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第〇四話|檸檬

「現実世界で確率的に起こりにくい事こそ、僕らは憧れてしまうのだ。」

鈴響高校、登校初日の今日。僕に二条渚は、隣の席の葉月結弦と話していた。


彼女は年齢の割に少々大人びているように僕には見えた。


色々と話してみると、どうやら彼女も家から学校まで通うとなるとやや厳しいらしく、


また、寮生活というのに興味があるらしく、寮暮らしを送ることにしたそうだ。


今日は入学式以外にクラスで担任の先生から今後の予定などについて話があるだけで、


時間的には午前中に終わる。


そして授業は明日から始まる訳ではなく、本格的な授業は一週間以上後からだという事は


事前情報として知っている。


また寮暮らしをする生徒は、授業開始の少し前に寮に入って諸々と施設を知ったりするらしい。


この鈴響高校はかなり施設や設備が充実している。


中等部棟や大きな体育館、校庭や図書棟、部活棟や食堂棟など様々な施設が学校のある山の中に存在する。


そして特にこの学校の特徴が、目の前の海や学校近く山の自然を体感できる部活が多いのと、


芸術系の創作が行える棟があり、またその芸術系の授業もかなり人気があるということだ。


正直ここまで充実した設備があるのだから、せっかくなら沢山利用させてもらおうと期待している


部分が僕にはある。


そういう設備については、授業が始まる週のLHRで見学に行くらしい。


そんなことを色々と考えていたら、どうやら担任の教員らしき人がガラリとドアを開けて入ってきた。


既にクラス全員教室に来ているすら僕は気付かずに過ごしていたとは。


担任の先生はかなりお年を召したように、いや明らかに年寄りである。


ただ、何だかとても品があり、それでいて親近感が湧くような雰囲気がする。


その先生がやんわりとした足並みで教室前方中心にある教卓の前まで進み終える。


名簿のようなものをパタリと開いて、彼は口を開いた。


「えぇ、皆さん初めまして。担任を務めることになりました。幣原寛治です。僕は芸術の授業を受け持


っています。皆さんとは主にその授業と、LHRなどで一緒に学んでいくことになります。


一年間よろしくお願いします。」


随分しっかりとした口調じゃあないかと、失礼ながら僕は少し感心してしまった。


その後は今後の予定や授業時間割についてなど諸々の説明があり、ちゃんとした自己紹介はどうやら


今日ではなく、授業開始日にするとのことだった。


そんな話をしている最中、何となくふと右に目をやった。


すると何故だか結弦と目が合った。彼女は僕が目をやる前から僕を見ていたのか、


爽やかな笑顔で反応してきた。いや、普通に美しいな。


その後幣原先生の話が終わり、解散となった後、結弦が「せっかくだし、連絡先とか交換しておかない


か?」と言ってきた。


「いいよ、ちょっと待ってね。」


初日知らない人ばかりの中で、会話できるクラスメイトがいるのは正直心強いかもしれない。


無事に連絡先を交換した。


そんなこんなで無事初日を終えることができ、今日はまだ寮生活ではないので、家まで帰宅するのだった。


帰ったら寮に持っていく荷物をまとめたりしないといけない。まだやることがいくつも残っている。


正直憂鬱だ。まあそんなことも言ってられるほど時間はないのでただ黙々と準備しようと考えながら、


僕は電車の席に座りぼんやりと考えをまとめたりするのだった。

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