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月守アポロの鬱屈  作者: 美水
第三章:気付き
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第五話:撃沈

 藤田は

「よう月守アポロくん」


 と言ってぎゃははは、と笑った。


「何」


 と言い返す代わりに僕はそちらを睨んだ。非常に面倒くさい。この手の類の人間を相手にするのは。すると藤田は


「鈴宮さんさあ、一体あいつのどこがいいの? 」


 と今度は月子に絡んでいく。僕は腹が立って


「あんた、僕に用があるんじゃないの? 」


 と返した。すると取り巻きの男子生徒の一人が


「……だってさ! アポロ君のことなんて誰もお呼びじゃないよ。なあ藤田。だってこいつ小中といじめられてたんだからな! 」


 と息巻いた。この男子は僕をPTAに売った奴の連れだった。


「そうだぜ! 誰もこんな弱っちい、いじめられっ子のこと相手にしねえよ。鈴宮さんも本当は嫌がってるんだ」


 藤田が男子の発言にかぶせるように言う。月子は、と言うと、自分の机の周りを不良男子たちが取り囲んでいるせいで身動きが取れない状態だ。僕は黙っている月子のことを見てため息を一つつく。そして


「とっとと開放してあげなよ。怖がってるだろ。わからないのか。あんたら周りの事見えてないんだな」


 と言った。そしてこう続けた。


「言っておくけどあんたたちみたいななクズの相手、鈴宮さんがするはずないと思うよ」


 それを聞くと取り巻きの数人はまたぎゃははと笑った。しかし藤田の目は笑っていない。あまりに的を得たことを言われたからか、心底腹が立っているらしい。まあ、藤田は自分がイケてると思っているから『的を得た』だなんて思っていないかもしれないが。鋭い目を僕に向けてこう叫んだ。


「笑わせるな! 王子様気取りかよ! お前なんかが鈴宮さんに相手にされてるわけねえだろうが! お前があまりに可哀そうだから見捨てられないんだよ! 鈴宮さん優しいから」


「何も見えないならもう話すな。心の目で見なけりゃわからないこともある」


 すると取り巻き含め藤田が馬鹿笑いして


「聞いたかよ。心の目、だってよ。こいつ頭おかしいんじゃねえの?ドラマの見過ぎかよ」


 と言った。


「いや……」


 僕は月子に目で合図を送った。月子はすぐさまこう言った。


「藤田君たちに話があるわ。自惚れだったらごめんなさい。あなたたち、私のことが好きなの? 」


 藤田たちはたじろいだ。月子はこう告白した。


「実は私、好きな人がいるの」


 藤田はぎょっとした。そして僕を鋭い目で睨みつけた。僕は答えがわかっている分楽しい。


「それは、金星です!! 」


 クラス全体が騒然とした。


「金星……? 」


 藤田と取り巻きが声を揃えて尋ねた。


「金星って誰? あの……星のこと……? 」


「そうよ。私は金星が好きなのよ。それにさっきの心の目の話。あれをアポロに教えたのは私。私が最初に言ったってこと! 」


 藤田含める男子生徒たちはワンテンポ遅れて


「アポロ……? 鈴宮さんがアポロだってよ 」


 と月子が僕のことを名前呼びしているという事実にまずは驚きざわついた。心の目の話には全くついていけてないようだ。

 月子は続ける。


「でもアポロ、最初は私の事『不思議ちゃん』だなんて馬鹿にしたんだから!酷いわ!!金星は私の恋人なのに」


 もうこうなると笑いをこらえることができなくて、僕は思い切り吹き出した。


「ちょっとアポロ! なんで笑ってるのよ。今いいところなのに! 」


「ごめんごめん。藤田たちがあまりにとぼけた顔してるからつい」


 振り向くと藤田と取り巻きは顔面蒼白でかたまっていた。クラスメイト達はその顔を見て笑い出した。


「藤田あっけなくふられたな! 」


「てか鈴宮さんおもしろすぎ」


「ジョークうますぎ」


 月子は間髪入れず


「いや、ジョークじゃないわよ。本気で金星を愛しているわ」


 と言い返す。


「だったら金星と結婚できるの? 」


 と茶化した女子生徒に月子は


「もちろんよ。でも金星とは物理的に結婚できないから、私が一方的に愛を誓う形になるわね。それに他にも金星と結婚したい人、いるかもしれないし」


 と真顔で返した。


「いるかよそんな奴!! 」


 クラス全体が笑いの渦に飲み込まれる。僕は


「やっぱり僕の友達、最高だ」


 と感じた。


ご覧いただきありがとうございました。書いていておもしろいのですが、言葉遣いなどぎりぎりまで決められなくて悩みました。アポロが藤田のことをなんてよんでいるか……などです。

次回も読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします!

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