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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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三章二十四話《過去との再開》

敵の掃討が完了し、地下に隔離していた人達を地上に戻したあとひとまず全員合流してボロボロになってしまったライブラの中で今後の打ち合わせや報告を聞くこととなった。


「ひぐっ、うぐっ、メイド長〜!」


「安心しなさい、命に別状はないから一旦落ち着いて」


ライブラに所属していた女子生徒の1人が安置されているエリシアに飛びついてわんわん泣いていた。


「メイド長?」


「ここでのエリシアは生徒の世話も任されてるからな。教師兼メイド長って訳だ」


「なんかすげーな、色々と」


ザインが疑問を呟くとガルムが少し笑いながら答える。


「ふうん、これくらいの損壊率ならグリーダが直せば何とかなりそうだね。教員がエリシア除いてほとんど死んじゃったから授業の再開はかなり難しいだろうけど」


ジークの言う通り、建物は魔法をうけてかなり傷ついて所々欠けている部分もあったが倒壊までは至っておらず、魔法で修復すればどうにかなる程度ではあった。


「......あー、これは...」


「どうかしたのか?」


「流石にこの状況じゃ建物直したところで機能しないわね。おそらく私達が到着するまで教師達が生徒を守っていたのでしょうけどほとんどが犠牲になってしまってるわ」


グリーダは少し悲しげな表情をしていたが、直ぐに割り切ってぽっかりと穴の空いた人材の枠埋めをどうするか考え始めた。


「魔皇さまー、とりあえずほとんどみんな寮に帰りました。怪我人はまとまって待機中です」


「あら、レンナご苦労様。それじゃああなたも1度戻ってゆっくり休みなさい。後のことは私達がどうにかするわ」


「了解です。ほら、アリルも帰るよー」


「メイド長〜!死んじゃやだー!」


さっきからずっとエリシアに張り付いている女の子をひっぺがしてレンナと呼ばれた女の子は寮へ戻って行った。


「寮の方に帰ってったってことは、そっちの被害はほぼないって事でいいのか?」


「まあ多少は離れているし敵もこっちに集中していたもの。少し巻き添えで傷ついている部分もあるかもしれないけどだいぶマシでしょうね」


「ふーん...」


ザインの疑問をグリーダが答えているのを横目で見ながら、ジークは倒した敵の死体を観察している。


「ジーク?一体どうしたんじゃ?」


「グラン、これ...」


ジークは敵の死体の中から何かを引き抜いてグランによく見えるよう近づけた。


それは色んな色がない混ぜになった輝く宝石のようであった。


「魔晶石?...とはちょっと違うみたいだけど、これがこいつらの核になってるのは間違いないみたいだね」


「そうね、...前に倒した似たような個体からもそういう核は見つかってるわ。今は私の伝手で解析中だけれど正直収穫は見込めなさそうよ」


ジークの持っていたその宝石に似た石を覗き込みながらグリーダは言う。


「さ、流石に今日のところはこれ以上長居する訳には行かないわ。さっさと帰りましょう」


パンと手を強めに叩いて注目を集めたあと、みんなに向かってグリーダはそう言い放つ。


しかし、それに待ったをかける人物が現れた。


「グリーダ、それはちょっと待った」


「り、リザリー?」


さすがのグリーダもこれは予想外だったのか表情が愕然としていた。


他のみんなも帰る気満々だったため、ナーマはあまり表情を崩していないものの他のみんなは呆然としてしまっている。


「いや、グリーダが言ってたじゃん?ここのメイド長と情報共有しておいてって。だからいまさっきここの付近に到着したんだけどさ」


「ああ、ごめんなさいね。こっちの対処に精一杯だったのと逃がさないために結界張ってたから普通に気付かなかったわ」


「おいグリーダ、閉じ込めるって下手すりゃとんでもない被害が出てたかもしんないんだぞ」


閉じ込めるための結界、それを聞き逃さずにグリーダに詰め寄るガルム。


「言ったでしょう?寮の方にあまり被害が出なかったって。それはつまりここに一挙集中して来ていたってことになる上に、外部の者があんな怪物をそう何体も対処できるとは到底思わないわ。だからここの壊滅のリスクよりも外に逃げ出すことを懸念してたのよ」


しかしグリーダの方は驚きもせず当たり前のように答えた。


「まーまー、ガルムの言いたいこともよく分かるよ。でもグリーダがみすみす仲間を見殺しにするような間抜けじゃないってことくらい、みんなも重々承知じゃない?」


ガルムの肩に手を置いて宥めるようにリザリーが諭す。


ガルムはいまいち納得していない様子ではあるが、過去一度もグリーダが仲間を見捨てたことなど無いことは十分理解していたが故に返す言葉が見つからずに押し黙ってしまった。


「ああ、あとほらこれ。内容は見てないけど多分ザイン宛のだと思うから渡しておくね。魔力は感じないから多分普通の手紙だよ。じゃあねー」


おざなりにザインに手紙を放り投げてそのまま背を向けて帰ってった。


「え、ちょっ?!」


慌ててザインが手を伸ばしてキャッチしようとして、素っ頓狂な声を上げて手紙を握る。


ザインがその手紙を見てみると、見たことの無い印が押されていて下の方に小さな文字で「シーナ」と書かれていた。


「...あいつっ」


その名前を見たザインは少し表情が曇り、忌まわしそうにそう呟いた。


「何かあったの?ザイン」


その様子を訝しげに見るグリーダ。


「へ?ああ、いやすまん。何でもない」


そのまま手紙を乱雑にポケットにしまってはははと軽い笑みを浮かべた。


「...ふうん、まあいいわ。もうここにいる意味もないし帰るわよ」


「ふあぁ...流石に眠いね...」


口数が少なくなっていると思えば眠そうに欠伸をしてウトウトし始めているジークをグランが支えていた。


足元に大きな魔法陣が出現し、光と共に全員が姿を消した。


<><><>


「久しぶりだね、ザイン君」


「ああ...久しぶりだな」


人間世界イヘド帝国イルグ子爵領近隣の見晴らしの良い丘の上、そこで俺は再び相見える事となった。


俺の学生時代、天才ともてはやされその肩書きに見劣りしない確かな実力を持っていた同級生。


「まず、なんで俺に接触してきたんだ?シーナ」


シーナ=ライザー、ライザー家といえば今は没落貴族とまで言われていてあまり地位は高くないがかつては知らぬもの無しと呼ばれるほどの名声を持っていたとか。


「再会したって言うのにいきなり冷たい態度だね、ザイン君。そんなところも嫌いじゃないけど」


「言っておくが軽口言ってる場合じゃないからな、俺からすればお前が何で俺の所在を知っているのかが疑問なんだが?その上こんな回りくどいやり方までな」


「えー?愛の力...かな?」


「身の毛もよだつ言い方すんな。気持ち悪くて仕方がない。ぶっ飛ばされたいのか?」


少し幼げな顔つきに温和な笑み、はっきり言って敵意はほとんど感じられないがどこか冷たく感じる雰囲気を纏わせている。


こんな見た目で今の俺でもかつてのシーナに勝てるかは怪しい、下手をすれば何も出来ずに殺されてもおかしくない。


「...まあ冗談はさておき、本題に入ろうか。」


「ああ、こんなところに呼び出しておいてくだらないこと並べられたら流石に怒るからな」


久々に会ったシーナはかつての姿とは違い大人びていて、そして表情は薄笑いを浮かべているせいで何を思っているのかは全く分からない。


「ザイン君、単刀直入に言うね?」


「な、なんだよ」


不敵な笑みを浮かべたシーナはこちらに1歩近づき、イタズラっぽく唇に人差し指をあてながら口角を上げた。


「私達、晴れて敵同士だね?」


「な?!っお前!何言ってんだ!」


一瞬頭が真っ白になった。


シーナが敵?状況が呑み込めず思わず後ずさってしまいそれを見たシーナが笑いながらさらに1歩詰めてきた。


「今回私が言いたいのはね?ザイン君との決着をつけるために、私はあなたの...ううん、《十ノ頂》の敵になろうって事だよ」


「なにを...決着って...」


シーナとの決着、その言葉で思いつく記憶は一つしかない。


学園での一幕、武闘祭での初戦。


「私はね、あんな終わりに納得してないんだよ?だってザイン君一番いいところで力尽きちゃったんだもん」


「過程がどうであれお前の勝ちだろ?!そんな事で俺たちと敵対しようってのか!」


あれは...あの戦いは俺にとっても雪辱以外の何ものでもない、でももう過去の話だ。


「うん、私も別に今更勝ち負けに固執してるつもりは無いよ。でも...あの力の正体、有耶無耶にしたまま消化不良ともなればちゃんとした形で決着をつけたいと思わない?」


「思わねえよ、どう足掻いても勝てないのは分かってたんだ。アレが奇跡だっただけだ」


あの時、あの戦い、俺自身もよく覚えていないが激戦を繰り広げた末にあと少しのところで俺が力尽きたらしい。


気付けば医務室で寝ていた俺からすればなんの事だか全くもって分からないが、大きな衝撃で記憶が抜け落ちているだとかそういう事なんだろうと自分を納得させていた。


「奇跡...ねえ、そんなので私とザイン君の差が埋まると思ってるんだ」


「知らねえよ。ただ、そこまで勝ち方にこだわる考え方は持ってない。そんな事で命を賭けるほどの覚悟も持てないからな」


シーナがどれだけ強くなったかは知らないが、今ここで戦いに発展すれば不味いことになる。


「お前...なんかおかしいぞ。あの頃はそんなんじゃ無かっただろ!」


「そうかなあ?...まあそうかもね。でも知ってるでしょ?あの戦いの後私がどんな評価になったのか」


シーナは学園一の才女とまで呼ばれていた紛うことなき天才、俺はそんな称号を意図しない形とはいえズタズタに傷つけたことになる。


あの光景を目の当たりにした者たちは口を揃えてシーナのことをこう呼んだ。


「没落貴族の敗北者」


「...そうだね、勝負には勝ったけどあまりにも無様な勝ち方したせいで周りから馬鹿にされ挙句の果てには家の悪口まで言ってさ。何度も殺したくなったよね」


「それで俺を殺したいのか?本当の勝利を得るために。過去の汚名を払拭するためにか?」


今更...だなんて言えない。


俺を恨む気持ちも理解は出来る、だがそれだけのために《十ノ頂》を敵に回すような発言をしたのは不可解極まりない。


「俺だけと決着をつけたいなら仲間を巻き込むな。流石にそこまで行くと冗談じゃ済まないぞ」


「何言ってんの?冗談なわけないじゃん」


刹那、シーナの指先が一瞬光った。


攻撃が来る、そう確信して後ろへ飛び退いたが俺の想像以上にシーナの魔法は速かった。


体が無理矢理地に押し付けられ指先1本たりとも動かせずなんの抵抗もできず倒れ伏した。


「何勘違いしてるのか知らないけど、和気藹々と雑談しに来てるわけじゃないの。これは宣戦布告だよ?"私達"とあなた達の」


「ひ、1人じゃないのかよ」


精一杯の力を振り絞って顔だけ視線を上げ、シーナを見ると猟奇的な笑みを浮かべながらこちらへゆっくりと近づいてくる。


「私の目的自体はザイン君との決着だよ?それは変わらない。でも利害の一致で協力してるだーけ」


倒れ伏してる俺の目の前で立ち止まり僅かに光を放つ指先をこちらへ向けると少しづつ光が増していく。


「ほら、早くしないと本当に死んじゃうよ?」


「ぐっ...」


高まっていく魔力の波動、指先からゆっくりと模様が空中に現れ魔法陣が浮かび上がる。


シーナの魔法は重力魔法。


今俺の周囲の重力が何倍にも膨れ上がり、全く立てそうにない状態でシーナは嗜虐的な笑みを浮かべてこちらを眺めている。


「いきなり...何しやがる」


「んー?別に?ただ少しあの時の再現をしようと思ってね。ほらほら頑張って」


全く立ち上がれないほどの重力を浴びせ続けながら並行して指先に魔力を集めている。


マズイ…このままだと本格的に殺される。


「...ふうん、やっぱり中途半端にいじめてもああはならないか...。ならもっと本格的に危機感持ってもらわないとね」


「は?何を___」


言い切る前に意識が飛びかけた。


頭が潰れるような感覚に気付いた時には地面に半分以上めり込んで全身の骨が悲鳴をあげている。


周りの地面も沈んできていてどんどん下がっていっている。


「がっ...い、一体何が目的だ?!」


顔を横にずらして何とか声を出すが、シーナは黙ってさらに重力を増大させた。


「ぐっ!カハッ?!」


肺に溜まった空気が無理やり押し出され乾いた声にもならない音しか口から出ない。


ああ...流石に死ぬな...これ。


知り合いに会うなり殺されるって...どんな不幸だ。


「それじゃあ、これでトドメ。もう出し惜しみしてる場合じゃないんじゃない?」


指先の魔力が球体の形になるとゆっくりとこちらへ近づいてくる。


だが刹那、俺とシーナとの間に割って入ってきた者がいた。


「誰?!」


シーナが咄嗟に叫んだ。


顔を何とかずらしてその姿を見てみたが、全く覚えのない相手だった。


黒いローブを着てフードを深く被って顔は見えず、両手には禍々しい魔力を放っている黒い小剣。


「ねえ、邪魔しないで欲しいんだけどさ。全く関係ないなら手出しされる筋合いないんだよね!」


黒いローブの人にシーナは容赦なく球体を加速させてぶつけようとしたが、その魔法が届くことは無かった。


その球体を手で触れた瞬間、黒い何かに包まれて次の瞬間には跡形もなく消え去っていた。


「チッ、本当に何者なの?あなた」


そこでようやく黒ローブの人物が話し始めた。


「この茶番に意味は無い。早く帰って」


凛とした女性の声が響いた。


「帰れ?帰れなんて言われて大人しく__」


その瞬間、シーナの両腕が吹き飛んだ。


「は?」


素っ頓狂な声を上げて、数秒経ってようやく自分の状態に気付いたのか顔から血の気が引いていく。


両腕があった場所から血がドバドバと流れ出し、シーナは膝をついて沈黙してしまった。


「な、何を...」


シーナは肩を震わせながら恐る恐るシーナは顔を上げると、黒ローブの人物は静かに小剣を喉元へ向けて佇んでいた。


俺はそれをただ呆然と見ているしか無かった。


重力の魔法はいつの間にか解けているのは体を少し動かして分かったが、目の前の出来事が凄まじすぎてそれどころでは無い。


「殺す気はない、今日のところは帰って」


黒ローブの人物はそれだけ言うと背を向けて、今度は俺の方へ顔を向けた。


その時ローブの中がチラッと見えたが、白い狐面を被っていて顔は見えない。


「何者なんだ...一体お前は」


「今はまだ、それは知るべきじゃない」


黒ローブの人物は俺の方へ歩き出す、だが先程のような魔力は感じず不思議と恐怖はある程度和らいでいる。


強大な力を感じるにも関わらず、まるで優しく包み込まれるように安心感すら感じるその魔力はどこか覚えがあった。


「ザイン、私は絶対に...あなたを死なせない」


そして、彼女は俺を優しく抱きしめた

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