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1.戻ってきました

「「「「おかえりなさいませ、マオ様!!」」」」


 1月くらいしか離れていないのに既に懐かしさを感じるアルの本邸を見て胸が熱くなるのを感じつつ馬車を降りると、ずらっと並んでいた使用人たちがみんなで一斉にわたしを囲む。


 当たり前だけどみんな変わってなくて。

 こんなにも嬉しそうに迎えてくれたのが嬉しくて。

 不覚にも涙が出た。


「みんな…、ただいまっ!!」

 元気な声を出せば、わっとみんなから歓声が上がる。

 レーナなんか自分も涙を流しながらわたしの涙をハンカチで拭いてくれる。

 後ろの方では料理長のオリバーさんと庭師のダントンのおじいちゃんが肩を抱き合って喜んでくれている。

 やっぱりわたしここに帰ってこられて良かったって心から思える。




「まあ、いいんだが………。お前らは見事にマオしか目に入っていないな…」

 後ろでアルのそんな言葉が聞こえた。

 そうだよ、ここアルの家なのに!


「あ、アルごめんっ!感極まっちゃって」

「いや、いい。それだけみんなマオのことを待ちわびていた」

 アルの手が優しくわたしの頭に触れる。


「ア、アルフレッド様お帰りなさいませ」

 笑みを湛えていたクリスさんが姿勢を正しアルに向き直る。

「今戻った。通達が来ていると思うが、マオは俺の婚約者になった」

 言いながらアルがわたしの肩を抱きよせた。


 自然アルの胸にわたしの頭がぶつかり、それだけでわたしの顔は熱くなる。

 この5日、馬車の中ではアルの甘さにどっぷりと浸かっていたのだ。

 体がやけに過剰反応を起こして居たたまれない。

 だがそんなわたしたちに嬉しそうに目を細める面々。


「「「「アルフレッド様、マオ様、この度はおめでとうございます」」」」


「わっ、みんなありがとう!」

 照れるけど、それ以上に嬉しい。

 みんな本当に喜んでくれているのがわかる。



「ここの人たち、みんなマオちゃん大好きだからね」

 ジェイドさんが玄関先でみんなの様子を面白そうに見ていた。


「ジェイドさん!お久しぶりです」

「おかえりマオちゃん。それと婚約おめでとう」

 にっかり笑うジェイドさんにつられてわたしも笑う。


「ありがとうございます」

「ジェイド。お前にも留守を預かってもらって感謝している」

「まあ確かに結構大変だったけど、マオちゃんをちゃんとこの地に連れて帰ってきたってことで俺のしてきたことも無駄じゃなかったって思えるよ。ってことでお前は早速だが仕事だ」

 ジェイドさんが親指を上げて2階へ来いというジェスチャーをする。

 それに頷くことで返事をし、アルはわたしに向き直る。


「マオ着いて早々済まない。夜は一緒に摂ろう」

「うん。アル、お仕事頑張ってね」

「ああ」

 ふっと笑ってわたしの額にキスをした後、アルは颯爽と二階へと上がっていってしまった。



 そのあとはみんなの温かい目に晒されるわたし。

 はっ、みんないたんだった。


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