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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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二章二十七話

周りはさっきの戦いで迷路の原型をとどめておらず、広々と周りを見渡せるほど開いた地形となっていた。


それによって遠目でもわかる尊厳な雰囲気を漂わせる大きな扉、その前にたっていた人影が目にはいった。


「まあ、おとなしく向かわせてくれるとは思わなかったわよ」


「おい、どうするんだ?この人数は簡単には切り抜けられねえぞ」


扉の前の人影は一つだけではなく、総数十一人。


「恐らく勢揃いね、敵勢力全員が出張って来たみたいよ」


「たぶん、普通に正面からは不味くないか?グリーダが大丈夫でも俺が大丈夫じゃねえ」


俺の魔法でも、恐らく三人が限度だ。


「やあやあ、君たちの到着を待っていたよ、と言っても数分程度だがね。思ったよりも来るのがはやなったようだし人数が少ないように見える」


「あなたたちだけなら、私だけで十部よ」


「あ?!調子二のってんじゃねえぞ!!!」


「待てガレア!無策に突っ込むな!」


感に触れたガレアは氷をまとい仲間の制止の声を無視し単身でグリーダに突撃した。


「ガルム、ミリア、グラン、ベルナード、ザイン...あとは頼んだわよ」


グリーダは突撃してきたガレアの腕を掴み後ろに勢いを流して横っ腹を蹴り扉まで吹き飛ばした。


「ナーマを、正気に戻させて」


その一言で、すべてわかった。


さっきの魔力はナーマが魔力を暴走させていたことによるものだ。


そして、普段のナーマならばこんなことなど絶対にしないはずだ。


「久しぶりに、私怒ったかな」


「ああ、俺もだ」


ガレアが吹き飛んだことによって扉が無理矢理開かれそこからナーマの現状を知ることができた。


鎖に繋がれて身動きのできない状態で何かが流れ込んでいる管の先端の注射針のようなものが腕に刺さり固定されていた。


「これ、あのときの化け物が,,,」


「行かせるわけない,,,グハア?!」


「私がここにいるのよ。通すわけないじゃない」


グリーダはいつのまにか真っ黒な刀を装備しており俺たちに向かってくる奴等を切り伏せていく。


「残念ね。せめて最後は派手に散りなさい」


紅い瞳に鋭い刃物のように変わり果てた腕。


「あなたたちには少しお灸を据えてあげないといけないわね」


「グリーダ,,,」


「いいから、早くいきなさい」


「いや、でも,,,」


「早くいって!何のためにここに来たの?!私のことはいいから早くナーマを助けなさい!」


「っ、絶対に助ける」


俺はそれ以上なにも言えなかった。


けど、早くしないと嫌な予感がする。


「ベルナード、ナーマの拘束を隠蔽魔法使ってバレないよう解いてくれ」


「え?,,,っと、分かったわ」


「そんじゃ俺たちは正面からいくぞ」


ベルナードに隠蔽魔法を使わせた、その理由は簡単だ。


普通に助ければ被害が出る。


「やっぱりね~。グラン、ベルナードに結界張って~」


「分かっておる、ほれ」


ベルナードがナーマの枷を隠蔽魔法で姿を消しながら外した。


ドクン、と鼓動のような音が耳に伝わり、その圧力に息が苦しくなる。


「やっぱりか」


ナーマは、操られている。


違う、これは操られていると言うよりは敵味方の判断ができていないように見えた。


それどころか、その目には理性が感じられなかった。


「ベルナード!離れろォォォ!」


「な、う,,,」


気づけばガルムが叫んでいた。


拘束の解けたナーマは姿が見えないはずのベルナードを音速を越えた速度で殴りその衝撃で壁に大穴が空いた。


「殺す,,,殺す,,,全部」


「なんだ?これは」


少し、暴走とは違う気がした。


「して、一定範囲内に近づかなければ襲ってこないようじゃが,,,どうするかのう」


「う~ん、私でもあんな動きできないよ~」


「燃やすわけにもいかねえしそもそも当たる気がしねえ」


皆お手上げだった。


ナーマはなぜ近づく者だけを襲うのか、なぜ自分から動かないのか。


考えられるのは、自衛。


今、ナーマにとってすべてが敵に見えているのかもしれない。


もしそうなら、無駄に刺激を与えるのは自殺行為でしかない。


「こんなの、どうすれば,,,」


壁の瓦礫を押し退けてボロボロのベルナードが出てきたが、傷が多く再生するとはいえ魔力を消耗する。


傷をおえばそれほど経戦能力が下がってしまう。


「はっきりいって勝てるわけないな。元々俺たちでも勝てるか怪しかったんだ、魔力が上がったこいつを相手にするのは正直無理だ。悔しいがな」


目の前にいるのに届かない、てを伸ばしても拒まれる。


無理だと、俺は悟った。


<><><>


「さて、誰から来るのかしら?」


グリーダは十一人に取り囲まれたと言うのに冷静に回りを見ていた。


「あのさあ、ほらほら。来なよ、あの女の子と同じめにあわせてあげるから。ね?」


グリーダを囲んでいた者の内一人の少女がテディベアを抱きながらグリーダに笑いかけた。


「そう、あなたが,,,」


「怒ったの?ならはやく殺しに来なよ。最初からこっちはそのつもりだし」


グリーダは拳を握りしめていたが力を抜いて深呼吸をひとつ。


「馬鹿馬鹿しい。あのこを利用する目的であっても殺しはしなかった。そこについては起こる理由はないわ」


「では、どうして怒ったと言うんだい?いや、怒っていないのかな、少なくとも今みた限りでは感情が高まっているように見えるね」


「そんなの、決まってるでしょう?私たちだって心はある。傷つけられれば怒るし悲しむ。戦いにおいて緊張はしないわけではない。感情が高まるのは当然ね」


「成る程、当然か。二千年生きている堅物が心を語るか」


「これでも、感情論や根性論は嫌いじゃないわ。何度もそれに助けられた身なのだから」


「知ったことではないな。ギシュウ、先にいって奴らを足止めしろ」


「了」


巨大なハルバードを背負った男の言葉を聞いて黒い衣服に身を包み、マスクで素顔を隠した声は変声の魔法で無機質な音に変換されていて性別がわからない者が返事をして真後ろに跳躍と共に身を翻して走り去ろうとした。


「させない!」


「クヒヒ、ざ~んねん」


グリーダはすかさず刀を投擲する。


だが、ギシュウは間一髪のところで短距離の転移で位置がずれてかわされてしまう。


その行動が開戦の合図となり一斉に動き出した。


光の弾丸が降り注ぎ精霊によるいくつもの圧縮された魔法、更に粘性の魔力が足に絡み付いて避けるのが困難となり、その間を抜けてハルバードが眼前に迫る。


その更に奥で巨大な魔法の準備に取りかかっているのが見える。


「相手が私でなければ物凄いオーバーキルね。でも、まあいいわ、かかってきなさい」


正眼に拳を構え慎重に一つ一つの攻撃を観察し分析する。


それぞれを冷静に体をそらしたり魔法で相殺したりとと器用にいなしていた。


「全員、後ろに退避」


その声と同時にグリーだの魔法、ではなく腕が赤い花のように広がり全てを飲み込む戒術が炸裂した。


だが、それは空を貫き誰かに命中することはなくことごとく地面を少しえぐる程度だった。


「全部、見えている」


全身鎧を身にまといやはり素顔が見えない。


そして頭に直接響くような声でグリーダに語りかけてきた。


「未来予知と感覚共有といったところかしらね。言葉を発したのは言葉を発しなければ伝えられないと思わせるためかしら?」


「どうしてそう思う?」


「あなたが指示を出して私が攻撃をする時間の差はほぼなかった。そのわずかな瞬間で全員が察知して行動に移すのはさすがに無理ね。そこから考え付いたのが感覚共有、またはそれに変わる情報伝達方法があると察するには十分な要素よ」


「さすがの洞察力だ、概ね60点といったところかな」


「あら残念。満点じゃないのね」


口調は軽いが顔は全く笑っていない、むしろ息を整えていつでも対応できるよう構えていた。


「後ろで準備している魔法も、いつでも撃てるみたいね」


「アレク!やれ!」


誰かがそう叫んだ。


そう認識した頃には、グリーダは無数の蔦に締め上げられ空中に釘付けとなった。


「流石にあなたでも、このジゴクカズラの束縛を抜けるのは不可能ですよ?」


植物を扱う«反逆者リベンジャー»、アレク。


だが、この男とは何故か見覚えがある気がした。


「うぐ,,,なん、力,,,が」


「ジゴクカズラは思考能力を低下させる毒と魔力を吸い取る特性があります。いくら最強と言えどもこれだけのことをされれば少しは通用するでしょう」


意識が朦朧とするグリーダに得意気に語るアレク。


「早く殺してしまった方がいいだろう」


ハルバードを担いでガラトは冷静に構えた。


グリーダは魔力が底をつき瞳の色が灰色に濁ってしまった。


「油断はならん。一撃で殺せ」


「おいおいスザン、そんなにヤバイのか?もう死んでるだろ、魔力吸い尽くされてまともに体が動くわけねえ」


スザンと呼ばれた老婆は吊し上げられたグリーダを恨み込めて睨み付け、それを適当に笑い飛ばす緑色の髪の少年。


「この程度で死ぬわけがなかろう」


ガラトのハルバードがグリーダの首を砕いてそこから上が地面に落ちる。


グリーダの首と体が離れて完全に死んだと確信のあと、蔦が縮んで枯れた。


「奴らを追うぞ。時間がない。いくら神速魔法でもあの人数にどれだけ持つか,,,」


«反逆者リベンジャー»はグリーダの死体には目もくれずナーマがいる広間に走り出した。


扉の向こう、すぐ近くで既に世界を壊す勢いの戦いが始まっていた。

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