第〇一話|濫觴
「大きな出来事程、過大に考えてしまうのである。」
「君は、何故生きようとするの。」
今日は高校の入学式だ。
例年に比べて気温は高いらしく、外の世界が僕に「これくらい耐えてみろ。」とでも言いたげな様だった。
とやかく思っている間にも、春風が熱気と戯れている。
僕の通う高校は、県内でもそれなりに偏差値が高いところらしい。
毎年開催される「オープンキャンパス」では県外からも多くの人が足を運ぶと聞いたことがある。
僕は結構何に対しても無頓着なので、「オープンキャンパス」には参加せずに受験をしていた。
最低限人とは関わるし、色々と行動したりはするが、基本どうでもいい人間だ。
僕が小学生の頃は結構活発な人間で、「学習発表会」や様々な行事ではかなり頑張っていた記憶がある。
しかし、当時幼いながらに”自分が頑張っても、誰かが等しく頑張る訳でないこと”や、
”考えてもどうしようもないことだってあるということ”、”解決できない答えがないことの方が
多いということ”など色々と残念な事を知ってしまったせいで、”興味関心を持たなくなった”というより
”興味関心を持つ必要がいちいちないと考えるようになった”のだ。
重要トピックと報道されたリアルタイムのニュースが、十日も経てば段々と関心が薄れていく様に。
僕には、僕の前にある情景に対して、そこまで関心をもつことが出来ないのだ。
それは人に対しても、物に対してもそうである。
時にそれは、僕にとって苦しみとなり、隔たりにもなった。
他の人より内気にきっと見えるだろう。
しかし、両親は僕を決して咎めたりせず、ただ見守ってくれている。
我ながらいい両親の元に生まれて来れたのだと思う。
こんな僕でも、随分裕福に立派に育ててくれた。だからこそ、少しは親孝行したい。
そう思ったので、この「鈴響高校」に通うことにしたのだ。