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9.浄化のあとに知った事実は恥ずかしすぎました

 アルと別れてすぐに泉はあった。


 もうすでにだいぶ黒い!

 そしてすごく嫌な感じだ。

 これが瘴気…。

 気持ちが悪くなるほどの淀んだ空気の中、わたしはその泉に近づいた。


 泉は不気味なほど静まり返っているからアルたちが戦っている音や声が聞こえてくる。

 早くしないと…。


 わたしは泉の前に膝をつき、黒い水の中に右手を浸す。

 刺すような痺れがわたしを襲う。


『魔力を使い浄化しますか?』


「はい」

 返事をした瞬間今まで感じたことないほど急激に手のひらから魔力が流れていく。

 ぐんぐん吸い込まれるようにわたしの魔力は手のひらから泉の中へ。


「うっ………」

 貧血のようなめまいがわたしを襲う。

 でもまだだ。

 黒い泉に変化はまだない。

 浄化しきれていない。


 アルたちのお陰でわたしの魔力は使わずに済んだのだ。

 全てはこのために。

 わたしは左手も泉の中へ浸した。


 体の奥底から魔力の波が手のひらへ向けられるのがわかる。

 力が尽きてしまう…。

 意識が遠のきそうになるも、なんとか耐える。

 みんなが頑張っている中ここで力尽きるわけにはいかない。

 まだ出せる。

 最後のひとかけらまで。



 だけども無情にもわたしの魔力に限界がくる。

 ダメだ…。

 もう…っ。


 その時、わたしの体の奥から魔力が滲み出る。

 わたしのものとは違う魔力の質。


『マオ、頑張れ』

 アルの声が聞こえた気がした。


 そうだ、これはアルの魔力。

 力強い魔力。

 なんでアルの魔力が、とも思った。


 それともう一つ。

 わたしの中には交じり合った魔力の欠片。



 これは…。



 その時、泉から大量の光の粒が舞い上がった。

 泉全体を金色が覆い、それが全て空へと浮き上がっていく。

 それはやがて空を覆い、キラキラと鱗粉のようなものを巻きながら上へ上へと。

 光輝かく空の下、泉はどこまでも青く澄み渡っていた。


「キレイ…」

 わたしの体の奥に感じた魔力の欠片のお陰でわたしは魔力枯渇に陥らなくてすんでいるのだと感じた。


 だからわたしはこの場にまだ立っていられるし、意識もしっかりある。




「マオ!」

 わたしを呼ぶ声に振り向く。

「アル!!」

 駆け寄ってくるアルにわたしはダイブした。


「終わったよ。浄化、できたよ」

「ああ。マオのお陰で魔獣も本来の力に戻った。ありがとうマオ」

 しっかりとわたしを抱きとめてくれたアルがわたしの頭を撫でる。


「こちらも魔獣の討伐ができた。マオの浄化のお陰だ」

 二人で泉を確認して振り向くと、そこにはやはりと言うかなんというか。


「また…」


 光の粒の中、騎士団や魔術師団ほかにアルの街の兵士の人たち総勢40人ほどが跪いていた。

 もうこうなってくると、一種の風物詩みたいだな。

 わたしもちょっと期待しちゃったもん。

 なかったら寂しいとか思うかもしれない。


「帰ろう、マオ」

「うん」











「そういえば、浄化しているときに魔力が無くなりそうだったんだけど、アルの魔力が体から染み出るみたいに出てきて助かったの。あれ何だったんだろ…」

 帰りの道すがら、わたしは先ほどの不思議現象をアルに尋ねてみる。

「あー…、それは」

 なぜだがアルの歯切れが悪い。

 隣のジェイドさんからは目を逸らされるし。



「マオ様、夫婦間においての魔力譲渡のことはまだ教えていませんでしたね」

 シャーロット先生がいつもの先生の口調で隣にきた。

「夫婦間…」

 不思議に思ってシャーロット先生を見ると、シャーロット先生はわたしの耳に顔を近づけそっと囁いた。

 その内容にわたしの顔はみるみる熱くなっていく。



「シャーロット様、それは俺から…」

「女性同士の方が話しやすいだろうと思ってな」


 いや、どっちでも恥ずかしいわ!

 だって!

 わたしってば暗にアルと関係あります!って宣言したようなもんじゃない。

 恥ずかしすぎる。

 ちらりと周りに視線を流すと、何人もの人がジェイドさん同様わざとらしく目を逸らされた。


 


 もう!こんな大事なこと、もっと早く教えてよーーーーっ!!


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