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転生治癒師の恋物語 〜聖女様と王子様の仲を取り持ったら、別の王子様に気に入られました〜  作者: 藤なごみ


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第十三話 教会での奉仕活動

 もぞもぞ、もぞもぞ。


「すぴーすぴー」

「うん?」


 翌朝、何故か直ぐ側で別の寝息を感じて起きてしまった。

 キチンと鍵をかけたはずだなと思って、私はある予測をしながら目を開けた。


「ワフッ、すぴーすぴー」


 目の前に、シルバのドアップがあった。

 なんというか、予想通りだったのが逆に悔しかった。

 流石に布団の中に入ってはいなかったけど、それでも気持ちよさそうに寝ていた。

 そのうちベッドで寝そうだなと思いつつ、私は起きて身支度を整え始めたのだった。


「昨日は、急遽の依頼お疲れ様でした。予定どおり、報酬は本日の分と合算してお支払いする予定です。実績としてもキチンと残しますのでご安心ください」


 朝食を済ませて冒険者ギルドに向かうと、エレンさんが滞りなく説明してくれた。

 軍からキチンと連絡が入っていて、ある意味ホッとした。

 因みに、熊の毛皮の査定はもう少し待ってくれとのことだった。


「それから、来週もう一度軍に来てくれと連絡を受けております。治療とはまた別の依頼だそうです」


 うーん、いったいなんだろうか。

 問題になりそうなところはもう対応済みだし、治療でもないというなら何があるんだろうか。

 まあ、行ったときに確認すれば良いだけだし、きっと危ないことはないだろう。

 ということで、本日の指名依頼の手続きを終えて教会に向かうことに。


「わあ、凄い大きい建物だ……」

「ウォン、ウォン!」


 教会は大通りを歩いていけば直ぐに分かると言われたが、確かにとても豪華な大教会が直ぐに見えた。

 前世の世界史の教科書でしか見たことのない、石造りのとても大きな教会だった。

 荘厳な作りで、まさに教会の権威の象徴といえよう。

 そして、既に教会前では炊き出しの準備が行われていたので、私たちは準備をしている女性聖職者に話しかけた。


「おはようございます、教会の奉仕活動の依頼を受けた冒険者のリンと言います」

「ウォン!」

「おはようございます、話は聞いております。司教様がおりますので、どうぞ中にお入り下さいませ」


 私たちが行くと連絡がいっていたので、あっさりと話がついた。

 年配の聖職者が祭壇前にいるそうなので、さっそく大教会の中に入った。

 大教会内はかなり広く作られていて、多くの長椅子に窓からの光が差し込んでいた。

 天井には神様をモチーフにしたと思われる壁画が描かれていて、ステンドグラスも使用されていた。

 そして、正面奥の祭壇では若い聖職者に指示をする年配の聖職者がいた。

 あの年配の聖職者が司教様で間違いなさそうだ。

 指示が途切れたタイミングで、私たちは司教様に話しかけた。


「司教様、おはようございます。冒険者のリンと申します。奉仕活動の手伝いで参りました」

「ウォン!」

「おお、そなたが冒険者ギルドから来るというものだな。本日は宜しく頼むぞ」


 白髪頭のまさに好々爺って感じの人で、シルバやスラちゃんにも話しかけてきた。

 そして、治療も教会前で行うんだけどアメリアさんがまだ来ていないので、先に炊き出しの準備を手伝うことにした。

 もう一度教会前に移動して、私たちは女性聖職者に話をしてから手伝いを始めた。


 トントントン。


「あ、あの、スライムが触手で包丁を持って野菜を切っていますが……」

「スラちゃんは、このくらいなら全然余裕です。私もどんどんと野菜を切りますね」

「は、はあ……」


 女性聖職者がどう対応していいか分からない表情だけど、スラちゃんはこういうスライムだと割り切るしかないですよ。

 野菜だけでなく肉も切っていき、スープの煮込みが始まった。

 ここでもコンロ型の魔導具が使用されているけど、私は小型のものが欲しくなった。

 こうしてどんどんと野菜を切っていく中、子どもたちが好奇心旺盛な表情をしながら集まってきた。


「わあ、おっきいワンちゃんだー!」

「すごーい、ふかふかの毛だよ!」

「ウォン、ウォン!」


 シルバのところに集まった子どもは、シルバの体をなでたり追いかけっこをしたりしていた。

 シルバも中々子どもの扱いが上手く、危ない場面も全くない。

 体は大きいけど、まだ中身は子どもだもんなあ。


 トントントン。


「すごーい、スライムが料理をしているよ!」

「包丁を持っているよ。切るのも速いね」


 スライムが料理をしているとあってか、炊き出しの周辺にも子どもが集まっていた。

 スラちゃんも、時折子どもたちに触手をふりふりしながら料理を続けていた。

 そうこうしているうちに、目の前にかなり豪華な装飾がされた馬車がやってきた。

 昨日アメリアさんが乗った馬車よりも豪華で、いったい誰が乗っているのかと思った。

 周囲の視線が集まる中、何故かシルバだけ馬車の側に寄っていった。


「ウォン、ウォン!」

「あら、シルバおはようございます。出迎えてくれたのね」

「ウォン!」


 最初にアメリアさんが馬車から降りてきて、喜びを爆発させているシルバの頭をにこやかに撫でていた。

 アメリアさんは昨日よりも少し豪華な青色のドレスを身に着けていて、まさに公爵家令嬢といった佇まいだった。

 そして、アメリアさんの次に降りてきた女性がこれまた凄い人だった。

 ちょっと青みがかった金髪のロングヘアに、人懐っこそうな明るい表情。

 薄いオレンジ色の高貴なドレスに身を包みながらも、アクセサリーは品の良いものを最小限にしていた。

 アメリアさんよりも年下に見えるけど、私よりも背は高そうだ。

 その女性に対しても、シルバは尻尾をぶんぶんと振りながら喜び全開で近づいていた。

 ある意味、怖いもの知らずだよなあ。

 護衛をたくさん引き連れていることを考えると、かなりの地位にいる女性なのは間違いなさそうだ。

 そして、私の前に二人がシルバを引き連れてやってきた。

 ここで、最初に挨拶を済ませましょう。


「初めまして。私はリンと申します。シルバがご迷惑をかけたみたいで、申し訳ありません」

「うむ、何も問題はないぞ。妾はマリア・ガイアード、マリアと呼んでおくれ」


 にこやかな表情をしながら如何にもって喋り方をしていたけど、確かガイアードってこの国の名前だったはず。

 王女様を引き連れてくるなんて、流石はアメリアさんです。

 そして、この王女様はどうやらシルバの存在を知っているみたいだ。


「お兄……もとい、軍より話は聞いておる。体は大きいが、まだ中身は子どもだということも知っておる。シルバよりも、そこのスライムの方が、よっぽどおかしな存在じゃ」


 マリア様は、シルバの頭を撫でつつ包丁を触手で持ちながら野菜を切っているスラちゃんに視線を送っていた。

 王族なら重要情報は伝えられるはずだし、何よりもアメリアさんと同乗していたのだ。

 馬車内で、私たちのことを色々と話していたのは想像に難くない。

 そして、人懐っこい表情をしながらも私たちのことを分析している。

 王女様は、相当頭が良さそうだ。

 因みに、王女殿下と呼んだら堅苦しいと却下された。


「マリア様は、アメリアさんと仲が良いのですね」

「うむ、妾と年も近いのもあり良くしてもらっておる。上にいるのは全員兄なので、同性の存在はとてもありがたいのじゃ」


 マリア様は末っ子らしく、上の兄がとても可愛がっているという。

 でも、やはり同性といた方が気が楽みたいだ。

 だからこそ、こうしてアメリアさんと一緒にいるという。

 そして、この王女様は福祉活動にも積極的らしい。


「王族は国に奉仕する義務がある、こうして奉仕活動するのもその一部じゃ。兄も、王位継承権がないものは軍属じゃ。日々国防や民のために活動しておるぞ」


 自分の利益しか考えない、前世の政治家に聞かせてやりたい気持ちです。

 まだ未成年なのに、こうして活動することによる影響力も知っている。

 この国の王族は、中々侮れない存在だと改めて実感した。

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