1 【 タケル・ヤマノ 】
―――異世界。
異世界とは、言葉の通り、今いる世界とは異なった世界。 同じルールや概念が通じないことが多く、人が創造する摩訶不思議な現象が存在する場合もある。
そんな摩訶不思議な現象というのは人々にとっては理想そのもの。
魔法。
魔術。
陰陽術。
モンスター。
そして、神様。
他にも、人が常識として捉えているすべてをひっくり返すようなものがあるかもしれない。
そんな未知な世界を人は夢を見る。
誰も知らない。
誰も見た事がない。
誰も考えた事がない―――異世界を。
◇ ◆ ◇ ◆
まだ朝だというのに街の中は人で賑わっていた。
街中には色々な店が営業をしており、道行く人々に店員が声をかける。
朝1番に入手した魚。
珍しい素材。
新鮮な果物。
ありとあらゆる店が活気ある声で店を開いている。
そんな賑わう人混みの中、人々は何事かと驚く様子で息を切らして走り去っていく少年を見ていた。
街の注目を集めている少年は黒髪の短髪に上下共に安い服を身に纏って、袋に包んだ棒状の物を肩に担ぎ、ボロボロになったリュックを背負っている。
何かに急いでいるのか茶色の上着が汗で色が変わっている。
そうして街の人々の注目を集めて少年が辿り着いた場所はある建物の門番所だ。
息を切らして向かってくる少年に門番をしている衛兵2人はお互いに顔を見合わせる。
「お、おい君。 大丈夫か?」
「だっ! だい・・だいじょ・・・大丈夫、です!」
心配そうに見る衛兵に大丈夫だと答える少年は見るからに今にも倒れてしまうのではないかと思えるほど疲弊していた。
衛兵の1人は腰に装備していた自分の水筒を少年に差し出すと、少年は大きな声でお礼を言うと有無を言わさない速さで水筒の中身を空にした。
それでようやく落ち着いた少年は背負っていたリュックから1枚の紙を出して衛兵に見せる。
「受験番号 1018! タケル・ヤマノです! 今日はよろしくお願いします!」
最後まで読んで頂きありがとうございます!
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それでは、また次回。