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閑話 メイドのレーナは見た

次回より王都編始まりますので、閑話として○○は見たシリーズです。


昨日投稿予定したはずなのにできていなかったため焦って本日投稿。

 クラーク子爵家3女として生を受けた私ですが、その生を受けた実家はとにかく貧乏。

 農業を主とする領地なので、税収は天候や自然災害でかなり変動します。

 そのうえ姉2人、弟3人という子だくさん一家なため、とにかく切りつめて生活をしてきました。

 うちの家族はみんながのほほんとしているため、ここは自分がしっかりしないとということで私は15になってすぐに家を出ました。

 もちろん働くためです。

 遠縁のつてですぐにこの仕事に就けたのは幸運でした。


 仕事は家でやってきたこととそれほど変わりませんでしたので、なんとかやっていけそうでした。

 ご当主であるアルフレッド様はそれはそれは綺麗な顔をしていらっしゃるのに、笑った顔は誰も見たことがないと言われるほど無表情なお方だ。

 だけど、使用人たちはみんなアルフレッド様を慕っている。

 無理難題を言ったりしないし、使用人に声を荒げたりもしたことがない。

 当たり前なことかもしれないけど、貴族社会で使用人にきつく当たる人は一定数いらっしゃいます。

 いえ、低く見積もりましたが、かなりの人がそうだと考えてもいいかもしれません。


 どの使用人もアルフレッド様が使用人以上に働いていらっしゃるのを目にしてます。

 真面目で勤勉、さらには腕もたつ。

 辺境伯としての自覚を幼いころから持って自分に厳しくしてきたのだと、執事のクリス様がおっしゃっておりました。


 そんな使用人の信頼厚いご当主様。

 使用人の願いが、アルフレッド様に素敵な奥様をというのは自然な流れ

 私がここでお世話になってから、本邸内でも町でもアルフレッド様が女性といるところを見たことも噂で聞いたこともありません。


 側近のジェイド様は結構目にしますが。


 そんな真面目一辺倒(褒めてます)のアルフレッド様が。

 なんと。


 笑ってらっしゃる。


 顎が外れるほど口が開いていたことに気づき周りを見回すと、みんな同じようになっていたのでほっとしつつ目の前の光景を見逃すまいと視線を戻す。


 馬車から現れたのは黒い髪をお持ちの救世主様。

 本日アルフレッド様とともに本邸にやってくるというお達しがあったお方です。

 伝承でしか知らない救世主様に会えると心躍らせていたのは私だけでないはず。


 転げるように馬車から現れた救世主様をしっかりと抱きとめたアルフレッド様はそれはもう優し気な顔で、長年一緒におられるクリス様でさえ驚いた顔を隠せていませんでした。


 しかもあろうことか救世主様にたいして馬車の降り方として抱き上げるのが常識などという聞いたこともないことを言う始末。


 再び顎が外れるほど口を開けてしまったのは仕方のないことだと思います。

 令嬢としてはあり得ない失態ではありますが。


 話を戻しまして、そうあのアルフレッド様がご冗談を言っているのです。

 なんと!

 アルフレッド様って冗談言えたのですね、なんてことは口が裂けても言えませんが。

 それを信じてしまわれる純粋な救世主様。


 騙されていますよ~、そんな文化や常識はありませんよ~~。

 となんとか心の中で訂正させていただきました。

 口に出して言えるはずもありませんからね。


 それにしても先ほどから驚きしかありません。

 アルフレッド様が体を震わせるほど笑っているなんて。

 腕の中におさまる救世主様はそれはもうかわいそうなくらい真っ赤で。

 それでもそのお姿はとても可愛らしく、頬の筋肉が緩んでしまいます。


 その後私は歳が近いからと救世主様付のメイドに任命されました。

 お部屋の案内後に一緒にお茶を、と言われたときは焦ってしまいましたが、しゅんとしてしまったマオ様を前に誰が断れるでしょう。

 アルフレッド様からも、マオ様の言うとおりにという許可が出ているのです。

 恥ずかしそうにわたしの名を呼び捨てにするお姿も、美味しそうに甘いものを召し上がる表情も、もう可愛らしくてたまらないのです。

 きっとアルフレッド様もこの可愛いお姿に陥落してしまったのでしょう。


 可愛らしくも謙虚で優しく頭のいい救世主様はあっという間に本邸の人気者。

 マオ様のお国では身分制度がなくみんなが平等なのだとおっしゃっていたので、その所為なのでしょう。

 使用人全員に優しい笑顔をお向けになって、何事にもお礼を欠かさない。

 マオ様がいらしてからこの辺境伯本邸は太陽に照らされているかのように明るくなりました。

 そんなマオ様に向けた使用人たちの想いはこのお屋敷にずっといてほしい、からアルフレッド様の奥方に、と。

 そう変わっていくのにそれほど時間は要しませんでした。


 全ての使用人の想いはひとつとなり、かなりの団結力となっています。

 料理人はとにかく胃袋から、とマオ様のお国の味を再現することに奮起し、花がお好きだというマオ様のために本邸の庭師が奮闘し屋敷には常に花が飾られるように。

 書庫にはマオ様が飽きないようにと今までなかった恋愛ものなどの新刊も並べられるように。

 これには女性使用人が沸いた。

 ともかくみんながみんなこの本邸をマオ様の憩いの場所にするべく奮闘しているのです。


 アルフレッド様の気持ちは一目瞭然ですからね。

 使用人一同アルフレッド様の想いを見守り応援してく所存です。



 私はというと当初は邪魔をしないようにそっと席を外すというスキルがかなり鍛えられました。

 そうしないと恥ずかしがりのマオ様が照れてしまわれてアルフレッド様から離れようとするので、わたしは空気をよみつつ音もなく部屋を出ることに全神経を集中してきました。

 だけども最近はアルフレッド様のスキンシップを自然に受けられるようになってきて、多少の目は気にならなくなってきたようです。

 なので、今は使用人一同空気になるというスキルを磨きつつあります。


 お二人のイチャイチャ、失礼、お二人の幸せそうな顔は見ていたいですからね。


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