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11.救世主様と呼ばれ跪かれました

 わたしは今文机に向かい、上質な紙とにらめっこ中。

 わたしの隣にはゆらゆら揺れるゆりかご。

 中にはぐっすりと眠る子供がいる。

 グレーの髪の毛をふわふわと揺らし眠っている。

 閉じられた瞳はアルと同じアメジスト色だ。

 6か月前に誕生したこの本邸のアイドル的存在。




「マオ、シオンは眠っているのか?」

 部屋に入ってきたアルがゆりかごを覗き込む。

「うん、今寝たとこ」

 アイドル的存在である紫苑は本邸のみんなから可愛がられすくすく成長中。


 わかるよ。

 流石遺伝子というべきか。

 アルの小っちゃい版といえばわかるかな。

 目鼻立ちがアルそっくりで、もう本当に天使なの。

 親ばか覚悟で言うけど、花の精かなって本気で思うほど可愛い。

 そんな紫苑だから、もう本邸のみんなが甘い甘い。

 そして甘やかし筆頭の人がここにいる。

 暇さえあれば紫苑を構いたがるんだもんな。

 紫苑を見るアルの顔はデレデレだ。

 ジェイドさんからは、わたしに対しても同じだと言われたが…。





「マオは何を書いているんだ」

 文机に広げられている紙を見たアルが不思議そうに覗き込んでくる。

「あのね、またこの先ここに転移してきた人のためにわたしも手紙的なものを書いてみようかと思って」

 紙をアルに向かって差し出す。

「ふむ。何を書いているのか全くわからないな」

「あはは、やっぱり?なんか不思議なんだけど、わたしが日本語で書きたいって思ったらこの文字になるんだよね」

「ニホンゴ・・・。マオの国の文字なのか?」

「そう。最初はねこの世界に来て驚いたことから書いてるの。まだ全然書き始めなんだけど」

「そうか。だがマオそろそろ時間だ」

「うん。そうだね」


 今日は紫苑が生まれて半年経ったので領地の人たちへのお披露目をするのだ。

 アルのお屋敷のバルコニーみたいな広い場所から3人で顔を出すだけなんだけど、アルから聞いた話ではかなりの人が集まっているみたい。

 領地の人だけでなく近隣の街からも見学しにくる人が多数いるとか。


 ちなみに王都でのパレードは紫苑が1歳になってからとなった。

 宰相さんからの催促の手紙がまたすごかったが、アルが1歳になるまではと絶対に首を縦に振らなかったのだ。

 わたしとしても1歳は超えてくれていたほうが安心だ。

 なんせ王都まで遠いからね。



 まあ、ともあれ今日は領地での紫苑初お披露目だ。

 真っ白なドレスに身をまとう未だ眠る我が子を宝物のように抱き上げ、アルがこちらに向き直る。


「行こう」

 片手で紫苑を抱き、もう片方の手をわたしに差し出す。

「うん」

 その手を取ってわたしはアルを見上げる。


「アル、わたしこの世界に来られて良かった」

「俺も、マオがこの世界に来てくれて感謝している」

 アルと二人顔を合わせて笑いあう。






 わたしはこの世界で生きていく。

 アルの隣で、喜びも怒りも悲しみも楽しみも全部分かち合いながら。

 だから、いつかまたこの世界にやってきた日本人がいるなら伝えたい。


 わたしはこの世界で幸せに生きたよ、と。

 手紙の始まりは決まっている。

 ここに来て一番驚いたこと。

 そう、やっぱりアノことだよね。








『異世界転移した日本人のあなたへ

わたしは日本で看護師をしていました。

文化も何もかもが違うこの世界に転移して、救世主様と呼ばれ跪かれました。』




~fin~



これにて完結となります。

ここまで拙い文章にお付き合いくださりありがとうございました。

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