3.光とともに sideアルフレッド
ここまでか…っ。
諦めるしかないその光景が、突如眩い光に包まれる。
何が起きたかわからず、眩しさに目を細めながら状況を伺う。
俺とブラッディベアの間にあるのは光の玉だった。
ブラッディベアが振り下ろした腕はその光にはじかれたようでよろけているのが辛うじて見える。
助かった…のか。
しかしこれは一体…。
「なんだ、この光の玉…」
誰ともなく呟かれた言葉。
眩しいほどのその光はやがて淡くなり、まるでガラスが割れるかのようにパリンっと音を立てて割れた。
しばらくの静寂。
からの小さなつぶやき。
「ひぇ…」
ドクリと胸が鳴る。
震えるその声に庇護欲がそそられる。
目の前に現れたのは小柄な人。
こちらでは珍しい黒い髪は長くふわふわしている。
後ろ姿であるが、女性であることは間違いないであろう。
抱いたら折れてしまいそうな華奢な体。
後ろからだけではわからないが、こちらではあまり見かけないような服を着ている。
混濁していく意識に鞭打って俺は必死にその姿を見た。
大きな魔力がその少女から放たれる。
奇跡のような神々しい光。
それは一瞬の出来事。
放たれた光に包まれたブラッディベアが金色の粒子となって空へ舞い上がっていったのだ。
幻想的なその様子に誰もが息をのんで見守っていた。
――色濃くなる瘴気
かの者光により導かれ現れん
夜の闇の髪
黒曜石の瞳
聖なる力で安寧をもたらさん――
頭に浮かぶのは幼いころからよく読んでいた伝承の一節。
「…異世界からの…救…世主……」
俺の意識はそこで途切れた。