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御穴を掘る  作者: 珉砥
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モンシロチョウが一匹部屋に紛れ込んできた。

おれが住んでいる2階の安アパートの窓ガラスは割れていた。ここへ引っ越してくる際、高校の時に属していた柔道部の仲間に手伝ってもらった。大学生の荷物の量などたかが知れている。軽トラック1台で事足りた。6畳1間に全て荷物を運び終わった時、車を借りてくれた村山がイタズラで振り回したおれのヌンチャクが窓ガラスに当たって割れたのだった。「悪ぃ」の一言を残して村山は帰って行った。

おれは仕方なく割れた窓ガラスの上にノートを破ってセロテープで貼り付けた。よって、そのままだから冬はとても寒い。でも夏の今はその被害は感じないが、いつの間にかテープが取れてピラピラと紙が風になびくようになっていたのを放っておいたのだ。チョウはその隙間から入ったのだろうか。

ランダムに動く白い蝶をぼうっと眺めていた。これが茶色い蛾とかだったら心穏やかでは無いが、白い色は清潔な印象を与える。見た目とはいかに心理に影響するかなどとどうでも良いことを考えて見ていたら、ふっと白いチョウが視界からいなくなった。

直ぐに思い出されたのが煙草の煙が消える現象だ。口から吹き出した後、しばし拡散する様子は目で確認できるのが通常である。それがふっと消えることがこのところ数度あった。脳内で煙の広がる様は無意識に予想しているのだろう、一部分が消えることに違和感を覚えたのだ。今も全く同じだ。

「どこに行った?」

と声を上げた次の瞬間には目の前にチョウがヒラヒラ飛んでいた。ん?どういうことだ?目の錯覚か?

おれはこの現象の説明がつかなくて混乱した。蚊を見失うことはよくある。要因として考えられるのは、ヤツらの動きが早いのと体が極めて小さい事だ。

しかし、チョウの動きがいくらランダムとはいえ、大きさも目で追うに十分だし、しかも部屋の中だ。じっと見ていたのだから見失うはずがない。

おれは立ち上がってチョウが消えた辺りに足を運んだ。無論何も分からない。空間が歪んでもいないし、妙な穴も空いていない。

おれは目をつけた辺りへ右手を突き出してふらふら動かしてみた。何ら変化は無い。と思った瞬間指が消えた気がした。

目を凝らしておれは見ていた。確かに今、右手の中指と薬指の先が一瞬消えたのだ。


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