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遺言 ~嘘と真実~  作者: 奏作
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父の遺言

第一話 父



俺の名前は石川 進 T大学在住で警察庁を目指している。

父の石川 重道もT大学を卒業し、警察庁へ。そこからエリートコースを歩み、現在は警視長となり数々の難事件を解決している。そんな父に憧れ俺も同じ道に進む決意をする。

小さい時から、父に瓜二つだったようで出会う親戚は口々にお父さんにソックリだと言った。父の幼少時代や学生時代の写真を見ると確かに似ている。と自分でも思うほどだった。


俺の幼少期時代は、母がおらず祖父母に育てられた。父さんは忙しく幼少期は遊んで貰った記憶はそんなに多くはなかった。だが、急にサッカーボールを買ってきて近所の公園でサッカーをしたのは鮮明に覚えている。 


2021年8月17日


俺は大学の講義が終わり、帰宅途中だった。

父の部下の井上さんから電話が鳴った。

【井上さんとは面識はあるが、挨拶する程度の顔見知りである。父が何かあった時の緊急連絡先として父が井上さんに俺の番号を伝えたと言われ、自分も携帯に井上さんを登録させられたのは4年ほど前だったと思う。一度も連絡が来た事はなかった。】

突然父の訃報を聞いた。急いで指定された警察署へ向かった。

安置所にて無念の対面をすることになる。

胸を銃で撃ち抜かれていた為、顔は安らかであった。


「なんでこんなことに…父さん…今日やっと警察採用試験の結果が届いたよ。

俺、警察庁に採用されたよ…父さんと一緒に働けるよ…うううう。」

【※警察庁の総合職としの採用は、毎年わずか10名前後と言われている。その狭き門を突破したのである。】


その場で何時間居ただろうか。安置所は地下に有り窓がないため時間の経過すら分からない。


父の遺留品を確認してほしいと、井上さんに言われた。その中に、見慣れない包装紙に包まれた細長い箱があった。


井上さんがこう言った。

「警視長は、息子の合格祝いを買いに行く」と話していたらしい。

いつもであれば、誰か警護を付けるのだが。この日は息子の祝いの品だ。ゆっくりと選んでやりたい。人通りの多い場所だし大丈夫だろう。と話したという。


「箱を開けてもいいですか?」


「ああ。開けてあげてくれ」


箱の中身は、父が昔から常に身に着けていた腕時計だった。父が大切にしていた腕時計と同じ物をプレゼントしてくれたらしい【時計の裏にはSUSUMUと刻印がされていた。】今まで欲しいものは大体祖父母が買ってくれたが、父さんからプレゼントとして貰ったのは幼少期の数回だった記憶しかない。久しぶりに貰うプレゼントがこんな形になるとは。

遺留品はもう少し保管しなければならないとのことで、後日受け取りに行く事になった。


父48歳で死去 帰宅中何者かに発砲され即死。犯人は逃走中。警視庁は警視長殺人事件とし捜査本部を設置し捜査を開始。警視長が殺害されメディアは大いに盛り上がった。お盆明けの大雨が降る日だった。


俺は井上さんが自宅まで送ってくれるとの事で自宅へ向かった。雨はいつも間にか上がっていた。

車に揺られながら、なぜこんな事が起きたのかと、悲しみと苦しみが俺の体を支配した。


自宅が見えてきたが、押し寄せる記者の群れが自宅を取り囲んでいた。

プルルルル…携帯が鳴る。幼馴染の夢からの着信である。


「もしもし・・・」


「あんたねー!もしもしじゃないわよ!大変な事になっているじゃない!家には帰れそうなの?」


「記者が家を包囲しているよ。とてもじゃないけど帰るのは無理そうだ。」


「わかったわ。とりあえず家に来なさい!お母さんには言ってあるから。」


「すまん。迷惑掛けるが今日はお言葉に甘えるよ。」


幼馴染の家は、車で3分ほどの所だった。記者に見つかることもなく、無事にたどり着いた。送ってくれた井上さんに別れを告げた。


ピンポーン ガチャ 扉が開いた。幼馴染のお母さんが出迎えてくれた。

お母さんは、俺の顔を見た途端泣き崩れた。それを見た俺も我慢出来ずに泣いた。

ただただ何も言わずに。


夢が2Fから降りてきた。

いつも勝気な夢も、心配そうな顔をしている。


「と、とりあえず上がりなさいよ。」


「う、うん。お邪魔します。」


2Fの夢の部屋に通された。

何年ぶりかに来た部屋は、大きく変わる事もなく、毎日の様に遊んだ小学生の時を思い出させた。俺はソファーにドッと腰かけ天井を見上げた。


「ねえ。大変だったね。」


「うん。まだ何が何だか整理が付かないよ」


「秀才のあんたでも流石に今回は無理か」


「・・・」


「子供の頃、将来の夢を話したのを覚えている?」


「ああ。覚えているよ。」


「あんたは警察官。お父さんみたいになるんだ!って」


「お前は、看護師。俺が事件でケガをしたら治すんだ!って」


「あ!俺採用試験受かったんだ!今日通知が来たんだ!」


「え!おめでとう!凄い!今日通知が来たって事は、おとうさんには?」


「生きている父さんには伝えられなかったよ…でも父さんの耳には入っていたかもしれない。合格祝いに腕時計を買ってくれていたんだ。その時計を買いに行った時事件に…」


「そ、そっか」


そこから沈黙が続き。いつの間にか眠りについていた。


暗闇の中で目が覚めた。人の話し声が聞こえている。

目が段々と冴えてきて、夢の部屋で寝てしまっていた事に気づいた。

部屋のドアの隙間から微かに光が漏れていた。


部屋のドアを開けると、1Fから話し声が聞こえている。

1Fのリビングへと向かう。


「起きたんだね!」

と夢が言った。時計を見ると深夜0時だった。3時間ほど寝ていたらしい。


「よー!久しぶり」


そこには親友の淳も来ていた。

【昔から感情を表に出さない不思議な奴で、この日もいつも通りに接してくれた。それが逆に嬉しかった。】


夢が淳に連絡し少し前に来たらしい。

「何か食べる?夕飯まだでしょ食べてないでしょ?私何か作るわ!夕食の残りもあるし。」夢が何か作ってくれるらしい。ずっと緊張状態の為、正直おなかは空いていないが・・・。


と思ったが、夕食の残りだと思われる味噌汁の匂いがしてきたら、お腹がギュ-と鳴いた。

「よし!ごはんに味噌汁、卵焼きに焼き魚で完成!」ダイニングテーブルに準備してくれた。


「ありがとう。いただきます。」

ご飯を食べ始めたら、淳がやっと口を開いた。

「親父さん、何が起きたんだ?」


「詳しいことは、まだ聞いてないんだ」


「そうか。捜査本部が立ち上がったみたいだし。犯人捕まるといいな。それと、警察庁採用おめでとう!」


「ありがとう。犯人見つからなかったら、俺が必ず見つけてやる。」


「そうだな。お前なら出来るよ。きっと。」


「淳は順調なのか?」


「ああ。おれはこのまま大学院に行って司法試験を受けるよ。弁護士になるのはもうすぐだ!」


「そうか!がんばれよ!」


それから二人は、事件の事は話さず昔話に花が咲いた。二人の優しさが身に染みた。



~8月21日~


葬儀が行われた。流石に役職のことを考えると身内だけで。とかは到底無理な話である。

大きな斎場でやることが決まった。俺は何もせずとも警察関係者がほとんどの準備や段取りを決めてくれた。報道陣も連日押し寄せた。俺は喪主としてやるべき事を淡々とこなした。俺にも警護が付き、父の右腕だった人(井上 直幸)が常に護衛をしてくれた、挨拶に来てくれた方と父との関係性などを耳打ちで事細かく教えてくれた。中には有名政治家や官僚の方々が父を惜しむ言葉を掛けてくれた。


葬儀が終わった後もしばらくは警察関係者が護衛についてくれるとの事だった。

幼馴染や親友も手伝いに来てくれている。全ての法要に参加してくれて俺をフォローしてくれた。感謝でしかなかった。この感謝は一生忘れないであろう。


通夜、葬儀、告別式と滞り無く進み、父が生前どれだけ多くの人と関わって来たのかがこの数日で知る事となる。葬儀には各界から3800人の参列があり父の偉大さを痛感した。

通夜、葬儀、告別式3日間法要で7000人を越えた。


火葬場に到着し、父と最後のお別れをした。


父はあの世へ旅立って行った。

父の物だろうと思われる煙突の煙を見上げ、強く生き抜くことを誓った。

火葬場での待ち時間、父の弁護士と名乗る男に声を掛けられた。

名刺【○○弁護士会 坂木 一雄】を渡されこう言った。


「お父様から遺言書をお預かりしています。開封に際し家庭裁判所に提出する書類は全て整っております。明日開封は出来ないのですが、開封するための手続きを行いたいのですが13時に家庭裁判所に一緒に行って頂けませんか?」との事だった。


※遺言書は、見つけた人又は第三者が勝手に開封出来ないようになっている。これを検認という。検認の申請をして数日後裁判所から開封する日時の連絡が来て立会人の元開封をする。検認をせずに開封すると罰金などが科される場合がある。


突然の事で、あたふたしていると護衛の父の右腕だった井上さんと目が合った。大丈夫と言いたげな顔で静かに頷いた。俺は、父が誰と繋がっていて何が正解なのか分からず。少し不安ではあったが弁護士の話を承諾した。


2021年8月24日 家庭裁判所で開封の手続きを済ませた。

9月1日、裁判所から遺言書開封の日時の連絡が来た。2021年9月6日 月曜日 13時よりと書かれていた。


5日間そわそわしながら過ごす日々が続いた。

遂に遺言書を開封する日が。


2021年9月6日 俺はまだ警護生活が続いていた。父さんの遺留品の引き取りも先日済ませた。やっと父さんと同じ腕時計を付ける事が出来た。だが、不可解な事に父の腕時計が遺留品には含まれておらず、自宅や車を探したが見当たらなかった。肌身離さず付けていた記憶のある腕時計…いつか出てくるかなと淡い期待をしている。


護衛の方が到着し共に家庭裁判所へ向かった。


家庭裁判所に到着すると、坂木弁護士は先に到着していた。

そして、坂木弁護士の先生が立ち合いの元【遺言書】が開封された。


遺言書


全ての遺産は、長男 石川 進に相続させる。


この遺言執行者として○○弁護士会 坂木 一雄を任命する。


付言

進 お前に全てを話さずこの様な形になってすまない。

母さんが居なくなった後も、親らしい事を一つもしてあげられなかった事を申し訳なく思っている。寂しい思いをさせてすまなかった。

ずっと隠していた事がある。母親 【石川 順子】は生きている。私がずっと追いかけている未解決事件がある。その事件に母さんは巻き込まれてしまった。

この遺言書をお前が読んでいるという事は、私は事件を解決出来ずこの世を去っている。相手は相当大きな組織なのだろうが全貌を明かすことが出来なかった。決して事件を解決しようとしてはいけない。母さんもそれは望んでいまい。お前の安全を思っての事だと考えて欲しい。お前には無限の未来が広がっている。お前が選んだ道である警察庁採用試験もきっと突破している事だろう。父さんはお前を誇りに思う。警察官になり一人でも多くの人を助け、自分を信じ悪と戦って欲しい。お前には申し訳ないが身寄りが居なくなってしまったな。更に成長し家庭を持ち幸せに暮らせる事を祈っている。困った時は祖父の家に行くといい。お前の背中を押してくれる何かがあるはずだ。

親愛なる息子よ。


石川 重道


俺は脳天を撃ち抜かれる感覚に襲われた。死んだと思っていた母さんが生きている。父さんが解決出来なかった事件・・・今の俺には何も分からない。

近づいてはいけない事件、組織、父さんや母さんは何と戦っていたんだのか?

とにかく俺は前に進むしかない…


第一章 完結


皆さん初めまして。


奏作ソウサクと申します。

今まで数々の作品を読み、転移タイムスリップ小説を自分で書いてみよう!と思い2022/3月から始めてみました。

小説を書くのは初心者ではありますので、ご指導など頂ければ幸いです。

皆様の貴重なお時間を頂く以上は、少しでも楽しい作品にするため努力致します。


宜しくお願い致します。


奏作

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