随想
めらめらと燃えて、我が身を焼き尽くす勢いで燃え盛る激情に、わたくしは未だに名前を付けることができないのです。
言葉にしてしまえば陳腐になってしまうであろうそれを、さながら我が子を守る母親のようにいつまでも大事に抱えているのです。
わたくしはきっと物書き失格なのでしょう。
絵描きであればきっと一枚の絵にしたでしょう。
――残念ながらわたくしは映像を思い浮かべることができません。
演奏家であればきっと楽譜にしたためたでしょう。
――残念ながらわたくしは楽を奏でることができません。
わたくしは物書きであります。
言葉を綴って、思いを吐露する人間でございます。
だから、この感情を書き記さなければなりません。
わたくしは夢想家にございます。
白昼夢の中に着想を得ます。
幻想を書き記します。
それゆえ、人様のお目を汚すに値しない文章ばかりを書き連ねて参りました。
けれどそれでいいのです。
いつか、だれか、わたくしの夢を理解する人が現れたら、それだけで幸せなことでございます。
けれども、もしそのような奇特な方が現れずとも、わたくしは幸せでございます。
夢を見ることは、幸せなことにございます。
いいえいいえ、同意などは求めておりません。
わたくしにとっては、それがすべてであることだけご理解ください。
神話に、民話に、大地に、幻想に想いを馳せます。
罪も恥も、すべて書き記して参りました。
夢を見ることは呪いに似ております。
幻想はいずれ現実と混ざり合い、やがてわたくし自身を侵食していくでしょう。
わたくしは既に見てはいけないものを心の内に飼ってしまっています。
それはわたくしの喉元に牙を突き立てる獣であり、わたくしの魂の奥底まで愛してくれる崇高な存在でもありました。
狂気、と人は呼ぶのかもしれません。
けれどそんな陳腐なものではございません。決して。
なぜならわたくしは狂うことができないからでございます。
狂ってしまえるなら――望むがままに夢を見られるのなら――、わたくしは喜んでこの身を捧げる所存ですのに。
然るにわたくしは、狂えないのでございます。
わたくしは物書きでございます。
ですからわたくしの夢から生まれたそれを書き記さねばなりません。
恐怖と畏怖、崇拝と愛着、情と虚無。
けれどそれらすべての感情が、ひとつ言葉の中で入り乱れて形を成すことができずにいるのです。
わたくしは死神の手を取ります。その腰を抱きます。刃を自らの喉元にあてがいます。
走馬灯のように記憶と幻想が入り乱れます。
まるで輪廻の如く何度も繰り返します。
実体のない身体を貪ります。
わたくしの身体が貪られます。
わたくしは涙を流しながら、快楽の奔流にのまれます。
そうしてようやく、わたくしは生を実感するのでございます。
どなたにも、わたくしのこの感情を貶めることはできません。
今や物書きたるわたくしは言葉を否定します。
今や夢想家たるわたくしは夢を否定します。
今や人間たるわたくしは存在を否定します。
何もかもを否定して、嗚呼、それなのにわたくしはどこへも辿り着けてはおりません。
本当にどうしようもない物書きでございます。
おゆるしください。
どうぞ、おゆるしください。




