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2.本邸での密談 sideアルフレッド

 今俺は重要任務のため執務室に籠っている。

 俺が呼び出したのは、執事のクリス、マオ付きのレーナ、料理長のオリバーそして庭師のダントンだ。



「まずはレーナ」

 俺は一番端にいるレーナを見る。


 レーナは頭を一度下げ一歩前に進み出た。

「はい。マオ様のお国では求婚には指輪が必須、とのことです」

「指輪、指輪か…」


 さすが、レーナ。

 初耳の情報だ。

 すぐに手配しようと俺が動く前にレーナが口を開く。


「なんでもキュウリョウ3か月分だそうです」

「キュウリョウとは何だ?」

 マオからはたまに聞いたことがない言葉が出る。

 今回のもそうなのだろうが、言葉は通じるのに不思議な現象だと思う。


「その方の収入の3か月分の金額である指輪を送るのが定石だそうです」

「俺の収入の3か月分…」

 俺の収入は主に領民からの税収だ。

 そこから各方面への予算などの振り分けをしていくわけだが。


「恐れながらアルフレッド様。アルフレッド様の収入3か月分の指輪をとなるとかなり巨大な石をつけることになりかねます」

 クリスの言葉に頷く。

 それほど高価な指輪を贈るとはマオの国の求婚はどのようなものなのだ。

 そもそもマオは装飾品には興味が無いようで、贈り物として喜ばれたのは食材の方が多いくらいだ。


「アルフレッド様、金額に関してはマオ様も目安であって重要ではないとおっしゃっていました。やはりそこに真心なるものが大事のようでございます。つきましてマオ様のお好みに合わせた指輪などいかがかと」

「好み…。そういえばマオは紫晶石を気に入っていた」

 街へ出た時唯一マオが目を輝かせた宝飾品。

 俺の目の色に似ていると言ったときのマオの可愛らしさと言ったら…。

 ふと気づくと目の前の4人が俺を凝視していた。

 いかん、つい口元が緩んでしまったようだ。


「コホン。それはようございます。紫晶石といえばこの領地の産物。それにアルフレッド様の瞳の色でもありますし、純度の高いものはかなり希少になります」

 クリスの言葉に俺も頷く。

 俺の色と言われればやはり俺も嬉しさを隠せない。

 好きな人が自分の色のものを持つと言うことはこちらでは重要な意味も持つ。


「クリス、街にノアという少年の父親が紫晶石の発掘にかかわっている」

「直ちに話を聞いてまいります」

 クリスが執務室を出るのを見届け、俺は料理長へ視線を移す。


「オリバー」

「はい。マオ様のお国ではお祝いの席にはセキハンなるものを振る舞うそうです」

「セキハン…。オリバー材料は」

「手配済みです。作り方もすでに」

 オリバーが畏まって頭を下げる。


「さすが仕事が早いな」

 オリバーはその探求心からマオの国の料理にもかなり精通している。

 マオの胃袋を掴むという料理人たちの作戦はかなり成功していると思う。

 その証拠にマオは王宮の最高級の料理を食べてもうちの料理が恋しいと言っていた。


「あと、ウェディングケーキなるものの情報も入手済みですのでそちらの準備も抜かりなく」

「助かる。では次にダントン」

 うちに来ている使用人の中でもかなりの古株になる庭師を見る。


「はい、坊ちゃん。やはり贈り物と言えば花。これはマオ様のお国でも変わらないようです」

「なるほど。だが坊ちゃんはよせ」

 ダントンは俺が生まれる前からここの庭師を務めているため俺のことをそう呼ぶのがなかなか抜けないのが玉に瑕だ。


「マオ様がお好きだと言っていた花はすでに大量に準備しています。お好きな色も下調べは万端です」

「よし、花束に関しては俺自ら花を選定し作成しようと思う」

「それはよろしい考えですな。私も微力ながらお手伝いいたします」

ダントンの言葉に頷く。



「では決行はマオの部屋も整う1週間後とする。ほかの者への通達は任せた。それではみんな頼む」


「「「承知しました」」」




 さらに俺はこの後、レーナ以外でマオとよく女子会なるものを開いている使用人数人を交えマオの国の結婚式のことなどの話を煮詰めた。


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