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月守アポロの鬱屈  作者: 美水
第四章:恋
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第一話:素直になれない

 帰宅後すぐさまベッドに横になる。疲れ果てたが今日は楽しかった。

 僕としたことが、自然と笑みがこぼれたことを自覚し気持ち悪いと感じた。思い出し笑いなんて今までしたことなかった。

 それにしても月子はすごい。あれだけの男子に囲まれて、クラスメイトも大勢いるのに怖がらず


「金星が好き」


 だなんて言うのだから。


 ただどうして僕は月子を月に例えているんだ? 僕は天体が好きだ。その中でも月が大好きだ。

 アポロン。それは僕の名だ。でも僕が愛しているのはアルテミスだったはず……。


 天体観測の日。月子はジャンパーの上にベンチコートを着込んだ完全防備でやってきた。


「そんなに冷えるかなあ? 」


 僕がそう言うと


「何言ってんの! 今日はすごい寒波が来てるってニュースでやってたよ?アポロ。そんな薄着で大丈夫? 」


 と月子は僕の軽装を指さし尋ねる。


「今日は少しだけ冷えるみたいだけどこれくらいで大丈夫だと思うよ。月子はせっかちで何事も大雑把なのに珍しいね」


 僕は思ってもないことを言った。月子は


「失礼ね! アポロこそ普段は慎重なのにそんな軽装備で大丈夫なの? 」


 と言い返した。


「大丈夫大丈夫って聞きすぎ! 大丈夫だよ」


 僕は返事をしたが自分自身の感情が何かおかしいと感じていた。思考と感情、そして行動がかみ合わないことは今まで幾度となくあった。

 というより僕は感情を殺して生きてきた。故に思考と行動しかしていない。だが今回はなぜか、月子の一挙手一投足が気になってしまう。一体どうしたのだろうか。


 水無瀬山を頂点まで登るのにかかる時間は30分強と目測していた。それは青空山岳と比較し予測したものだが正確かどうかはかなり疑問だ。前もって一人で登っておけばよかったな、と後悔した。しかし今日は天気もよい。昨日までの雨が嘘みたいに上がり快晴だ。絶好の天体観測日和だと言える。


 だが僕には心配事が一つあった。それは鈴宮教授のことだ。月子は本日の天体観測について女友達の家に泊まると言い訳をしていた。それに対して僕は


「きちんとお父さんに説明した方がいいと思うよ」


 と言った。しかし月子は


「どうせバレないと思うけど、アポロと二人きりで山登り、だなんてお父さんに言ったら絶対怒られるもん」


 と言った。


「怒られるのは嫌でしょ。それなら行かない方がましだよ」


「うーん……。まあそうなんだけど」


 月子はこう言った。


「でも私はアポロと天体観測に行きたいの。ねえいいでしょ?」


「もうどうなっても知らないよ」


 と僕は答えた。しかし行くならば、月子のことは責任感を持ちしっかり守らないといけない。それは確かだ。

 なのにこんな重装備で来たらバレるじゃないか。だがここまで来たら行くしかない。晴天も後押ししてくれている。


「さあ行こう」


 僕は月子の手を取って登り始めた。

ご覧いただきありがとうございました。次回も読んでくださいますと嬉しいです!

(次回:第二話:恋)

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