入ってきた。そして自席につこうとしたが


「鈴宮さん、そこ私の席……」


 とクラスの女子生徒の席に座ろうとしていた。


「ああ、ごめんごめん。ぼーっとしてた」


「いいよ。なんか様子がおかしいと思った」


 女子生徒が顔を近づけて


「また藤田になんかやられた? 」


 と聞いた。


「まさか。何もやられてないよ」


「そっか。それならよかった」


「心配してくれてありがと」


 彼女は千葉カレン(ちばかれん)。なんだ、僕以外の人にもあんな風に笑えるんだ。そりゃあそうだ、と僕は納得した。だいたい友達がいないのは僕だ。クラスの中でハブられているわけではないし、つるんでいる奴らも数人いる。でも月子にもそういった存在は多くいる。なぜ今まで気づかなかったのかもわからず僕は千葉に強く嫉妬している。


「はい、席についてね~」


 急にドアを開き学年主任の女性教師山崎が入ってきた。山崎は


「えっとね~。今日は、あなた方の担任の柳先生がおやすみです。だから朝のホームルームは私がやるわね~」


 クラス全体が軽くどよめく。


「せんせー。柳ティーチャーは? なんで休みなんですかー」


 クラスの男子の質問に山崎先生がニコッと笑って


「ティーチャーではなく『先生』ですよ~。それにいくら先生だと言っても欠席理由を聞くのは失礼だと思わない? 」


 と返す。


「守秘義務ってやつ? 」


「まあそうね」


「山崎せんせー、このクラスのグループチャットなんだけどさー」


「はい。前向いて~。じゃあ出欠とるからね~」


 生徒たちの話を遮り山崎は次々と出欠をとっていく。僕は憂鬱な気分で窓の外を眺める。すると月子が挙手して


「先生。私ちょっと具合が悪いみたい。保健室に行ってきていいですか? 」


 と申し出た。


「いいわよ。大丈夫かしら~、あら。あなた顔が真っ青じゃない。誰か、鈴宮さんを保健室まで送ってあげてくれないかしら~」


 すると次々と手が上がった。


「おれ行きます!! 」

「はーい俺行きます!」


 山崎は


「そうね~、できれば女子生徒がいいから安西さん。あなた一緒に行ってあげてくれない? 」


 安西尚美(あんざいなおみ)。クラスの中でも特に目立つというわけではないが、何かと悪いうわさが多い。女子生徒をいじめて精神的にダメージを与え、不登校に追いやった、などだ。僕が一度話した時はそれほど悪い雰囲気を纏ってはいなかったが、実際のところどうなのだろう。


「いいですよ」


 安西は返答した。


「じゃあ、よろしくね」


 山崎がそう言うと月子と安西は廊下に出た。


「はい~、それじゃ気を取り直して、出欠とっていくからね~」


 山崎は二人が保健室へ向かい歩き出したのを見送ると再び出欠を取り始めた。


ご覧いただきありがとうございました。次回も読んでくださりますと嬉しいです!

(次回:第二話:いじめ)

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