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御穴を掘る  作者: 珉砥
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そこは壁から50センチほど離れたところで天井から90センチほど下がった辺りの空間だ。

当たりをつけて空間を探った。今度はものの数分で指先が消えた。何度見ても慣れない。不安になる。このまま指が戻らなかったらという懸念は付きまとうがやけくそで実験を続けた。

さっきは手首まで消した。今回はもう少し欲張ってみることにした。そろっと手を伸ばすと、うまくはまったようでどんどん消えていく。突如恐怖が襲いかかてきて少し引き戻してみた。ちゃんと腕は戻ってくる。少し面白くなってきた。おれはそろりそろりと腕を伸ばしていった。

ゾワッとした触感が指先と肩口に感じた。

「うわー」

奇妙な声を出して、思わず手を引っ込めてしまった。なんと、おれの伸ばした右手はおれの右の肩口に触れたのだった。

これまで味わったことのない驚愕に打ちのめされていた。何が起きたのか。なぜ前に伸ばした指先が自分の肩に触れたのか。

これまでに培われた常識を一旦取り除いて考えれば、結論として考えられるのは、消えた指先がおれの背後から出現したことになる。

理由は分からない。原理など想像もつかない。しかし現実に体感したことから推測される結論はそれしかない。

もう見当はついていた。例の空間にゆっくりと指先を忍ばせるとふっと見えなくなった。すかさずおれは振り返った。

「あっ」

思わず声が漏れた。視線の先におれの右指先が何もない空間からにょっきり生えていた。

開き直る他ない。元々ここにそういった不可思議空間があったのか、それとも何かの拍子に出現したのか。もしかしたら日常のありふれた光景でおれが認知していなかっただけなのか。

とにかくおれは科学者ではないし、専門は教育学でこんな謎空間についての講義を受けたことも本を読んだ覚えもない。何も分からない。

しかし現実に、おれが現実だと認識している世界にこの摩訶不思議な現象が起きたことは確かだとおれが認識しているのが事実だ。おれは受け入れた。この現象を事実と認識した。

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