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8.やはりただの街ブラとはいかなかった

 その後も散策という名の食べ歩きを楽しんだ。

 そのまま歩いていると食べ物から雑貨へと店の雰囲気が変わった。


「わあ、これきれいね」

 その一つの屋台。

 見たところ店番をしているのは7つくらいの少年だ。

 お店には紫色の宝石のアクセサリー類が置かれている。

 石はどれも小ぶりだが、キラキラ輝いていてとてもきれいだ。


 あれだ、アメジストに似てるんだ。

 自分の誕生石であるアメジストを思い浮かべる。


「これはなんていう名前の石なの?」

「紫晶石って言うんだ。うちの父さんがこの紫晶石を採る仕事をしていて、ここまで小さいのはお金にならないからすごく安い金額で譲ってもらってるんだ。それを母さんがこうやってアクセサリーにしてここで売ってるんだ」

「ししょうせき…」

 やはり異世界の石だからか聞き覚えはない。

 だが、紫水晶にちょっと響きが似ている。

 そういえば自分の誕生石のものを持つと幸せになれるとか言われていたな…。


「見てもいい?」

「うん!見ていって」

 男の子にお伺いをたてると嬉しそうに笑った。

 ネックレスやリング、イヤリングと色々揃っている中で、わたしは端にあったネックレスを手に取った。

 1センチにも満たない小さな石が1つついただけのものだが、濃いめのきれいな紫色をしている。

 金色のチェーンは短めで、首の開いた服装だと石が見えてよさそうだ。

 仕事柄アクセサリーとは無縁だったが、やはりこういったキラキラに憧れはある。


「気に入ったのか…?」

 横で興味深げにわたしの様子をみつめるアルと目が合う。

「わたしの国ではね誕生月にそれぞれ宝石があてはめられているの。でね、わたしの誕生石にこの石がそっくりだなって…。それにアルの目の色だし、とても綺麗」

 そうなのだ。

 アルの目を初めて見たときから思っていたのだ。

 アメジスト色の綺麗な瞳だと。


「買おう」

「え!?」

 もうすでにお金を払っているアル。

 行動が早い。


「マオ、後ろ向いて」

 商品を受け取ったアルがそっとわたしの肩に手をおいて後ろを向かされる。

 首筋にアルの手があたり、心臓が高鳴る。

 付けてくれたネックレスに触れながらアルを見上げる。

「い、いいの?」

「マオに何かをプレゼントしたかったから、俺も嬉しい」

 本当に嬉しそうに笑うアルが綺麗で目が離せない。

「あの、ありがとう」




 わたしは男の子にもお礼を言って一歩足を踏み出した。

 瞬間わたしの目の前に何かがよぎる。

 小さな女の子が転がるように飛び出してきたのだ。

「わっ」

「ご、ごめんなさい!」

 ぶつかる寸前アルが前に出てその女の子を抱きとめていた。

 小さな女の子は目にいっぱい涙をためている。

「ミラ!どうしたんだ?」

 後ろから先ほどの店員の男の子が飛び出して、その女の子に駆け寄る。

「おにいちゃん!おかあさんがっ!!」

「母さんがどうした!」

「おなかがいたいってたおれて…。どうしよう、あかちゃんになにかあったのかな?おかあさんなおるよね?」


 話を聞いてわたしはさっと顔色を変えた。

 赤ちゃん?

 妊娠中?


「ねえ!あなたたちのおかあさんは妊娠中?お腹に赤ちゃんがいるの?」

 わたしは膝をつきその場で泣きじゃくる女の子と焦る顔をしている男の子の顔を交互に見た。

 頷いたのは男の子だ。

「けど、生まれるにはまだ1月以上も先だって言ってた…」

 早産………。


 ここの医療のレベルはわからない。

 治療という魔法もある。

 お産も魔法…?


「アル!ここでの出産ってどうやるの?」

「え…っ、しゅ、しゅっさ…」

 一瞬動揺したアルだったが、わたしの必死さが伝わったのかすぐに持ち直して顎に手を当てる。

「俺も詳しくはないが、治療師が何らかの手伝いをしつつ産んでいるんだと思う」

「ぼくんちは治療師なんて来ないよ!家族と近所の人たちに手伝ってもらって産んでるよ」


 平民と貴族の違いだろう。

 いやこうしてはいられない。

 自然分娩しかないなんて。

 お産なんて命がけのものだ。


「ねえ!わたしをあなたたちの家に連れて行って!」


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