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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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三章十二話《襲来する侵略者》

その後、グリーダたちは転移魔法を使って一時拠点に戻った。


「いいナーマ、無茶だけはしないでね」


「グリーダ、それ何度目?」


もう何度目かわからない問答にさすがのナーマも呆れてしまっていた。


「さすがに心配しすぎだ、ナーマも困ってんぞ」


「もう諦めた」


グリーダはパッと見ただけでは分かりにくいが中々超がつくほど心配性である。


「そう言えばザイン君がいないけどどうしたの~」


「え?ああそれなら私と入れ替わりで転移しているし呼び戻すのもあとでいいと思ったから、多分今王城にいるわね」


魔道具の効果は強制的にお互いの座標を入れ換えるもの。


通常転移の魔法も魔道具も、目印となるものが必要で予め場所を決めている必要がある。


グリーダが王城に転移出来たのも王城に目印用のビーコンの魔道具を置いておいたからで何もなければいくらグリーダでも転移出来るわけがない。


そしてそれらの転移魔法の欠点を解決するために開発したビーコン兼転移機能を持った魔道具だ。


転移は座標を直接入れ換えるように作り危機的状況でも直ぐにグリーダが向かい打てる状況にすることができるようになっている。


「こんなことなら最初から頼んでおけばよかったわ、申し訳ないわね」


「謝罪はもういい、それじゃあ行ってくる」


短い会話を終えてナーマはグリーダの転移魔法で森の中へ転移した。


(とんでもなく濃い魔力。モタモタしてられない)


ナーマは森の中の魔力を感じ取り異常なまでに濃い魔力に表情がわずかに陰る。


魔力は温存して魔法を使わずに持ち前の身体能力を活かして音をたてずに俊敏に木々を避けて駆け抜ける。


「邪魔」


道中に魔物がいると通りすぎ様に短剣で一太刀入れて切り捨てる。


前方に高い魔力を感じとりナーマはアクロバティックに木を踏み台にして上に飛ぶ。


その瞬間、ナーマのいる位置の少し下から木が横に真っ二つに切り裂かれ、轟音と共に周りの木も同じように一筋の斬撃で吹き飛んだ。


「中々派手なお出迎え。見張らしもすごくよくなった」


周りの惨状を目の当たりにして目の前の存在に皮肉をこぼす。


ナーマの目の前にいるのは白い人型で右肩から先が大きな剣になっていてその部分は魔力で青白く光を放っている。


(出会い頭で躊躇なく森を壊滅させるのはさすがに予想外。それに、この力があって何故グリーダたちに手を出さなかったのか...)


お互い対峙しながら様子を伺い沈黙し、ナーマは動きに注意をしながら疑問を浮かべた。

先に動いたのは白い魔物の方だった、その大きな剣をナーマに向けて振り下ろすと光が一瞬にしてナーマに迫る。


「っ!?」


ナーマは間一髪で神速魔法を使い横に飛び退いて回避には成功しもといた場所の地面は数百メートル先まで切り裂かれていた。


今の一撃でナーマは悟った、(これ以上長引くのは不味い)と。


その刹那、ナーマは覚悟を決めて全力で神速魔法を使い白い魔物との距離をつめて多角的に翻弄するように移動し連続で斬撃を叩き込んで行く。


甲高い金属音を上げながら激しい攻撃はナーマからすれば数分だが実際には一瞬にして終わった。


激しく火花を散らして連撃を繰り返すが、外見からは想像できないような硬度でほとんど傷がつかない。


「ちっ...!」


幸い俊敏さだけならナーマの方が上だが、どれだけ斬り込んでも有効打にならず動き続けているが故に身体には疲労が蓄積されていく。


「もう埒が明かない」


勝機が無いことを悟ったナーマは短剣を腰にしまい白い魔物を通り過ぎて森の奥へ駆け抜けた。


(私の目的は探索、あの魔物は危険ではあるけどグリーダならおそらく勝てる。今調べるべきは何故この森にあんな化け物が居るのか、そして何体あれと同様の化け物がいるかということ)


ナーマと交戦した白い魔物は走る速度はそこまで速くなく、ナーマが全力疾走したお陰で無事に振り切ることには成功した。


(でも、完全に逃げ切るのは不可能。奴は...)


ナーマは、あの白い魔物と対峙した瞬間から気づいていたことがひとつあった。


奴はナーマの姿ではなく最初から魔力を感知して攻撃してきていたことを。


そして、その場合どれだけ距離が離れていようとも魔力を捉えられていれば最早意味などなく、どこまでも鋭い斬撃が追随してくるのは間違いないだろう。


案の定、地面を切り裂きながら多数の斬撃がナーマを切り裂かんと迫り来る。


走りながら全く速度は落とさずにナーマは木々を踏み台にしたり体勢を低くしたり、体をひねったりなど縦横無尽に器用に躱しながら森を進んで行った。


(斬撃の飛距離が長すぎる...やっぱり逃げ切れない)


「っ?!いっ…がふ!」


斬撃はさらに激しさを増し、木々が次々と薙ぎ倒されていく中で多くの斬撃がナーマに迫り遂には肩から右腕が斬り落とされた。


痛みで表情が歪み体のバランスが崩れて地面に倒れ込む。


「くっ…」


咄嗟に地面から飛び起きて斬撃を回避するが走りながら避け続けるのは痛みと疲労で長くは持たないだろうとナーマは悟った。


「想定外に強すぎる。隠密行動に徹して情報収集する予定が全部台無し」


できることなら逃げるべきだった、戦いたくなどなかった。


「グリーダ達が見てるから」


ナーマのその瞳の色は、薄らと僅かに濁っていた。


ナーマの左手の手の平に魔力が集中してどんどん圧縮される。


綺麗な銀色の光を放つその魔力は形を成し圧縮されてだんだんと剣の形になっていく。


その魔力に気圧されてか、はたまた危険を感じたのか白い魔物は距離を詰めるのを止め後退しながら斬撃をさらに多く放つ。


しかし、それら全てはナーマに届くことはなかった。


斬撃は悉く全て一瞬で撃ち落とされ剣筋すらもみえない速さの乱撃。


「様子見程度の予定が狂った。早く終わらせる」


ナーマは白い魔物と肉薄にし限界まで圧縮した魔力の刃で白い魔物の首を斬りつけた。


とてつもない硬度で普通の剣では傷一つつかなかった魔物の肌にアッサリと刃が沈む。


ナーマがそのまま振り切ると完全に首が切断されぼとりと地に落ちる。


「はあ…はあ…力を使いすぎた」


ナーマの身体中から蒸気のように魔力が溢れ疲弊して地面に膝をついた。


当たり前のように回避し続けていたが、あれでも1度当たれば即死の戦いで、内にある物凄い緊張感と恐怖を全て飲み込んで集中していたため普通に体を動かすのとはわけが違った。


今まで相当な場数を乗り越えてきたナーマでも余裕を持っていることは出来ないほどだった。


『ナーマ、大丈夫かしら?こっちからだと中々つらそうに見えるけど』


「多分、軽い偵察程度ならできる。でも恐らくまた今のと同じかそれ以上の敵が来て戦闘になればほぼ確実に私は負ける」


『...そう、なら判断はあなたに任せるわ。でも少し休みなさい』


「了解」


遠隔通信の魔道具を使ってグリーダと話す。


現状調査を継続するのは望ましくないが、引き受けた以上はと覚悟を決めてナーマは立ち上がった。


地面に落ちている短剣を拾ってはげあがった森を進みまた再び木々が鬱蒼と茂っている所までやってきて、そのまま奥へと進んだ。


切られた腕は移動している間に再生して服は戻らないのでそのまま肩から先がはだけている。


今しがた戦った敵は相当な強さで、これほどの敵がどれくらいいるのかを警戒しつつこれ以上魔力を使い続けるのは危険と判断して普通に歩いて移動することにした。


やはり身体強化をしなければ時間がかかってしまうが、明確な危険がある場所を移動しているので、リスクを負ってまで時間短縮するべきでは無い。


(違和感がすごい、ここまで強い化け物が複数いるとすればこの森の魔物も偵察に行った者も誰も生き残るのは不可能。一体何が起こっているの?)


いくつもの疑問が頭に駆け巡り不振になりさらに警戒心を高めて森の中を進む。


辺り一面の魔力を感じ取りながら進が、それらしい存在は1つも見当たらずやはり普通の魔物ばかりが目に映るのみでやはりそれが違和感だった。


そして何より、普通の魔物と言っても生息圏が違うにもかかわらず森の中にいる魔物もおり目に見えて不自然に見える部分もある。


それから二時間程度森の中を探索していたが、目に見えた収穫はなくナーマの体に疲労だけが徐々に溜まっていく。


(くっ、ここまで何も無いと目的を見失いそうになる。それに、流石に戦った直後に気を張り続けて流石に疲れてきた...)


集中して探索していたため、体より先に精神が限界になりかけていた。


魔力を使っていない状態は、魔力を温存できる一方で不意の一撃で簡単に死にかねない危険な状況だ。


ナーマは魔力を読む力に長けているからこそこんな魔物のはびこる危険地帯で無防備でいられるのであって、普通ならもう既に死んでいてもおかしくない。


しかし、そうして危険な魔力を避けて進んでいたがかなりの集中力を要する故にナーマは精神的にまいってしまっていた。


『ナーマ、そろそろ帰ってきなさい。これ以上は危険が大きいわ。無理とは言わないけど今の状態でしっかりと探索できるとは思えないわ』


そんな中、それを見兼ねたのかグリーダが魔道具で撤退の指示をした。


「...不甲斐ない」


内心、ナーマは偵察を請け負った以上それを受け入れたくはなかったが反対することは出来なかった。


『何言ってるのよ、あなたはよくやったわ。反省は後にしてとりあえず帰ってきなさい』


グリーダは優しくそう言うと魔道具の光が消えた。


その後すぐにナーマの集中の糸が切れて膝を落とす。


そして帰還用の転移魔道具を使って、そのまま我が家に転移した。


「ただいま」


「ごめんなさいね、こんなことなら私が出て置くべきだったわ。まさかあんなすぐに出てくるとわ思わなかったもの」


「それは同意。確実に私の魔力を狙っていた。あれを隠密行動で回避するならベルナードが適任。ただし、それはこの結果を知っていた前提であり私が偵察に向かう方が迅速に行えるのは事実。グリーダが今回のことで負い目を感じる必要は無い」


「まあ、そう言ってくれるのは嬉しいけど、あなたを危険に晒したのは事実ね。それについては知らなかったで済まされるものじゃないわ。まあ、労いくらいはさせてちょうだい」


「…労い?」


グリーダはにっと笑うと手に魔力が集まり魔法が起動される。


その瞬間手のひらに現れたのは、小さなお菓子だった。


「まあ、しょうもないものだけどこれでも食べて部屋で休んでなさい。体は平気でも集中しっぱなしで精神的に疲れちゃってるでしょうから」


「ええ…」


袋に包まれたチョコレートのお菓子を手渡して部屋へ戻るように促し、あまり納得していない様子ではあったもののお菓子を持ってナーマは部屋へ戻って行った。


そして、ナーマが部屋に戻る音を聞いてグリーダはふうとため息をついた。


「まだ、使い物にならないわね。あの力」


ふと、グリーダはそう呟いた。


一方ナーマは部屋でそのお菓子を言われた通りに食べたあとベッドで横になり考えに耽っていた。


(あの様子…私があの力を使ったのも全部把握していた。あんな力を使わなければいけないのは実に不覚。もう…一生使いたくなんてなかった)


ナーマの瞳は、やはり少し灰色に濁っていて魔力が周りに漂っている。


魔力が完全に内側に抑え込めていない上にきちんと制御できていないため、外側に溢れ出してしまっていた。


(あれ...なんだか...眠...く...)


灰色に濁った魔力が部屋の中で揺蕩う中、段々とナーマの意識が朦朧としてきて、やがてそのまぶたは閉じ穏やかな寝息を立て始めた。


多大な緊張の伴う戦闘による反動と、長時間集中した疲労はナーマ自信が思っている以上に体に負荷をかけていて、眠りにつくのもそう時間はかからなかった。


一方、その他の面々(ザインは除く)はリビングに集合していた。


「まあ、これを見たらわかる通りナーマと交戦した個体とグランたち四人が交戦した個体は共通点が多い上に見た目もほぼ一致しているわ」


グリーダは魔道具のモニターでナーマが交戦した魔物の映像を投影してみんなと共有する。


モニターにはとんでもない速度の乱撃をほとんどことごとく躱すナーマの映像が映っていて、誰が見ても壮絶な戦いをしていることは明らかだった。


「ふむ、ワシらが戦ったやつよりもこやつは強いのう。正直、ワシでも勝てるか怪しいかの」


「まあ、でしょうね。正直これに勝てるのはナーマと私くらいよ。みんながこの速度についていけるとは思わないし私だって体切り刻まれるの覚悟で全力攻撃してやっとよ」


ナーマでも最後まで完全に避けきることが出来なかった時点で、他の《十ノ頂》メンバーでは回避などできようはずがなかった。


グランも勝てる自信はなく、グリーダでも不死身の体で特攻を挑んでようやくの状態でナーマが勝てたのはもはや奇跡と言ってもいいほどのことであった。


「ナーマちゃん、ちょっと強すぎだと思うんだけど...」


「そりゃあな、あいつはやべぇよ。冗談抜きでグリーダ以外だと万全かつ警戒状態のナーマに勝てるのはリザリーくらいだ」


「へえ、僕がいない間に凄いことになってたみたいだね。とは言ってもとんでもなく不自然だけどね」


「そうね、ジークの言う通り既に偶然で片付けられる領域は超えてるわ。本格的に原因究明する必要はあるけど...どうすればいいかもイマイチ分からないのよね」


今すぐどうこうできる問題でもない、かと言って現状楽観視もできない上にかなり状態は思ったよりも切迫しているようだった。


「考えても答えが出ないのは仕方ないわ。結局のところ出方を探るしか現時点で方法はないし。全員で森を探索するのもありだと思うけどそれも有効的とは限らないと思うわ」


ベルナードは現状を考察してまとめ、とりあえずの結論を言ったが本人含めてあまり納得いっていない様子。


ナーマが時間をかけて探索をしたがしっかりと手がかりを掴めているとは到底いえない状態な上に、何が起こるかわからない以上余計なリスクを負うのは回避するに越したことはない。


「とりあえず…ミラルに国会開いてもらって国際防衛網の強化と、私たちとの継続的な情報共有を徹底すべきではあるわね。それだけでもよっぽどのことがない限り何かあれば私たちが駆けつけられるわ」


「賛成だ。無為に体力を削って消耗しながら情報を探るよりは相手を待つ方が都合が良いのは確かではあるからね」


ジェノも賛成の意を示して他のみんなもそれで異論はない。


兎にも角にも、こうして当面の方針を固めてとりあえずは何かあるまで待機、普段どうりに生活することになった。



ご精読ありがとうございます。

作者のまっつんです。

若干のネタバレにはなりますが、ここから色々なキャラクターの関係性が判明し、主にナーマが主軸となってしばらく物語が進みます。他にも様々なキャラクターの過去が明かされるかも。

拙い文章での物語になりますが、ここから物語はどんどん色々な方向に飛躍していきます。

どうか、これからもこの作品を読んでくださいますように、お願いいたします。


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