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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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3章十八話《変革の運命》

と、言うわけで惨敗したわけなんだが…気絶した俺はベルナードに部屋まで運ばれてそのまま一夜が明けたらしい。


「はは、容赦ねえな全く」


ベッドに横たわりながらそう呟いて起き上がるとふと違和感があった。


「は?これ…」


体に力が入らなくて立ち上がった途端膝をついてすぐさま倒れ込んでしまった。


意味がわからない、なんでこうなったのかも何が起こってしまっているのかも、信じられないくらい体に力が入らなくてそしてとても体が重く感じる。


「起きたのね、ザイン」


全く気づいていなかったが、どうやらすぐそばの椅子に座ってくつろいでいたのであろうグリーダが声をかけてきた。


「た、立てない」


「見りゃわかるわよ。そうね、まあそれも当然じゃないかしら?」


当然?全く思い当たる節がないんだが、一体なんで俺がこんなことになってるんだ。


「魔力を過剰に消耗していたのと、昨日使った緊急転移用の魔道具の副作用的なものね。あなた昨日ミラルと戦ってほぼ魔力を使い果たしたと言うのに同じ日にベルナードと戦って、しかも転移用の魔道具は体に決して軽くない負荷がかかるしそれもなおかつ緊急用ともなれば相当ね」


「な、なるほど」


どうやら連続で戦ったせいで魔力がすっからかんになってしまったせいでこうなっているみたいだ。


かなり無茶したなとは自分でも思っていたが、これは想像以上に体を酷使していたみたいだった。


「ま、どうせこうなるだろうとは思っていたから既に皆んなには伝えてあるわ。それにここに朝ごはんも持ってきているのよ。ほら、食べさせてあげるわ」


グリーダのすぐそばにはパンとスープが置かれていて、グリーダはスプーンでスープを掬って俺の口元へ運んできた。


「なんか、少し恥ずかしいな」


「仕方ないでしょ?なんなら他の誰かに頼みましょうか?」


「それもっと恥ずかしくないか?!」


その提案飲んだら俺羞恥で多分大変なことになる。


「全く、実質病人二人は流石に大変ね。マーナの方は少しばかり症状も良くなってもう充分回復したみたいだけれどまだ安静にしてもらっているしね」


「へえ、元気になったんだな」


「ええ、まあ肉体の方は私が治療したから本来よりもかなり早く治っているわ。魔力も問題なく制御できるようにリハビリもしていたわよ」


本当なら数ヶ月とかかかるみたいなこと聞いていたんだが、まだ数週間経ったかくらいなんだがもうそこまで回復したのか。


グリーダの治療って結構とんでもないな、今更だけど。


そして俺はゆっくりと朝ご飯を食べさせてもらって、少しばかり世間話みたいな事して過ごしていた。


「で、今日は昨日みたいにまた森の調査するのか?」


「いえ、その件なのだけど私がなんとかするわ。今日はみんな特にすることはないわね。強いて言うなら休みってところかしら、最近色々と立て込んでいたもの」


「グリーダ一人でか?かなり大変そうだが大丈夫なのか?」


「私かなり舐められてるのかしらね。そもそも上空から怪しい存在がないか調査して、万が一戦闘になっても私であればほとんどリスクもないし長期化してもすぐ帰還できるし、無理する前に引き上げるわよ」


「ま、まあ余程のことがなきゃグリーダにとっては大したことはないか。となると心配すべきはみんなだな。どうせそんなにやることないから一緒に戦いたいとでも言うんじゃないか?」


まあグリーダほどの実力があれば単独行動だとしても不測の事態に陥ることはほぼないだろうしましてや不死ともなれば尚更だろう。


さらに言えば昨日一体はナーマが仕留め、グリーダも一体仕留めていておそらくそれと同等の敵がいても既に強さが割れている以上グリーダであれば造作もなく撃破できる。


「んで、あれが何者かはある程度予想は立ってるのか?流石に異質だとは思うが経験則的にはどうなんだ?」


「そうねえ...少なくとも固定観念に縛られちゃ答えにはたどり着けないんだろうとは思うわよ。ただ、今までにあんな存在と遭遇したことがないのだもの、そりゃあ分かるはずもないわね」


固定観念...か、まあ確かに今までと同じだと思ってたら確実に足元すくわれるだろうけど今更何が来ても特別驚かないと思う。


「それなら意外ととんでもないヤツらかもな。例えば異世界から来てたりしてなあ」


「異世界?」


「いや、例えばの話だよ。この世界の外側から来たんだとしたらあの外見なのも納得だろ。どっか別の世界の侵略者みたいな感じで攻めて来たりな」


自分で言っててなんだが多分ないだろうとは思ったが、案外グリーダの方は真面目な表情だ。


「そうね、確かにこの世界の外側から来たんだと考えればミリアも知らなくて当然だしあそこまで強いのも頷けるわ。ただ実際そうであると断言するにはまだ情報が足りないわね」


「いやいや割と本気で異世界説信じてるのか?結構適当に言ったんだけどな」


「あくまでも可能性の話よ。と言っても実態がなんにせよ具体的にどう対処するのかはあまり変わらなさそうなのよね。まあ安心しなさい、私が最終的にはどうにかするわ」


その言葉グリーダが言うと説得力すごいな。


「そうだな、結局正体がわかったところでやることはそこまで変わらないか」


色々と問題が立て込んではいるが、こっちから出来ることは現状そこまで多くはない。


そこでグリーダが調査してくれるって言うならそれで少しばかりは進展してくれればいいが、それも楽観すぎる気がしないでもないのがなあ。


「それじゃあ行ってくるわね、後のことは多分誰かしらなんとかしてくれると思うわ。また後でね」


「お、おう」


パッと転移魔法を使ってグリーダの姿が消えた。


<><><>


昨日まで鬱蒼としていた森だが、ナーマが派手に戦ったことにより木々の大半が吹き飛び地面が剥き出しの状態でとても森と呼べる有様ではなかった。


「すごいわねこれ、さて…」


グリーダからすれば何が襲ってきたところで不死身なのでほとんど警戒する必要すらないのだが、街への被害も無視できない程に大きいことは把握していた。


他の地域への被害拡大のリスクも考えると早急に手を打たなくてはならない状態で内心かなり焦っていた。


「魔力は把握できるわね。おおよその位置は簡単にわかるけど嫌なバラけ方ね、掃討するのには時間がかかりそうだわ」


空中に飛翔し敵の位置を捕捉しているために最短ルートで飛んでいきながら魔法を展開、紅い魔力を纏いながら全速力で突撃しに行き魔力の残滓が綺麗な線を描く。


魔法の種類は結界と爆裂魔法、ほぼ同時発動で結界に閉じ込めながら高密度の魔力を炸裂させ抵抗する間も無く敵の体は爆散した。


(昨日みたやつと同じ形状ね、やっぱり白い人型…本当になんなのかしらねこれは)


微妙な違いはあれど大まかにはほぼ一緒の形状をした魔物のような存在、今の魔法で絶命はしたが結構な出力で魔法を放ったのにも関わらず形を保ったままであり、その頑丈さにグリーダは少し末恐ろしさを感じていた。


現在魔力が確認できているのは五体、確実ではないが明らかに昨日よりも数が多くなっていてどこから現れたのかは分からない。


「鬱陶しいわね、次は何よ」


次に現れたのは腕が8本あり、それぞれの掌には高密度の魔力が圧縮されており今にも魔法が放たれる寸前であった。


グリーダはその存在に気づいていたが想像していたよりも素早く後ろに回り込まれて連続で魔法に被弾してしまう。


8本の腕から絶えず各属性の魔法が放たれ隙がなく、再生してグリーダが刀を取り出して斬りかかろうとするが魔法の推進力を利用してジェット噴射のように距離を取られてしまう。


「面倒ね、魔法の威力だけなら相当だしかなり強いわね」


一撃の威力はそう強くなく魔力障壁で問題なく防げているが確実に障壁が削られ続けていてやはり油断ならない強さをしていることがわかる。


「でも、そろそろ鬱陶しいから消えてちょうだい」


グリーダの身体から魔力が放出され絶えず放たれ続ける魔法に触れる。


衝撃波のように空中にある魔法に触れて通り過ぎたが、そこから状況が一変した。


グリーダに向かっていたすべての魔法が反転して魔法を放っていた白い8本腕の魔物に向かって飛来して突然のことに対応できずにすべて被弾してしまう。


耐久は脆く多数の魔法に被弾したせいで体は蜂の巣になりそのまま地面に叩き落とされた。


「これで2体目ね、後3体」


今度はさっきよりも何倍も距離が離れていて飛んで行っても少し時間がかかる。


「速攻で終わらせましょうか」


飛翔するために使っていた魔法を解除、自由落下で地面が近づいてくる。


地面に落下するその勢いのまま転移魔法を起動して次の獲物の真上に転移、落下の勢いを乗せて魔力をふんだんに纏った拳を叩きつけて轟音が響き渡る。


まるで金属を殴りつけたような感覚でグリーダの腕も無事では済まないようで血が噴き出し半分くらい潰れてしまってはいたがそれは裏を返せばそれだけの威力であったと言うことで…。


勿論言うまでもなく耐えられるはずもなく次なる獲物はなんの抵抗もできずにスクラップとなり地面に叩きつけられ動かなくなった。


「あと二体」


その場で高密度に魔力を圧縮してこれでもかととんでもない威力の光線を放った。


肉眼では確認できないほどの距離にいるにも関わらず寸分違わずピンポイントで森の木々に紛れた小型の白い魔物に光線が命中、体の大部分が蒸発してそのまま動かなくなった。


「あっさりね、残り一体!」


最後の一体は街の近くであり派手な魔法は使えなく、そこでグリーダは再び転移魔法で急接近して近接戦闘に持ち込もうとするが、そこに予想外の乱入者がいた。


「んな?!」


殴り込もうとした瞬間に黒い斬撃がグリーダを掠めて最後の一体は細切れになり原型をとどめていない状態で塵となってしまった。


「一体何者よ、あなた」


グリーダの問いには答えない、黒いフードを被った小柄な容姿で顔はよく見えない。


「答えないって言うなら…逃すわけにはいかないわね」


返答がなく、明らかに不自然と思ったグリーダは魔法で作った鎖で拘束しようと放ったがしかし、その鎖が届くことはなくあまりの速さにグリーダですら反応することはできなかった。


気付けばグリーダの身体はバラバラに切り刻まれてその謎の存在は姿を消した。


「いきなり現れて躊躇なく切り刻むなんて…まるで通り魔ね、なんなのかしら一体」


数十秒でグリーダの肉体が再構築され、いきなりなことに少し動揺しつつも愚痴をこぼしながら木に寄りかかった。


しかし当たり前のように殺されたわけだがグリーダが不審に思ったのはそこではなく別の部分だった。


「魔力が一切辿れないわね。隠蔽魔法の類でしょうけどここまで完璧だとむしろ笑えてくるわね。さてと…どうしたものかしらね」


考えていたって仕方ないと、とりあえずグリーダは王城へ転移してミラルの元へ会いに行った。


「相変わらず唐突に来ますねあなたは」


「すまなかったわね、まさかこんなことになるなんて」


ミラルの魔力を辿って転移したが、そこは現在会議中であり厳格な雰囲気を醸し出しとてもではないが首を突っ込んでいい場面ではなかった。


「っと、でもここにいるみんな私のことは把握してる者しかいないわね。一体なんの会議なのかしら?」


「そこからですか?まあいいでしょう。皆様もいきなりのことで混乱されていますから一時中断です」


少し呆れ気味にミラルが中断の宣言をして、少し肩の力が抜けたのか室内の空気は少し落ち着いた。


「グリーダ様、いらっしゃいませ。ですが会議中に突然訪問されては困ります、あなたのお立場もそうですが少しは弁えていただかねば我々の面目にも関わります」


「あなたは…ああゼクシズね、大きくなったわねえ。前に見た時は5歳の頃だったかしら?随分とまあ口達者になったわね」


「ぐ、グリーダ様は相変わらず息災なようで…」


昔の話を持ち出されて真面目そうな眼鏡をかけたゼクシズと呼ばれた男は少し表情を引き攣らせている。


「とりあえず話があるわ。ミラル少し席を外せないかしら?」


「それは構いませんが、一体どうしたというの?」


疑問を浮かべながらもグリーダについて行き別室へ二人で入り、グリーダが防音の結界を張り外へ情報が漏れ出ないようにしてからゆっくりと話し始めた。


「ねえ、昨日ここへ帰ってきて一体何が起こったの?今さっきの会議といい街の様子といいとても普通じゃないわよ?」


「ここへ来るということはそれを聞いてくるとは思っていましたがこうも直球で聞いてくるのですね。まあいいでしょう、単刀直入に言えば昨日ナーマさんの戦闘の余波で街が崩壊しかけました」


「そうね、でも死傷者はどうやらいないみたいね。あれだけ壊滅的な被害を受けておいてここまで人数が変わらないのは一体どうしてでしょうね」


「相変わらず魔力把握能力が桁違いですね。何をどうしたらここから正確な人数把握できるのですか?」


グリーダは森から直接王城は転移しているので実際にどれだけ街が壊滅状態かを見ているわけでもなく何人いるのかも未だにその目で見ていない。


にも関わらず出まかせではなく事実と相違ないことを言われてミラルは少し呆れていた。


「簡単な話よ、ただ生存者全員の魔力を探って人数を数えただけの話。昨日とは場所がだいぶ違うからおおかた家が多数倒壊したのかしらね、避難者が多いみたい」


「そこまで把握しているのでしたら話は早いですね。話を本筋に戻しましょう。まず、死傷者が出なかったのは何者かによる結界と強制転移により街にいた者全てが安全圏へ転移され余波による人的被害が完全に無くなりました」


「何者か…ね。少しでも情報はあるのかしら?」


「容姿は小柄、黒髪の少女と言うことは聞いていますが私が実際見た訳ではありませんので何とも言えませんね」


それを聞いてグリーダは考えを巡らせてみるが黒髪の少女という特徴でそこまでのことができる人物に心当たりはなかった。


「まあ、別にどうだっていいわよ。私からすれば結局民間人に危害を加える気がないのならこちらから手を出す理由はないわね。正直色々と最近立て込んでいるからそんなのに構っている余裕はないわ」


「左様ですか、ですが無視できる程度の実力ではないと言うことは事実です。もし我々に牙を剥くことになれば...」


「そうなった時は、私がどうにかするわよ」


ミラルはとても不安そうにしていたが、大したことないかのようにグリーダは言ってのけた。


「そもそも、そんな実力者が未だに民間人に手を出していないということはそういう意図はないと考えても良さそうね。あなたがその少女に勝てるのならそっちで勝手に対処しちゃって構わないけれど」


「それはそうですが...」


「それにあなた見えているんでしょう?"その眼"で」


そう言われた途端、ミラルの顔がどんどんしおれて顔色が悪くなっていき不安そうな表情でグリーダを見つめた。


「...見えないのです。私でもこの眼で見据えることが」


「見えない?一体どういうことなの?本当に一切何も見えないということなの?」


「あの時!咄嗟に見えた時に何とか王城の皆様を助けることは出来ました!ですがその時に見えた景色は民のほぼ全てが惨殺される未来で...あの様に助かるなど...」


「惨殺...?でもみんな助かって...っ!」


(未来が...変わったとでも言うの?)


グリーダは知っていた、ミラルのその力を。


未来の力を見通し運命を見据える力を。

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