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1.回想-彼とその子-

60話で終わる予定です。

 昼下がりの午後、彼は保育園の帰り、母親と一緒に一度家に帰ってから近くの公園で一人で遊んでいた。もう年長さんなので一人で遊びにも行ける。そんな彼だが、保育園でも一人で遊ぶことが多かった。他にも友だちがいない訳ではないのだが[一人でいるの好きだから]というのが本当のところだった。


 今日は砂場で穴掘りをしていた。


「……くん」


 背後から声がするので振り返ってみると、そこにはいつも通っている保育園の同じお部屋の子が母親と一緒にいた。どうやら家に帰る途中らしい。正直、声をかけられたのが彼には驚きだった。というのも、普段ほとんど話をしない相手だったからだ。


 声をかけられたはいいが、どうしようか悩んでいると、


「……くん」


 再度声をかけられた。


「えっと……」


 名前が出てこない。


「いっしょのおへやでしょ」


 その子は笑ってそう言った。


「そう、だね。なにかよう?」


 戸惑いながら彼はそう聞き返した。


「これからいっしょにあそばない? ねぇ、ママいいでしょ?」


 その子は母親にそうせがむと、


「いいわよ、待っててあげる」


 母は公園のベンチに座って[遊んでらっしゃい]と促した。その子は[ありがとう]と言うと彼の元に近づいてきた。


「いっしょのおへやだけど、はなしたことないからおはなししようとおもって。よせてー」


 その子はそう言うと横にしゃがんだ。


「いいよ」


 それだけ言うと彼はまた掘り始めた。


「ねえ、きみいつもひとりであそんでいるけど、ひとりでたのしい?」


 子供はいつも直球勝負だ、彼は少し面食らってしまった。そんな彼が答えあぐねていると、その子は、


「ぼくは、ほかのこたちとあそんでいてたのしいけど、ほかのこたちはほんとうにみんなたのしいのかな?」


 と、彼に答えを聞く訳でもなく、横で山を作り始めた。

「ねぇ、おともだちにならない?」


 その子は彼にそう言った。


「いいけど、たのしいかどうかわからないよ?」


 先ほどそんな事を言われたので、子供ながらに頭を働かせたのだろう、彼はそう言ってその子に返事を返した。


「たぶんたのしいよ! だってぼくたちにているもん」


 彼にはその子の言葉の真意は測りかねた。


「にているってどういうこと?」


 彼はその子に聞き返す。するとその子はにぃっと笑い、


「ぼく、まえからきみのことずっとみてたんだよ。きみはぼくににているんだ、そんなきみにぼくはきょうみがわいたんだよ」


 その表情は、彼が今までのお友達の中でも見た事のないような異様なものだった。まだ小さい子供だ、普通ならあからさまに怖がった態度を示すのが普通なのだろうが、彼は何故かその子に興味が湧いていた。


 それはやはりその子の言う通り[にている]せいなのか、どちらにしても彼はその子の事を拒絶できないでいた。


 こちらのそんな事情を知ってか知らずか、


「それじゃあ、よろしくね」


 その子はそう笑顔で言った。


「ねぇ、なまえおぼえてないんだけど、おしえてくれる?」


 彼はその子にそう問いかけた。


「ぼくのなまえ? ぼくは……」


60話で終わる予定です。

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