三章二十二話《序曲の終焉》
すっかり夜は明け、昨日の午後辺りからは比較的動けるようになっていた体は既にある程度回復しつつあった。
「グリーダの契約魔法の恩恵、相変わらずとんでもないな...」
風呂とか諸々誰かに介護して貰わなくちゃならないのかと思っていたが何とかなって安堵していたが、魔力制御を意識しつつ安定さえさせれば肉体はすぐに再生されて問題なく動かせるようになっていた。
「今の時間は...そろそろ朝飯か」
眠い目を擦りながら階段を降りてリビングに行くと、ほんのりと焼けたパンの匂いが鼻腔をくすぐり食欲がそそられる。
「おはよう」
「あ、ああ。おはよう」
台所で調理しているが、背が低いせいで見えていなかったナーマに挨拶されて凄いビックリした...てかいつもは俺にあまり挨拶してくることもなかったからな。
「おうザイン、体の方は大丈夫なのか?」
「ガルムも早いな、もうあらかた平気だ。かなり無茶したとは思うがグリーダの契約魔法様々だよ」
既に起きてきてるのはまだガルムとナーマだけか...いや部屋にいるだけで起きてはいそうだが。
「グリーダもまだ寝てるのか?」
「だろうな、それか地下室でまだ色々してんだろ。気にするだけ無駄だな」
まあ、大体そんなことだろうとは思っていたがやっぱりか。
「出来た、みんな呼んできて」
それだけ言うとナーマはテーブルに人数分の食器を置いて手際よく料理をよそって行く。
「ってあれ?十人分ってことは今日はマーナもここで食べるのか?今まで部屋で食べてたが」
「そろそろ体調も良くなってきてグリーダが許可していた。でもまだ世界がんは本調子では無い」
なるほど、ようやくか。
「とりあえず呼んでこようぜ」
「ああ、そうだな」
と、言うわけで2人で皆を起こしに回りみんなで食卓についた。
「みんなおはよう。それから今日は食べたあとみんなには外に集合してもらうわ。少しばかり時間とらせて申し訳ないのだけど」
チラリとナーマと目配せしながらグリーダは言った。
表情から見てそこまで深刻なことでもないように感じるが、全員集めるのはかなり珍しいな。
「それって危険なことなのか?」
「危険ってほどではないわね。まあ万が一のこともあるから一応警戒だけしておきなさい。事故が起こる可能性は0じゃないわ」
「いや危険じゃねえか」
万が一というのが何を意味するのかいまいちよくわからないんだが、グリーダがそう言うと相応に警戒してしまう。
「あと、それから一応報告よ。私なりに伝手をあたって色々と調べては見たわ。そこで分かったことは…結局何も無かったわ...」
「伝手ってエリテスさん?あの人でも知らないならもうほぼ確定で未確認の魔物なんじゃないの〜?」
「そもそも魔物かどうかも怪しい。明らかに私が戦ったのも龍より強かった。それ以上に魔物はあれほどの魔力制御を持っている場合はほとんどない上に異常なほど正確に殺しに来ていた」
ミリアの言うエリテスって人は気になるが今は置いとこう、それよりもナーマが明確に強いと言える魔物なんて現在じゃほとんどいないだろう。
魔物ですらない...か。
「そうね、色々と気になることはあるでしょうけどひとまず食べましょ。ちゃんと食べてから話さないと頭が働かないわ」
そこで話し合いは一時中断でみんな黙々と食べ始めた。
「とりあえず皆揃ったわね?それじゃあナーマ、私の前に来なさい」
「分かった」
ナーマがグリーダの目の前まで歩く。
「昨日渡した剣は...ちゃんと持ってるわね。それじゃあ他のみんなはしっかりと見ておきなさい。今からナーマには模擬戦をしてもらうから」
「模擬戦?」
ナーマが誰かと模擬戦をするのは珍しいが、それ以上にグリーダが相手をするっていうのがますます分からない。
グリーダはいつも俺たちが外でトレーニングしている間地下室で魔道具を作ったり魔法の研究をしたりしているからそもそも普段はあまり外に出てくることすらない。
「今回ばかりは事情が事情なのよ。私が相手なら思う存分力が振るえるでしょうしあなた達が相手をするよりもよっぽど安全だもの」
「グリーダがそこまで安全ってことに固執するってことは割ととんでもないことしてるんじゃねえのか?見た感じ恐らくナーマの剣についてだろうが」
「あら、鋭いわね」
かなり言動から慎重になっていると感じたのかガルムはナーマの持つ剣が変わっていることに気付いたんだろう、グリーダも否定せずに微笑んでいる。
「ま、見てればわかるわ」
突如グリーダの体から魔力が溢れ出して辺り一帯を包み込み世界が紅く染まり始める。
ナーマの方は対して動揺も緊張も見せずにただ紅い世界が広がっていくのを呆然と見ている。
「いくらグリーダ相手でも何も出来ずに負けるほど私は弱くない」
ナーマの姿が一瞬にして消えたと思ったらグリーダの真後ろに移動していて、グリーダの両腕が宙を舞っていた。
「ふふ、どうやらある程度既に恩恵を得られてるみたいね」
グリーダは両腕を失っているにもかかわらず嬉しそうに笑いながらナーマから距離をとるように飛び退いて、着地する頃には腕が元通りになっていた。
「何度でも切り捨てる」
魔力の残滓が空中にナーマが動いた軌跡を映し出し、視覚的にどう動いたのか理解はできるがあまりにも現実離れした速度と剣戟の鋭さに息を飲むことしか出来ない。
グリーダも魔力障壁や自分の血から作り出した剣で対抗しているが速度では圧倒的に不利で一つまた一つと体に傷がついていく。
「それじゃあ少しだけ本気でやりましょうか」
グリーダがニヤリと笑った瞬間ナーマの周り全方位に魔法陣が一瞬にして生成され真っ赤な棘がナーマに貫かんと迫り来る。
「っ!」
流石のナーマでも即席の魔法だけでこれを防ぎ切るのは無理だろうなって思ったが、その動きに少しだけ違和感を覚えた。
まるで背中にも目があるかのように全ての魔法陣の位置を正確に把握しつつ全ての棘を切り払い優雅に着地した。
「まだまだ行くわよ」
グリーダが軽く腕を振ると今度はまたしても無数の魔法陣が上空に生成されそこからいくつにも枝分かれした光線がナーマの退路を塞ぎつつ包囲するように迫り来る。
「この程度では私はどうにもできない」
ナーマの持つ剣に見るからに膨大な魔力を込めて振り回しながら高速回転、当然のように全ての光線を弾き返してその勢いのまま距離があるにもかかわらずグリーダに向かって大振りに剣を振り下ろし纏っていた魔力が斬撃となり高速で飛んで行った。
「これも耐えるのね、なら次はこれよ!」
「おいおい!ってなんじゃこりゃ?!」
いきなり今までとは比べ物にならない規模で上空に無数の魔法陣が現れ空を覆い、その全てが煌々と光を放ち今にも数多の魔法が降り注がんとしていた。
流石にまずい、こればかりはナーマだけでなく俺たちまで下手をすれば死にかねない。
「安心しなさい、全員魔力障壁で保護してるから。ナーマ以外は」
パチンと軽く指を鳴らすと半透明な膜で全員が覆われてグリーダが得意げに笑っている。
「さあナーマ、あなたの本領はここからでしょう?存分にその力を見せなさい!」
天空にひしめく魔法陣が全て一際大きな輝きを見せた直後、紅い魔力の塊が全てナーマに向かって目視すら困難な速度で降り注いだ。
「おい!何してんだ!」
俺は無意識に叫んでいた。
何故ならナーマは、そんな切羽詰まった状況にも関わらずまるで瞑想でもするかのように目を瞑り微動だにせずただじっと構えていた。
「スゥ...フッ!」
幾重にも響き渡る金属音、放たれた魔法全てをまるで舞い踊るように全て剣で叩き落とし弾き返し一つとしてナーマに命中することなく物の見事に処理して見せた。
しかも目を瞑って。
「えっえぇ?!お、お姉ちゃん?!」
横で様子を見ていたマーナも度肝を抜かれた様子で驚愕の表情を浮かべながら絶句している。
「マーナも知らなかったのか?あんなことできるって」
「お姉ちゃんが強いことは知ってるんです。でも...あんな動きができるなんて知らないです。見たこともないですから」
そうか、妹のマーナが言うならそれは間違いないんだろうがだとしたらなんであんな動き...いやもしかしてグリーダが今日ナーマと模擬戦をしようと言い出したのはそのためか。
「ってガルム〜?お〜い」
その姿を呆然と見ていたガルムにミリアが肩を揺すっている。
ガルムの方も周りが見えなくなるほどナーマの動きに集中しているんだろう、何か深く考えているようにも見えてとんでもなく集中しているみたいだ。
「あ、悪い。考え事してた」
再びナーマの方に目を向けると少し息が上がっている様子ではあるがまだまだ普通に動けそうだし恐らくまだ模擬戦を続けるつもりなんだろう、グリーダの方に剣を構えている。
「悪いけれどもうお終いよ。ナーマもお疲れ様」
けれどグリーダはそんなつもりはなく紅い世界も消え去りいつもの風景に戻ってしまった。
「...結局なんのために模擬戦をしたのか分からない」
「あら、あなた自覚なかったのかしら?あなた目を閉じた状態で私の魔法を全て捌ききったのよ?」
「私が?」
「いや無意識にしてたのかよ」
つくづくとんでもないな。
「と、言うわけで見てもらった通りナーマは明らかに私たちでも到底真似できないことを簡単にやってのけたわ。これは何故かみんな分かるかしら?」
グリーダが俺たちに問いかけてくるが正直思い当たることなんて...あ、もしかして。
「武器か?始める前にナーマの持ってる剣を意識してたみたいだしな」
「正解!よくわかったわね」
グリーダは嬉しそうに控えめにぱちぱちと拍手した。
「そう、昨日普通の武器作ろうとしたらリザリーが乗り込んできて私が作った武器に細工していっちゃったの」
はぁとため息を吐きながら説明し始める。
「お母さんが?あっあ?!まさかお母さん自分の力を...」
「流石娘なだけあるわね。察しが早い」
ナーマにリザリーが何かを与えたってことか?それであんな異常な動きができるようになったとしたら納得できなくもないがそんな簡単に与えられるような力なのか?
「…どっちにしろ規格外もいいとこだな」
「ナーマの武器にリザリーが細工したものは別に何のひねりもないただ単純な力、黄金龍の片鱗よ」
「黄金龍?」
確か聞いたことがある、龍族の中で頂点に位置する最強の龍種。
魔力、身体能力共に他の龍族を圧倒し種族対戦でも暴威の限りを尽くし喧嘩を売ってきた神族を撲殺してほぼ根絶やしにするところまで追い詰めたと言われている。
と学園で習った。
「そう、黄金龍はあくまでもその見た目や魔力が金色に輝いていたことからその呼び名が広まっているから厳密に言うとリザリーの家系がそう呼んでいるわけじゃないんだけれどね。まあそこはどうでもいいわ、黄金龍の力を武器に込めてナーマに渡したと言うのが何を意味するのかというのが重要なのよ」
「でもナーマちゃんにはお母さんの力を全然感じないよ〜?実の娘の私でも気づかないのはちょっとおかしいんじゃない?」
「え、そうなのか?」
ミリアでも気付かないって与えられた力が希薄なのかそれとも他に何か理由があるのか。
「そうね、ナーマに宿ったのは黄金龍のほんの一部だしはっきりいってパッと見て分かるほど表に出ることは無いわ。さらに言えば分からなかったのにはもう1つ理由があるのよ」
「ふむ...どうやら適応したようじゃな」
今まで黙って眺めていたグランが口を開いた。
「なんか知ってるのか?」
「そうじゃな、であればグリーダの代わりにワシが説明しよう。端的に言えばリザリーの力は才能を引き伸ばす力なんじゃ。その一部をナーマが宿したことによってナーマの才能が大きく引き上げられた...ということじゃろうな」
「そう、グランの言う通り黄金龍の力は宿主によって大きく形を変えてそれぞれに合わせた才能を引き伸ばすのよ。リザリーの強さは知っているでしょうけどあれも黄金龍の力で身体能力を大幅に強化されているからこそよ」
「ほんの一部だけでもあんな強さになるのか、どうりでリザリーがあんなに強いわけだな」
リザリーが本気で戦ったところは見たことがないが俺たちが必死になっても傷ひとつ付けられなかったゴリアテにいとも簡単に大きな傷をつけただけはある。
それでも手加減していたんだろうが。
「あら、勘違いしているみたいだから言っておくけれどナーマのあの動きは元々よ?強化されたのは別の部分ね」
「は?別?」
「ナーマが強化されたのは魔力探知...と言うよりも空間把握能力ね。魔力からあらゆる存在の座標を瞬時に把握することが出来る上にナーマは頭の回転がはやいから即座に対応出来るのよ。つまりあの速さはいつもと同じなのよね」
「うっわ...」
思わずドン引きだ。
つまり今のナーマには奇襲は一切通用しない状態かつグリーダがそれなりに本気になったとしても簡単に捌ける程の速さ、更には全力で速度を乗せた攻撃であれば下手な魔力障壁は簡単に貫通するだろう。
「最強だな」
「ま、そうなるわね」
元々頭一つ抜けて強かったナーマが今度は手が付けられない程強くなったって訳か、リザリーはなんの意図でナーマにこんな大層な力を与えたんだろう。
「それじゃあ一応試しに使ってみて危険はなさそうだから私は戻るわね。一旦みんな解散よ、集まってもらって悪いわね」
一足先にグリーダが拠点に戻り、みんなやる事もなくそのまま各自解散、各々勝手に帰って行った。
「ナーマってあんな強かったのか?」
「前よりも格段に魔力を感じやすくなっただけ、グリーダも説明していたように私の技量や身体能力は一切変わっていない」
昼飯を作りつつ夕飯の仕込みをしているナーマに聞いては見たが少し視線を向けただけですぐにそっぽ向いて適当にではあるが答えてくれた。
「マーナも驚いてたな、ひょっとしてリザリーにも勝てるんじゃないか?」
「無理」
「あれでも無理なのか?グリーダの魔法全部簡単にいなしてたじゃねえか」
「そもそもどれだけ切りつけても傷一つつかない上に一撃もらえば私が即死する。その上即席の魔法で加速するにも限度がある、そんな状態じゃまず見切られて滅多打ちで死ぬ」
リザリーが実際に戦ってるところはまだあまり見てないが、ナーマでも即答で無理と言うのはもはや強いとかそう次元の話じゃないだろ。
「そもそもリザリーは私の師匠でもあった。数十年前私はリザリーに身体強化の魔力制御を教えてもらいながら四六時中延々と模擬戦をしていた」
「初耳だな。確かにナーマも身体強化しつつ戦うことが多いよな。まあ納得だ」
「その時リザリーは私が全力を出した状態でも一切魔力を使わずに素の状態で遊び半分で弄ばれて、私が動けなくなるまで疲れた様子も見せずに闘ってた」
嘘だろ...?
前にナーマと戦った時逆に俺が一瞬でボコられた記憶があるんだがな、一体何者なんだ。
「リザリーは魔力によって大きく強くなるのは力、俊敏性はあまり速くならない。筋力による瞬発力は高くなるけど純粋な破壊力は他の追随を許さない」
「ああ、どうりで」
ナーマは元々かなり軽いし軽装備での戦闘が主だ。
となればリザリーが魔力を使おうが使わなかろうがあまり大差ないんだろうな。
「とはいえナーマ顔負けの速度を魔力に依存せずに発揮できるのは驚異でしかないだろ。なんで引退なんかしたんだ?いや実際色々と手伝ってくれてるみたいなんだが」
「リザリーは...なんでもない、本人に聞くのがいちばん早い」
なんか意味深な言い方だな、前に会った時はそこまで何かを隠しているようには感じられなかったが過去になんかあったのか。
「まあいいや、機会があれば聞いてみる。調理の邪魔して悪かったな」
「別に、そこまで大変な作業でもない」
話はここで終わりだとでも言うようにこちらには見向きもせずに調理に集中している。
リザリーの過去、か。
気になるしグリーダなら教えてくれるかもな。
「と、言うわけで教えてくれないか?」
「これまた突然ね。でも私が話せることなんてあまり面白みのない話になるでしょうけどいいのかしら?」
「まあ、別に面白さを求めてる訳じゃないんだが。気になっな、あんな強いのになんで引退なんかしたのか」
はっきり言ってあそこまで強いのに代わりに新しい人材を招くメリットは限りなく薄い。
「...いいわ、教えてあげるわね。とりあえず簡潔に言うとリザリーは実質引退はしているけれどそれはミリアのためなのよ。つまり私たちのそばにミリアを置いておく方が安全だと判断して自分が引退して代わりにミリアをここで過ごさせてる」
「は?それじゃあ俺たちにミリアを保護させてるってことか?」
え、なんじゃそりゃ。
納得はできるがなんか複雑な気分だな。
「保護って言い方は少し違うわ。その意図もあるでしょうけどリザリーはミリアに強くなって欲しかったのよ。だから私たちのそばでみんなと切磋琢磨できる環境であるここにいさせたかった。強くなれば自分の身を守ることにも繋がるからって」
「つまりミリアの鍛錬のためにここにいさせてるってことか?だとしたらむしろリザリーが一緒に戦いながらミリアと特訓した方がいいんじゃないか?わざわざミリアを戦わせる理由なんてないだろ」
心根にどんな意図があるのかは分からないが、危険性を考えるならむしろ俺たちからは遠ざけた方がいいはずだ。
リザリー程の力があればミリアを育てながら最前線で戦うことなんて造作もないはず。
「理屈では...ね、けれど現実ではそうもいかない。一番の理由はリザリーがここにいては付きっきりで守ってあげることは出来ないこと、リザリーがそばにいなければあの子は1人になってしまうからという事よ」
「いやでも...じゃあミリアとリザリー両方ともここにいるって選択肢もあるはずだろ?なんでリザリーは出ていったんだ?ミリアをここにいさせたいだけならわざわざ出ていく必要なんてないだろ」
「ごめんなさいね、それ以上は私の口からは言えないわ。リザリーにも色々と事情があるのよ。私が軽々しく言えることじゃないの」
俺がリザリーの戦いを見たのはゴリアテと戦った時くらいだがそれでも別格の強さがあるってことは充分に分かってる。
「違和感しかないな」
「そうね、意外と私達の関係性ってチグハグなのよ。全てが合理だけで成り立っているのなら苦労なんてないわ」
「.....」
明らかに誤魔化しているようにしか見えないが、それがリザリーにとって知られたくないことだってことは簡単に想像がついた。
であればきっと無理に追求する必要も無いし、無理に知る必要も無いことなんだろう。
「さて、それじゃあ私は魔道具の調整をしなきゃならないからもう戻るわね。他に話したいことでもあればその時また声掛けてちょうだい」
「え?ああ、そうだな...」
グリーダはいつものように工房へ行き俺は1人取り残され、もやもやを残したまま部屋へ戻ってきた。
そのままベッドへ倒れ込み仰向けで目を瞑る。
(一体...何があったんだろうな)
あからさまに言葉を濁すほどのことが過去にあったか、考え過ぎならそれはそれで別にいいがやはり気になってしょうがない。
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時間は過ぎ、みんながそろそろ寝始める時間帯。
グリーダの懸念していた事態が案の定恐起きてしまった。
拠点内にグリーダの作った警報の魔道具の音が鳴り響き、即座にグリーダが全員をリビングに招集した。
「皆集まったわね...早速で悪いけれど本当に時間が無いから手短に話すわ」
それからグリーダが口にした言葉に誰もが耳を疑った。
「前に戦った謎の魔物、それが数万の大群になって襲撃していると報告が入ったわ」
これは、忌むべき存在との全面戦争の幕開けであった。




