一章七話《日常...?》
「十柱全員の魔法一覧?」
張り紙にはそう書いてあった、下に一覧が書いてあり俺は次々と読んで行った。
グラン《風皇》
風神魔法
風神との契約により風属性魔法の枠を超えた技能を発揮することが可能。
グリーダ《魔皇》
契約魔法
契約魔法により自身の種族特性の恩恵を与え、得ることが可能。
ジーク《剣皇》
呪界剣召喚
本人の意思により異界から呪界剣ベルセルクを召喚する。呪界剣そのものに意思があり使用中の場合剣が体の主導権を握る。
ベルナード《麗皇》
隠蔽魔法、設置型属性魔法。
この二つの魔法を組み合わせ罠のように扱うことが多い。さらに、自身の獣系族の特徴である耳と尻尾も隠蔽魔法で隠している。
ミリア《龍皇》
魔物召喚
本人の体内に潜む無数の魔物を召喚し従える。本人も魔物の全体数は把握していない。
ガルム《焔皇》
豪炎魔法
火属性魔法を攻撃だけに特化させ本人の魔力量によってさらに威力を上げ火属性魔法を超越した魔法。
ジェノ《獣皇》
獣変身魔法
自身の体の一部を獣化させて攻撃することが可能。さらに、基礎身体能力も向上。
ナーマ《刻皇》
神速魔法
本人の周りの時をゆっくりにし、自身の速度を他人の視点ではありえないくらいの速さと認識させることができる。少しの間であれば時を完全に止めることが可能。
マーナ《界皇》
世界眼
この世のありとあらゆる情報を視覚として確認することができる。目を開いている時にしか発動できない。
「みんなの魔法...か」
俺の魔法に比べてみんなぶっ飛んでる魔法ばっかだな。
「ふふ、気に入ってくれましたか?」
俺が部屋に貼ってあった紙を見ていると、不意に後ろから声をかけられた。
声をかけた主は声だけで大体わかる。
「これを貼ったのはグリーダさんですか?」
「そうですよ?ご満足いただけたなら幸いですね」
グリーダはいたずらっぽく笑って俺にとっては少し子供っぽく見えた。
それでも俺の何百倍も生きてると思うが。
「それにしても、俺以外のメンバーはみんなぶっ飛んだ能力をしてる気がするんですが」
俺の実力じゃあ最悪足手まといになるレベルで他の人は皆強い。
先ほど見た中でマーナは唯一戦闘能力はないが、その他は化け物だ。
「そう?私達も最初はあなたくらいなものだったわ。そうね、ジークなんてただの子供であの剣を触れただけで魔力が暴走して使い物にならなかった」
「...ジークが?」
もし、それが本当なら途方も無い修行をこなしてようやく今の段階にたどり着いたことになる。
俺が想像もできないほどに。
「そうね。私だって最初から強くなんてなかった。むしろこの《十ノ頂》に入る前は吸血族の中で最底辺の実力だったものね。いくら能力と魔力が強いからって使いこなせなければ意味がない。強さを求めていた時期にそれを痛いほど思い知ったわ」
グリーダは昔を懐かしむように、それでいてどこか悲しい表情で言葉を続けた。
「私達は全員最初から強かったのなら、あなたのような人を強くさせる必要なんてないわ。この世界に最初から強い人なんていないの」
今のグリーダの言葉は全て正論だ。
返す言葉もなかった。
だが、今の言葉を聞いて嫌な気持ちはしなかった。
「そうね、あと、私に敬語はいらないわ。長くここにいることになるでしょうからしんどいでしょう?」
「まあ、たしかに」
「それじゃあ私は行くわね」
そういってグリーダは部屋を出ていってしまった。
そういえば、気づいたら真後ろにいたけど、いつからいたのだろうか。
まあ、今日話してわかったのはグリーダはそこまで悪い人じゃないってことだな。
その後、ベットに座って休んでいたが、あることが気になっていた。
「っていうか、ここって風呂あるのか?とりあえず聞いて見るか。疲れたし服も体もボロボロだしな」
そう、俺は一度もここにきて風呂に入っていなかった。
正直しんどい。
リビングに出て誰かしらに風呂の場所を聞こうとして部屋を出た。
ここにいる人は当たり前だが風呂には入っているだろう。
というか入っていなければやばい、不潔すぎる。
リビングに出ると、ガルム、ベルナード、ミリア、ジーク、ナーマ、ジェノが何やらソファーに座って話していた。
こう見ると結構リビングって広いなと思いながらそこに近づいた。
「あの、すいません」
「あ?どうした?」
俺が声をかけるとガルムが反応しそれき続いてみんなもこっちを向いた。
「一応、夕飯はまだよ。もう下準備はできてるはずだけどね」
「夕飯はあと一時間後。時間くらい自分で確認しなさい」
ベルナードとナーマは俺が何のために来たのか全然わかっていないようだった。
「ナーマとベルナードの言うとうり、夕飯はまだ先だから、のんびり待っていなさい。さっきの戦いで疲れてるはずだからね」
ジェノさん、疲れてるのはそうなんだけど俺がここにきたのはそう言うことじゃない。
「うーん、なんかの用事でここにきたのー?私達に聞きたいことなら聞いてよ?」
ミリアは俺が何かを聞こうとしていることは察したらしい。
「はい、少し聞きたいことがあって...」
俺は、ここのどこに風呂があるのかと、昨日入ってないので入りたいと言うことを伝えた。
「なんだ、そう言うことねー。それなら、二階の階段のすぐ横の廊下を通ってすぐだよ」
俺が聞くとすぐにミリアが答えてくれた。
「あ、でも、今マーナが入ってるはずだからそのあとかな。とりあえずマーナが上がってから入ってね〜」
笑顔でミリアの言葉に続けてジークが滅茶苦茶大切な情報を言ってくれた。
もし今俺が入ってマーナと風呂で鉢合わせでもしたら本当にナーマに殺されかねない。
と言うか確実に殺されていただろう。
風呂場が血まみれになる構図が容易に想像できた。
「...マーナの裸体を想像する変態」
このタイミングで俺が少し黙っていたのでナーマからあらぬ誤解を受け、なんかナーマからやばいオーラが漂っていた。
「いや、ちが、ちょ」
「...死ね」
瞬きのタイミングで後ろに回り込まれて思いっきり腰にストレートを食らった。
そのまま俺は腰が折れる音とともに地面に崩れ落ちた。
「は、はは、ザインも苦労してるね」
ジークの苦笑いが俺の心に追い打ちをかけた。
「ナーマ、ザインがここにきてからお前テンションおかしくなったか?」
ガルムはナーマを心配し始めた。
そりゃあもう1日で二回もぶん殴られて骨折するなんて考えもしなかったわ。
「これが悪い、ただそれだけ」
まさか、全部ひっくるめて全部俺のせいにしようとしてやがるなこいつ。
「いって、やばい、死ぬ」
...ここにきて二日目、やっぱり死にそう。
「あれ?皆さん、どうしたんです...か?って、大丈夫ですか?」
翡翠色の髪をタオルで拭きながら倒れている俺の前に現れたのは、風呂上がりのマーナだった。
頭にタオルを被って少し濡れた髪を乾かしているところで少しだけ肌も赤い。
「あ、マーナ、風呂から上がったんだね。夕飯はもう少し時間かかるからできたら呼ぶよ」
ジークがそういうと、マーナはコソコソと自分の部屋に戻っていった。
俺は床にぶっ倒れている状態なので、マーナの様子はよく見えなかったが。
「あ、そうだ、ザインの服はベルナードが色々揃えてきたらしいよ。なんでも、昨日夜中に人間世界で買ってきたらしいよ」
「そうよ、日用品は基本的に全部揃えておいたわ」
「あ、ありがとう...ございます」
俺は少しぎこちない返事をして、先程言われた通り進んで風呂場にたどり着いた。
この家、地味にでかいな。
そりゃあ神殿だもんな。
確かに、脱衣所には俺用の服と思われるものがいくつかおいてあった。
とりあえず、風呂に入って今日は寝るか。