第四話:押し問答
朝がやってきたようだ。鳥のさえずりで目を開けた僕は、傍らで寝ていたはずの月子の姿が見えないことに気づいた。
「月子!! 」
僕はこれ以上もない大声で叫んだ。すると
「そんなに叫ばなくてもちゃんとここにいるよ」
と月子の様子が見えた。僕は安堵した。
「どこにいたの」
彼女に近寄って僕は尋ねた。するとそれには答えず月子は
「ほら。地図アプリ。これ見たら私たち迷ってるみたいなのよ」
とスマホの地図アプリの画面を僕に見せた。
「本当だ……」
見てみると頂上方向とは逆に進んでいたようだった。そういえば案外道は険しかったし、幾重にもわかれていたり、獣道のような場所もあった。やはり事前に調べて置くべきだった。
「とにかく下山しよ。これだったら降りて学校から見た方が綺麗だったよ」
「そうだね……」
僕が暗そうなのを見た月子は慌てて自らの口を押さえた。
「ごめん。アポロを傷つけるつもりはないのよ。ただ今度金星を見る時はやっぱり学校の屋上がいいわねって」
「うん……。あの、月子……」
「もしかして、アポロ謝ろうとしてる? 」
月子が僕の表情に気づいて言う。僕はたじろいでしまった。すると月子が怒ったような口調で
「ごめんだなんて言わないでよね!」
と力強く言った。月子は続けた。
「本当アポロは抱え込みすぎ! 私はアポロのせいで怪我したんじゃないから。それだけはわかっておいてね」
月子がはっきりとそう言ったため、言い返せなかった僕は
「……寒かったでしょ、昨日。ジャンパー貸してあげたらよかった」
と返した。
「ううん」
と月子は答え
「アポロが隣にいてくれたから温かかったわ」
と一言僕の目を見て言った。僕は今度こそ心底たまらない気持ちになった。
「降りよう」
そう言って月子を負ぶって下山した。
ご覧いただきありがとうございました。次回も読んでくださりますと嬉しいです!月子に呆れられたと感じるアポロ。応援してあげてください!!
(次回:タイトル未定)




