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6.さっそくやらかした

「し、失礼っっ!!」

 慌てたように一度ドアを閉めて出たそのイケメン。


 そして一瞬の静寂。

 その後遠慮がちにドアをノックされた。


「どうぞ」

 立ち上がろうとしたのだが、なぜか足に力が入らずそのままベッドに座ったままわたしは返事をした。


「…てっきりまだ寝ているものかと…あ、いや勝手に部屋に入ってしまっていて申し訳ない…」

 すっごいイケメンなのにぺしゃんと垂れた耳が見えるようだ。


「いえ、様子を見てくれていたんですよね。ありがとうございます」

 その様子がおかしくて笑いながらお礼を言うと、目の前のイケメンさんは、いや、とか、う、といったくぐもった声を出していた。

 そしておもむろに私の目の前まで歩いてくると片膝をついて手を取られた。


 おおうっ

 イケメンの上目遣い破壊力がすごい!

「私は、アルフレッド・ウォーガンと申します。この度はブラッディベアの浄化及び私の傷を治療して頂いたこと、改めてお礼申し上げます」

「あ、あ、や…」

 今度はわたしがくぐもった声を出す番だった。

 自慢じゃないが男性には耐性がない。

 お付き合いなんてそっちのけで学生の時は勉強、勤めてからも足手まといにならぬよう勉強勉強の毎日だった。

 仕事なら平気なのにそれ以外での異性との接触というものが皆無なため、わたしの心拍数は急上昇だ。


 いや、それよりも傷って言った?

 沸騰しそうになった頭が瞬時に仕事のそれにかわる。


「あのときの!」

 袈裟懸けの裂傷のケガを負っていた人だ。


「すみません、失礼します」

 わたしはふらつく足を叱責しつつその場に立ち上がり、目の前のイケメンを立ち上がらせベッドに座らせる。

 簡素なボタン付きのシャツを手早くまくり上げ胸元のケガの具合を診る。

 気を失う前に塞くことができた傷は目を凝らしてやっと傷があるかな、くらいになっていた。

 気になるのは途中で終わってしまった下の部分。

 右下腹部だ。

 上質な布のスラックスの腰の部分は紐で編み込まれている。

 さっと結びをほどき腰部分に余裕を持たせるよう左右に開いて右下腹部分を出そうとした。


「な、ちょっちょ…まっ」

 慌てたような声が降ってきて大きな手が私の手に重ねられる。

「すみません、傷みせてください。途中で終わってしまったので気になって…あ」

 頭が冷える。

 うん、やらかしてる。

 これは盛大にやらかしている。

 ベッドに座らせたイケメンの足の間に入り込み、ズボンをはぎ取ろうとしている図にしか見えない。

 痴女だ。

 しかも無遠慮にぺたぺたとその彫刻のような美しい体に手を這わしてさえもいる。


「す、すみませんっ!」

 慌てて離れてその場に土下座する勢いで頭を下げる。


「あ、いや頭を上げてください。…取り乱しました。傷はちゃんと治していただきました」

 少しスラックスをずらして見たかった患部をみせてくれた。

「やはり、最後のほうで力尽きたのでそこは傷が残ってますね…」

 先ほどの羞恥心はどこへやら。

 わたしはそっと近づいてその傷をじっくりと見た。

 2センチほど皮膚がひきつれて盛り上がっている。


「いえ、これくらい傷には入りません。さすがは救世主様のお力だと」

 服を整えてその場に膝をついている私の手をとり、優しくベッドへと座らせる。

 仕草がスマートすぎていつの間にベッドに!?といった感じだ。

 なんだか気になるワードもあったが、わたしはそれよりも非常にいまさらな質問を口にした。


「それで、ここはどこなんでしょうか?」


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