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1.王都までは馬車で5日かかります

閑話が昨日予約投稿できていなかったので朝に投稿しました。

なので今日は2回目の投稿になります。

「マオ、疲れてないか?」

「マオ、お腹すいていないか?」

「マオ、そろそろ休憩しよう」


 王都に向かって馬車に乗り込んでまだ1時間ほど。

 アルの過保護がフルスロットル。


 アルの想いを聞いてから1週間。

 王宮から届いた手紙で王都行きは決まった。

 想いを告げられてからのアルの甘さは留まることを知らない。

 アルってあれで甘さ控えめだったんだ、なんて遠い目をしてしまう。

 もうわたしに手加減するのはやめたそうだ。

 そうか今まで手加減されていたのか、とまたしても遠い目になったものだ。


 だがまあ、かくいうわたしもその甘さにどっぷりと浸かってしまっている。

 甘やかされすぎて、アルがいないと生きていけなくなったらどうする。

 一度冗談でそうアルに言ってみたら、

「俺はもうマオなしでは生きていけない」

と真顔で言われてしまった。

 もう2度と言わないでおこうと決意した。



 結婚の話は保留になったままだ。

 アルには返事は王都で貴族との顔合わせが済んでからでいいと言われているが、アルの言動の端々からわたしへの想いが溢れていてどうにもむずかゆい気持ちになる。

 結婚なんて考えたこともないし恋愛経験もない。

 でも今はちゃんと自分の気持ちと向き合わないといけないと思っている。

 王都でも縁談の話が出るのならなおさらちゃんと考えたい。




「アル、王都まで5日かかるんだよね。まだ1時間くらいしか経ってないよ。疲れてないし大丈夫だよ。」

「マオは初めて馬車に乗った時1時間ほどでも足をもつれさせるほど疲れていた。」

 それを言われるとな…。

 確かにあれから馬車に乗る機会はなかったけども。

 ガタガタと揺れるたび、アルがしっかりと腰に回してわたしを固定してくれる。

 なんなら膝に乗せようとまでしてくる。

 だが…。


「アルフレッド、鬱陶しいぞ!」

 凛とした声が馬車内に響く。

 そうなのだ。

 この馬車にはもう一人乗っている方がいる。


「シャーロット様、マオは馬車には慣れていないので必要な措置です。」

 そう魔法のシャーロット先生だ。

 シャーロット先生はもともと王都の方。

 今回わたしたちが王都へ行くと言ったとき、その際は一緒に乗せていけと言ったそうだ。

 わたしがいないのなら一度王都へ戻って身辺を整理するという


 身辺整理とは…?

 そう思ったが、惚れ惚れするほどの笑顔を見せられてはそれ以上聞けなかった。


 ちなみにジェイドさんはアルの執務の穴を埋めるべくお留守番。

 ジェイドさんがアルに許可を出した王都行きへの日程は1か月。

 あれほど忙しいアルにしたら1か月はかなり優遇された日数なのだろうが、この1か月をもぎ取るためにそれまでどれほど仕事に忙殺されていたかわたしは知っている。

 毎日欠かさず夕食は一緒に摂っていたのに何日かはそれすらもできない状況だった。

 そのことはやはり寂しいと思ってしまったが、わたしの為だと思えば何も言えない。


 行ったこともない王都に一人で行けるほど図太くはない。

 まだまだこの世界のことも勉強中なのだ。

 何か粗相をしてしまうのではないかと気が気じゃない。

 なんせこの国のトップに会うのだ。

 いくらわたしが王族と同等の権利を擁すると言っても、国のトップに対して失礼をするわけにはいかない。

 だからアルが同行してくれると聞いたときは飛び上がるほど嬉しかった。

 この世界にきてからずっと傍にいてくれる存在だからか、その申し出はありがたいし頼もしい。


 わたしってばアルに甘えてばっかりだな、と隣のアルを見上げると極上の笑みを返された。

 後光がさすほどのご尊顔だ。

 想いを告げられて保留にしているにもかかわらず甘えて。

 わたしってばとんだ悪女では!なんて思いも頭を掠める。

 でも結婚を簡単に決めたくはないという自分もいるわけで。


 複雑な思いを胸に馬車の外の流れる景色を眺めていた。


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