13.アルと一緒に帰ります
最終章を前に大幅に書き直し
投稿が遅れました…
わたしたちは、それから数日で帰りの準備を整えた。
その数日の間には、まあ色々ありました。
まずは婚約の発表。
これは王宮にきてから王都の人たちへの挨拶の時にも利用した王宮の城門の上から、王都に住むみんなに向けて大々的に発表されるみたい。
あの時は王様の隣に立って、眼下に見える人の多さにくらくらしながらだったからほぼ記憶がないんだけど。
今回は隣にはアルがいる。
宰相さんから紹介されて、わたしはアルにエスコートされながらその場へと足を進めた。
手すりがあるとは言えかなりの高さがある。
下にいるのは何百人という単位だろうか。
「ひぇ…」
「大丈夫だ。マオ」
力強く握ってくれる手をわたしも握り返す。
「うん」
わたしは下を見て、軽く手を振る。
するとそこからは大きな歓声があがりみんなも一斉に手を振り返してくれる。
おめでとうございますの声も聞こえ、怖さも忘れて思わず手すりに身を乗り出しながら答える。
「ありがとうございまーす!」
声を張り上げて手を振る。
やっぱり祝福してくれるのは嬉しい。
「マオ、乗り出すと危ない…」
後ろからわたしの腰に腕を巻き付け抱きしめてくるアル。
普段アルは他の人に対して塩対応だけど、今はどんな表情しているのか気になり首を曲げアルを見上げた。
すると何を思ったのか、わたしの顎を固定したアルが軽く唇を合わせた。
割れるような大歓声に包まれながら、わたしは火が噴くほど真っ赤になった。
「あ、アル…なにを…」
こんな大観衆の目前で!
しかも隣には宰相さんが。
怖くて宰相さんの顔は見られないが。
「婚約の発表だしな。ちゃんと愛し合っているってことも知らしめておこうと思って」
なんてことを言いながら惚れ惚れするような笑顔を振りまきアルも下に向かって手を上げた。
呆気にとられるわたしの額にキスをするというおまけをつけながら。
その次の日は王様と謁見。
やはりと言うか、宰相さんに苦言を呈されていた。
「ウォーガン辺境伯殿には羞恥心というものが欠けているのではないでしょうか。公衆の面前でもあり、発表の場たるあの場面であのような行為を…」
当の本人はどこ吹く風でひたすら貴族の仮面をかぶっている。
わたしにはできない芸当だ。
宰相さんがチクチク言う間、わたしはアルのママに振られたからなんだとか色々考えちゃって…。
「救世主様、なぜそのような不憫な子を見る目で見ているのですか?」
考えに耽っていたらいつの間にか宰相さんの視線がわたしに向けられていたことにも気づかなった。
「え!あ、いえ…あの深い意味は……。さ、宰相様も元気を出してくださいね」
「っ何の話です…」
「ふっ………」
隣から声が漏れる。
アル、貴族の仮面はがれてますよ。
笑い、堪えてるの見えてますから
「まあ、それくらいにしておけ。それにしてもアルフレッドがな…。変われば変わるものだ。さすがウォーガン家の血筋…。おっと」
宰相さんの視線を受けて王様が肩を竦めた。
「明日出発と聞いているが、その前に耳に入れておきたいことがある。…入れ」
陛下の言葉に数人の人がこの場に進み出る。
「シャーロット先生…」
一番前にいるのはシャーロット先生だった。
あとはローブを着た4人ほどの魔術師団の人。
「今回ウォーガン辺境伯の領地に研究所を建設したい旨報告を受け、昨日付けで許可を出した」
「研究所ですか」
王様の声にアルが不思議そうな声を出す。
アルも初耳のようだ。
「左様。そこのエーカー公爵家ご令嬢からの申請だ」
王様が頷くとシャーロット先生がアルに向き直る。
「私は救世主様であるマオ様との会話の中で、マオ様の故郷であられるニホン国にはこちらの生活を豊かにする品が多々あることに気づき、それを研究する施設をウォーガン辺境伯の領地に建設したい旨申請していた」
シャーロット先生がアルの家にいた時結構な頻度でお茶を飲みながら他愛ない話で盛り上がっていた。
結構日本の話を興味深げに聞いてくれるから色々話してたな。
とくに携帯食とか。
フリーズドライとか魔法でできそうだったからやってみたけど消し炭にしちゃって。
さすがに食べ物粗末しちゃったから封印してたんだけど、シャーロット先生からはわたしは細かい コントロールができないからだって言われて。
大まかな作り方を話えば、かなり興味深げに話を聞いていた。
「マオ様の近くで指導を受けながら様々な物を研究開発したいと思っている」
「そういう訳だ。報告書を読んでこれは我が国にとっても大きな発展となる計画として王家としても議会としても是非にとなった。そういう訳でアルフレッド、事後承諾にはなるがこれはウォーガン辺境伯の領地にとっても悪い話ではないと思うのだが」
「仰せのままに」
シャーロット先生が言っていた身辺整理とはこのこと?
アルの領地に移り住む気で色々と画策されていたってことかな。
研究施設ができるというのは人も雇われるわけで。
その商品ができれば人の往来も活発になって…。
アルの街が栄えることにも繋がる。
ずっとお世話になったアルの街にわたしでも何かできるかもしれない。
そう思うとやる気も出てくる。
わたしも頑張ろう。
「マオ様」
「カミラ様」
王様の隣にいるカミラ様の前に立つ。
どれだけお礼を言っても足りないほど助けられた。
ここにカミラ様がいなかったらわたしはどうなっていただろう。
「カミラ様、わたし本当に感謝しています」
「マオ様、やめましょう。感謝をしているのは私もです。いろいろな話を聞かせていただいて、子供のようにはしゃいでとても楽しい時間を過ごせました。よろしければ今後も私は手紙のやり取りなどさせていただきたいのですが」
カミラ様がふわっと笑う。
花が綻ぶとはこんな時に使うんだなと思える笑顔。
「もちろんです。喜んで!」
わたしにカミラ様という文通相手ができた。
わたしもカミラ様に向けて一番の笑顔で応えた。
そして本日、わたしはアルと一緒に領地に帰ります!
次回より最終章に入ります
ただ、大幅に書き直し中でかなり時間がかかりそうなので、数日おきの投稿になるかもしれません…
頑張って最終まで突っ走りたいと思います




