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Beyond ZERO.  作者: La m
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地底海賊

「起きろ・・・」

その低い声と共に目が覚めた。喉が渇き、砂埃のようなものが混じっていて、上手く声が出せない。身体が重く、顔を上げてみると、そこは仄暗い1つの教室分ほどの窓のない部屋だった。そして、硬い鋼鉄のようなゴーグルを付けた男が立っていた。咳払いをし、声の調子整え、恐る恐る率直な質問を投げかけてみた。

「ここはどこですか」

「世界のどこにでもあって、どこにでもある場所だ」

「は」

思わず私は意味のわからないこの鋼鉄ゴーグルの発言に拍子抜けになった。それと同時に、自分がどこから来て、何者だったかさえ思い出せない。

「もしかして、ここは死んだ後の世界ですか」

「それに近いが、今はここで言えない。ただ一つ確かなのは、もう元の世界には帰れないし、干渉することもできない。できるのは、このスクリーンに映る世界をただ見ることだ」

「何だそれ・・・ただの生き地獄じゃないか」

「しかし、これはお前の望んだことだ」

「早くここから出せ!!!クソメガネ!!!!!」

「いや、私が良くしようとするために君はここに入られているのだ。運がいい」

しばらくの間、密閉された空間に居座っていたためか少し目が眩んで、それと同時にこの理不尽な仕打ちをしてみせるゴーグル男にとてつもない怒りを感じた。そして、部屋の隅に目をやると、刺股のようなものがあったので、こいつで一捻りしてやろうと考えた。

「うぉおおおおおお!!!」

ゴーグル男は咄嗟に何をしようとしたのかすぐに感づいたようで俊敏に身体を中心から左に外らせ、俺の渾身の一突きを軽やかに避けた。そうするとゴーグル男が少し笑みを浮かべ、こう言い放った。

「何をするのだよ。俺は・・・」

「え」

「俺はお前だ」

目の前の男がゴーグルを外し、そこにあったのは瓜二つの自分の顔だ。

訳がわからない。なぜ自分と同じ人間がそこにいるのか。まるで三面鏡でも覗いているようだ。

「驚いただろう。私は間違いなく遺伝子をほぼ完全にコピーされたお前の分身だ」

「そして、明確な違いがあるとするならば、体が特殊装甲が覆われており、様々な実験を経たのが俺だ」

「そして、私がなぜこの密室に同じような見た目をしたお前の元にいるのか教えてやろう」

そうすると、彼が次の言葉を話し始める前に、唐突に大きな揺れと爆撃音が外側から響いてきた。あまりの衝撃に彼は大きく転んで頭を打った。

「そこの俺に似たゴーグル男、なんだ、今の揺れは」

「今のはお前を狙ってやってきたゴースト達の襲撃だ。実体をすり抜けるが、こちらへは防御壁ですり抜けられないはずなのだが・・・」

「そんなことより、ここから逃げないとやばいんじゃないか」

俺は再びゴーグルを付けた男に警告した。

「さあな。俺の目的はまずお前の誘拐、そしてアスタルペジアという名のワクチンだ。・・・ミッション完了だ」

ゴーグル男が唐突に自分の目的と勝利宣言を声あげたのち、彼は手に持っていた手榴弾を密閉された部屋の隅に恐ろしいスピードで投げつけ、ここで目の前が真っ白になった。間違いなく五臓六腑が全て燃え上がる感覚が、数の概念など何も通用しない束の間で起きた。


「あれ・・・?死んだ、俺」

目を開けるとそこには先ほどの汚臭にまみれた密閉部屋から景色が変わり、見渡す限りに凍てつく氷、氷、氷。空まで突き抜けるような洞窟が視界の奥まで広がっている。時折飛び出しているつららが刀のようにこちらへと向けており、トンデモナイところに来てしまった、と身震いした。

ーーーお尻がそこから動けなくなる程にとにかく凍っている。そして、しばらく固形食を食べていないせいか、極寒と相まって腹がよじれそうだった。こんなのはありえない。スーツ姿の自分が顔がぼやけた姿で思い浮かぶ。この状況はきっと悪い夢だ。

「夢じゃないぞ。先ほどお前を誘拐し、それと同時に大爆破を起こしてこちらに逃げてきたのさ」

絶望に悶えながら、なんなのさと顔を上げると、またもや全く姿の変わらぬゴーグル男がそこに微動だにしていなかった。

「一体、どうやって?」

「非常にシンプルな仕組みさ。私のアビリティー能力は、莫大な炎を生むエクスプロージョン[爆撃]、起きた現象を保存法則を守りながら半永久的に倍にするインフィニティ[魔力増幅]、そしてその4.184×109 Jほどのエネルギーを利用した瞬間移動能力。条件がややっこしいけど、ただそれだけさ」

「あの部屋の隅に投げた、ただ手榴弾の爆発をきっかけに、その能力でここまで移動したっということか。訳がわからない。頭に氷でも詰まってんのか。おら」

夢なのか、もしくはとてつもない凄腕のピエロが目の前にいるような気がして、半信半疑で投げ草に脇にあった氷塊を投げつけた。その時のゴーグル越しの鋭い瞳孔を見たとき、やってしまった、と心のなかで反芻した。

ヒュルンッ バリバリッ

一瞬で蒸発し、その氷塊は脆いお菓子のように空へ消えていった。

「お遊びはここまででいいだろう」

男はヘンテコな機械のゴーグルとは裏腹に、素早く靴底を氷に擦らせながら立ち上がった。

「誘拐が成功した暁には、お前がさっき閉じ込められていたボロ臭い研究所からエリクサー(不死身薬)とワクチンが眠っていて、そいつを奪おうとしたのさ。年季が長いんだがな、精鋭の“ゴースト”たちの逆襲に追い立てられてここまで急遽逃げ込んだわけだよ」

「いやいや、ゴーストって、一体なんなんだ?」

「あまりその言葉を出すな。やつらは地獄耳だからな。どっから目が出てもおかしくない。逃げ足だけはこちらの方が上だが」

手首をポキポキと鳴らしながら青い洞窟に目を凝らすこの男が、最初は不気味だと思っていたが、少しづつ喋っているうちに、とても頼り甲斐があることを確信に思った。なんだか共についていこうという意気込みにもなっていた。この世界では、強い者か、逃げ足が速いやつにおんぶしてもらった方が良さそうだ。

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