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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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三章十一話《焼き付いた微笑み》

グリーダはザインらを送り出した後、ミラルとともに庭園で紅茶をたしなんでいた。


「ねえ、あなた本当は分かっていたんじゃない?」


「一体何をですか?」


「とぼけてるのかしら?」


ミラルはあくまでも笑顔で答える。


「そう、あれはどう考えてもあの子達の勝てる相手ではないわ。魔力が異質よ」


「そうかもしれませんね。ですが彼らを送り出したのはあなたの判断ですよね?私はその考えに口出しする気はありません」


グリーダの真剣な表情とうってかわってミラルの方は穏やかに笑っている。


「あらそう、随分と薄情ね。でも、本当にあの子達が勝てないこと位容易に想像できたはずよね。止めないまでも忠告くらいしてもよかったんじゃない?」


「不服ですか?」


「いえ全くそんなことはないわ。ただ知っていたにも関わらず油断を煽るような言動と今の態度を見て何か企んでいると思ったのよ」


ミラルはとぼけているのかうっすらと笑みを浮かべながら優雅な雰囲気を決して崩さずに常にニコニコとしている。


「まるで仮面ね。表情が変わらないのは流石親子といったとことかしら」


このままではいっこうに話が平行線になったしまいこれ以上の問答は無意味だと悟りグリーダは大きな溜め息を吐く。


「仮面ですか。そう言われればそうかもしれませんね。ですが事情は違いますから一緒にされても困りますね」


「そうよね。まあ、今はそんな事どうでもいいのよ。あなたの事だし悪いことを企んでいるとは思えないけど事情くらいは教えてくれてもいいんじゃないかしら?教えられないほどやましい事でもなさそうだし」


「そうですか。まあ、この状況で言うのもなんですが、別段特にこれといった深い理由はありません」


「...私達を試しているの?」


深い理由はない、ミラルがそういった時点でグリーダは大方の予想はついた。


強力な敵が現れ十分な情報収集もせずに油断して討伐に向かった、そしてさらには緊急事態にも関わらず人員はたったの半数にも満たない数である。


確かにグリーダがいなくとも早々死ぬことなど無いと言えるほど強くはあるがそれ故に油断して事を運んでしまえば意味がない、それを見越してミラルはあえて敵の本当の強さを詳しく話さなかった。


「試している...ですか。そうですとも、概ね正解です。正確にはあなたではなくその他数名」


「はあ、つまりあの子達は気付けば大恥をかいていたという事ね」


してやられたと溜め息を吐く。


王としての仕事で培った貼り付けられた笑顔はグリーダからすれば今では少し気味悪く見えてしまう。


「では、ここからは真面目な話をしますね。単刀直入に言いますが...彼らを甘やかすのはやめた方がいいですよ」


そこで、ミラルの顔に変化があった。


貼り付けられたような笑顔から呆れた表情に変わり溜め息を吐く。


「いまだにここまで甘いとは思っていませんでした。少し様子を見ていましたがあれではいつまでたっても成長しませんよ」


「あの子達は成長しているし強くなっているわ。多分、もう数十年でみんな前の世代に追い付ける」


「前の世代とは私やリザリーさんの事をいっているのですか?冗談はやめてください。私はともかくリザリーを越えるのは無理な話です」


「あれは前の世代とかじゃなくて古代からの付き合いなんだから含まれてないわ。それを言ったらグランも前の世代と言えるかしらね。ともかく今のあの子達が弱いと決めつけるのはあまりにも早計だと思うわよ」


今の世代の十ノ頂である彼らはミラルから見ても決して弱いと思ったわけではない。


だが、実際のところ招き入れてみれば余りにも警戒心のない立ち振舞いにまるで遠足にでもいくような雰囲気で会話が進んでいくところをみて内面、疑心が浮かんできていた。


「そうですね、実力は確かにあるようです。特にミリアさんは、見ない間にとんでもなく成長しています。あの強さは親譲りですね」


「あなたもそう思うのね。でも一発で成長を見抜くなんて凄いわね」


「気づかないわけないです。あんなに膨大な龍のオーラなんて生半可な人なら卒倒ものですよ。大抵の方は魔力もまともに感じ取れないでしょうが」


「そうね、リザリーの娘なだけあって魔力量はとんでもないわ。それでも純粋な魔力量ならザインの方が高いわね」


現在魔力の成長度合いを見ればミリアの方が高いが、それは表面上単純に比較した場合のはなしであり潜在的な面を含めるとその差は歴然であった。


「それとあれは...ザインさんはいったい何をしたらあんなにひどいことになるんですか?体内の魔力構造が滅茶苦茶です。あれでは常に魔力を暴走させているようなものです。制御なんてロクにできていないじゃないですか」


「そこまで見えているのね」


「全身に魔力が膨大な量めぐっています。あれで普通でいられる方がおかしいほどです。下手をすれば死にますよ」


この言葉が冗談ではないことはミラルの顔が物語っていた。


ザインの魔力が常に暴走状態にあること、そしてその負荷は計り知れないこと、全て大真面目にミラルは話す。


「そうね、あなたの言う通りよ。もとより手はず通り、ベルナードに付与させた魔力暴走印。それによって今の暴走状態となっている」


「一体...どういうつもりですか。仲間なのでしょう?!なぜそのような苦痛を...最早拷問ではないですか」


ミラルは知っている、グリーだが誰よりも仲間という絆を大切にしているということを。


知っているからこそそんな拷問じみたことなどするはずないと思っている。


「必要なことなのよ、今はあの子を目覚めさせるときじゃない。本当の事を打ち明けるときは、きっとこの世界はとんでもないことになる」


「意味深な言葉ですね、肝心な部分を濁すということはその詳細は話したくないと言うことですか?」


「そうね、大方そんなところよ。きっと時が来れば嫌でもわかるわよ」


そう言ってミラルをみてふふっと微笑むグリーダ。


この世界の行く末を知る者は誰もいないのか、はたまた結末を予見するものが存在するのか。


そうこうしているうちにグリーダの足元に魔法陣が展開されグリーダを包み込むように光を発する。


「あら、私の出番みたいね。...あともうひとつだけ聞こうかしら」


「何をですか?」


「ふふっ、あなたは...運命を信じるかしら?」


その言葉を残して魔法陣の光と共に姿を消した。


「そうですね、私は信じますよ」


その言葉は、誰にも届かず虚空に消えた。


そして、今に至る。


「意外とすぐに会えたわね。喜んでいいのかは別だけど」


「申し訳ない。敵を侮っていた」


グリーダが転移して周りを見渡すと、ボロボロの状態の三人と大惨事とはいかないもののいくつかの木がなぎ倒されていた。


「...大体状況は察したわ。それで?何であんたがここにいるの?」


グリーダは視認できる程の魔力を撒き散らし威圧するように目の前の敵を睨み付けた。


白い彫刻のような物体、魔物かすらも怪しい容姿にグリーダの魔力を感じても一切動揺しないのは単に生物ではないからかともみえる。


「自然に発生するとは思えないけど、取り敢えずあなた達は下がりなさい。


「でも...」


「ここまでよく持ちこたえてくれたわ。後は...っ!?」


そこでグリーダの目の前に光線が迫る。


圧倒的な熱量と魔力を宿した光、そう易々とは受け止めるのは困難。


「話に割り込むのは結構だけど、せっかちは感心しないわね。少しは待てないのかしら?」


光線はグリーダに当たる直前で真っ二つに割れて左右に避けて飛んでいった。


グリーダは結界を張り光線を受け流すとお返しとばかりに接近すると黒い刀をどこからか取り出し切りかかるが、容易く回避されて距離を開けられる。


「あなた達は危険だから結界張っておくわね、少し休んでなさい」


「うん...ごめんね」


「謝ることはないわ。あなた立ちはよくやってくれたわ。...ここからは私の領分よ」


赤い半透明の結界を三人を囲って配置し、グリーダは目の前の魔物に集中する。


数秒間グリーダは相手の出方を探りお互いの圧倒的な魔力が衝突し、本格的に戦いが始まっていないのにも関わらず空気が揺れ、大地は地鳴りのように音をたてて震えている。


「へえ、想像以上ね。まあ、木偶人形は大人しく沈みなさい」


睨み合うコンマ数秒の沈黙は一転、グリーダの複数の魔法術式の展開によって開戦の火蓋は切って落とされた。


赤い鎖が魔法陣から飛び出しその白い魔物に迫るが、やはり素早くそう簡単にとらえることは叶わない。


純粋な攻撃魔法を複数織り混ぜ動きを牽制しているが光線と単純な打撃で打ち落とされる。


「その頑丈さはデタラメね。腕っぷしだけで私の魔法を受けて平然としているなんて凄いじゃない」


グリーダは少し嬉しそうに称賛を送りつつも絶えず術式の構築と発動を行い反撃の芽を断ち徐々に追い詰めている。


だが、その時予想外の事が起こった。


「んな...くっ油断した...!」


絶え間なく魔法を乱射し続けていたが、やつは想像以上に学習能力が高く横に大きく回避し瞬時に弾幕の間を縫って光線がグリーダの懐に迫りそのまま回避が間に合わずに腹部を撃ち抜かれた。


その勢いで体制のバランスを崩しその隙に気づけば白い魔物にのし掛かられ腕についている光線の砲口を首もとに突きつけられていた。


「これは一本取られたわね」


次の瞬間容赦なく光線が放たれ体は散り散りに吹き飛び、砂塵が巻き起こり三人の視界が塞がれ何がどうなっているのか全くわからなくなってしまっていた。


「グリーダ!?」


まさかの事態に咄嗟にジェノが叫ぶが土煙のなかで返事は聞こえない。


「う...っそ。そんな」


グリーダが負けたと悟りミリアは肩を落としてその場にへたりこむ。


「待たんかミリア、ジェノよ。いまだ結界は問題なく作動しておる。本当にグリーダが負けたとすればこの結界も壊れているじゃろうな」


「あ~、そっか」


グランはこの程度でグリーダが負けるなどはなから思ってもいないどころか、ここまでグリーダの想定通りなのだということは容易に考え付く。


「あ、煙が晴れてる~ってあれ?グリーダちゃんの体は?」


土煙が晴れ、見回せるようになったがグリーダの体はどこにも見つからない。


いくら高威力の光線であってもグリーダの体を跡形もなく消し去ることは不可能であり、ミリアは体の一部がそこら辺に落ちているものだと思っていたがそんな事はなかった。


「ほう、流石じゃな。この策は今しがた考えたものかの?」


なにかを察したのかグランは上に向かって独り言の様に問いかけた。


「ええ、まあ概ねそうね」


そして、その問にどこからかグリーダの声で返答が返ってきた。


「え~!?どこどこ?」


「ミリア、上を見てくれ。それでわかるはずだ」


「え?」


言われた通り上を向くと、この森を覆い尽くす程巨大な魔法陣が展開されその中心には手を上に掲げたグリーダがいた。


魔法陣は一つではなく、幾つもの術式を織り混ぜた魔法陣が歯車のように噛み合いそれぞれが呼応している。


「最上位の連鎖起動術式を味合わせてあげるわ。覚悟しなさい」


次の瞬間、多くの魔法陣が配置を変え重なり合い白い魔物に向かって筒状に連なる。


魔法が起動されると真ん中に穴が開きそこに光が無尽蔵に収束していく。


やがてその光は弓矢の様に、そして槍の様に、最終的には天の裁きを下す神の如き一撃となり直視できないほどのまばゆい光を放つ。


その時、なにかが割れる音が響き渡り今まであまり動かなかった白い魔物は何かから解放された様にその場から踵を返して逃げ始めた。


たった数秒で何百倍にも膨れ上がった魔力によって作られた巨大な形容し難い光の塊を白い魔物に向かって容赦なく撃ち込む。


「グリーダ、それじゃ当たらない!」


だが、逃げ出す速度が想像を遥かに越えていて簡単に弾道から外れてしまった。


「逃がすと思っているの?」


グリーダは余裕の笑みを浮かべて転移魔法を使った。


対象は自分ではなく、今逃げている魔物にだ。


魔物は一瞬にして空中に放り出される、しかもグリーダの放った光の魔法の目の前に突然に。


回避はどうあがいても無理な距離かつ直撃すればいくら頑丈だったとしても一撃で跡形も残らず吹き飛ぶ威力、グリーダは転移魔法を使って絶対不可避の一撃を浴びせたのだ。


「...思ったより呆気ないわね。魔法耐性は高いし速いし頑丈だしで苦戦するのは分かるけど、この程度ならあなたたちでどうとでもなったとおもうわよ」


「う~ん、この森全部吹き飛ばしてもいいなら私が魔物全部呼び出して圧殺することはできたと思うよ~。多分」


「被害を考えなければ討伐のしようはある。しかし、ザインを守りながらかつ環境被害も最小限にともなると中々厳しいところだ」


森の中、さらに実戦経験が比較的少ないザインと一緒にとなれば、なにも考えずに戦うのとでは比べ物にならない程難易度が高くなる。


ザインが死ぬ可能性も考慮すればグリーダを呼び出したのは仕方ないことだというのはこの場の皆分かっていた。


「想定以上に手強かったわね。今回は反省だわ。強さを見誤ったのは私の責任よ、とりあえずみんな無事でよかったわ。それと、恐らく...いえ確実にこれで終わりってことはないと思うわ」


「ふむ、ミラルから聞いていた証言からは巨大な魔物...精神汚染の可能性もあると考えられるが今のはそのどちらも該当しておらんからな」


「これ以上のが出てくるとなると私達だけじゃちょっと不安だな~」


「ま、安心しなさい。最悪私がどうにかするわ」


ひとまず皆の無事を確認して安堵するグリーダ、わずかに微笑むと直ぐに表情が真剣なものに変わりこれからのことについてこの場で話し合う。


「まず前提として大きな魔物がいるということ、そして今戦ったあれはそこそこ強くて私以外だと単独で戦うのは危険な程の相手だということ、多分無関係で済ませるべきじゃなさそうね」


「仮に関係性があるとして、実際やることは変わらんじゃろう。その部分を推察するよりはまず今からどうするかを考えるべきじゃな」


「うーん、そうね。まず一つは一旦帰還して情報共有してから万全を期して再びここに来る。それか捜索を続けて危険になったら退避するか。つまり進むか退くかの二択ね」


リスクを回避するならもちろん一度戻って再度出直した方がいいのはこの場の全員が理解している。


もし今戦った白い魔物が今回の標的と関係性があるなら十中八九これから戦う敵は更に強くグリーダがいても万が一の危険がある。


しかし、放置することによってこの地にどんな影響があるかわからない以上、そんなに悠長にはしていられない。


「え~っと、提案なんだけど、ナーマちゃんに見てきてもらうって言うのはどう?」


「ナーマか、確かに素早く危険も少ない。その上戦闘技術も高いし危険になれば直ぐに逃げる判断ができる、偵察には向いているか」


「でも一人で大丈夫かしらね」


「あやつは無謀なことはせんが少しばかり無理をしてしまうのがたまに傷じゃな。しかしそれで情報が得られるのなら対策のたてようもある」


「まあそれはナーマ自身が決めることよ。ってわけで今から連絡するわね」


と言ってグリーダは連絡用の水晶型魔道具に魔力を流して拠点の魔道具に繋げる。


(一体どうした?なんかあったのか?)


水晶からガルムの声が聞こえてきた。


「ちょっと一旦ナーマにかわってもらえるかしら?」


(へいへい、ちょっと待ってろ)


そして数十秒ほど待っているとナーマの声が水晶から響く。


(ガルムから呼ばれた。用件は?)


「そうね早速本題に入ろうかしら。今からあなたに偵察にいってきてほしいの」


(...何で今更。最初からそうすべきだと思った)


「それは返す言葉もないわね。今さっき戦闘があってそれで戦った魔物が不自然なくらい強かったのよ。このまま突き進むのは危険だって思ったからあなたに頼んだのよ」


(それがグリーダの命令なら従う)


「話が早くて助かるわ。それじゃあお願い」


そこまでいって魔道具の光が消えた。



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