二章二十話
ザインはナーマと一度模擬戦形式で戦った後、個別で特訓したり、誰かと軽く打ち合いをして数日が経過した。
そして...。
「宣戦布告をしたくらいだし、相手からくるんじゃない?来たら容赦なく倒すけどね」
「よ〜し、やるぞ〜!」
「こんな時でも元気がいいのぅ」
ジークは余裕の表情でミリアはやる気十分で言葉によって喝を入れ、それをグランが薄く笑いながら見ていた。
「なあ、奴らが来た時に開幕から仕掛ける用の罠とかは張ったか?」
「準備オッケーよ。いつでも使える」
ガルムが罠についてベルナードに聞いてベルナードは答えて指でOKサインをする。
「ここまで大規模な準備をしたのは久しぶりなきがするな。敵がどれだけの強さがわからない分無駄ではないと思うが...」
「強行突破。私たちには一番それが似合う」
ジェノは少しみんなと比べて警戒が強いがナーマは既に覚悟が決まっていていつでも戦闘できるように両方の腰に剣が下げてある。
「鬼がでるか蛇が出るか...」
「鬼か蛇ならいいわね。もっとヤバいものなんていくらでもいるわよ」
ザインが比喩で言った言葉に水を差すグリーダに微妙な表情をするも、今日が決戦の日だということを思い出しすぐに真面目な顔に戻った。
「決戦の舞台がここなら楽なんだけど、私たちを敵にしてそんな馬鹿なことをするわけないわよね」
グリーダは自分たちの周りに展開された白く光る魔法陣を見てため息をつく。
「全員、戦闘態勢を取りなさい。どこかに飛ばされるわよ」
グリーダは魔法陣に干渉できないと悟ると全員に注意勧告してそれと同時に魔法陣が激しい光を放った。
(転移魔法、私のよりも高度で大規模な。油断はできないわね)
拠点にマーナを残して他全員が転移魔法の光に包まれて消えた。
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「っと、結局私の罠無駄になったじゃない。まあ、もし私たちがいない間にマーナに危害を加えようとする輩がいる場合は即刻串刺しか丸焦げでしょうね」
光が少なくなり周りを見渡しながらベルナードが愚痴をこぼすがそれよりも重大なことに気づく。
「逸れてるよね。やっぱり」
ジークとベルナード、その二人しかその場にはいなかった。
「ほかのみんなが心配ね。そろそろみんなも自分の置かれてる状況を把握してるでしょ」
「だね、僕たちも行こうよ」
「ええ」
二人は明らかに何かあると思われる迷宮の入り口から中に入って行った。
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「存外。まさかこんなことになるとは...」
「なんなんだここは?とりまぶっ壊すか?」
また別の場所に転移してきたのはナーマとガルムだった。
ジークとベルナードが転移してきた場所とは違うが同じような迷宮の入り口がそびえ立っていた。
「合流が優先。目の前以外は行き止まり。進むしかない」
「望むところだ。何がきても燃やし尽くす」
「正面戦闘は任せる。最悪の場合私が完全停止で切り刻む」
「頼もしいことだな。基本ナーマはフォローに回ってくれ。俺が暴れる」
「それでいい。了解」
簡易的な作戦会議を済ませて二人は迷宮に足を踏み入れた。
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また別の迷宮の入り口でザインとミリアが転移していた。
「意外と暗いな。さっきとは全然違う」
「そうだね〜。ま、みんなとはぐれちゃったみたいだしさっさと合流しないと〜」
ミリアは小型の魔法陣をいくつか展開して半透明の水でできたような魚が現れた。
それらは空中を泳ぐように浮遊していて、現れたり消えたりと断続的に見えていた。
「ザイン、ファントムフィッシュの力で透明になるからこれからはあまり大声出さないでね〜。合流するまではなるべく戦闘は避けたいしね〜」
「なるほど、わかった」
ミリアがファントムフィッシュに触れると姿が見えなくなりそれを見たザインは同じように触れた。
「ベルナードの隠蔽魔法みたいだな。効果は視覚限定だけど」
「まあこの子は隠れる他に幻も作れるから便利だけどね〜。バレそうになったら最悪幻作って逃げればいいし〜」
ミリアとザインはそれぞれ透明になっても場所がわかるようにお互いの姿は見えるようになっていた。
二人は迷宮の中に入って迷路のようになっている道をほぼ適当に早足で駆け抜けていた。
「本当に見えてないんだな。たまに待ち伏せしてる奴らがいるけど全く気付いてすらいない」
ザインは待ち伏せしていた奴らを通り過ぎる時に少し驚いて声を漏らした。
「気をつけてね〜。あまり声を出すとバレる危険があるから小声でしゃべってよ〜」
ミリアはサッとザインに耳打ちをすると、一応のためにバレないように後ろから後頭部に手刀を当てて気絶させた。
「すごい手並だな。格闘技でもやってるのか?」
「少しお母さんから教わったんだ〜。お母さんは強すぎてほとんど技関係ないけどね〜」
ミリアは笑いながらそう言った。
「そろそろ、いい頃合いかな〜」
ミリアは笑うと自分にかかったファントムフィッシュの効果だけを消して後ろを振り返った。
馬鹿だよね〜。あとをつけるならもっとバレないようにしないと〜」
「そちらこそ、魔力を垂れ流して隠れているとは言えない状態でしたわよ?」
真っ黒なドレスを着ている桃色の髪の少女が恭しくスカートをつまんで広げて自己紹介をした。
「御機嫌よう。私は反逆者の一人、チヨと申しますわ。不遜ながらお相手させていただきます故にどうかよろしくお願いいたしますわ」
「ふ〜ん。そっか...じゃあ、殺してもいいよね」
「俺も手加減はしない。全力で倒す」
ミリアとザインも臨戦態勢でミリアは手に魔力を集めて魔物を顕現させる準備をする。
「《十ノ頂龍皇》ミリアが命ずる。狂乱の渦から顕現せし暴虐の獣よ、我が問いに応じてその姿を表せ!汝は血を求むか?!」
ミリアの手に集まった大量の魔力を地面に叩きつけて巨大な魔法陣が展開される。
そして、空中にも魔法陣が展開され二つの魔法陣が繋がりその空間が切り離されたかのように雰囲気が変わった。
そして、それを食い破るようにして出てきたのは圧倒的な覇気を纏った黒い獅子だった。
ザインは地面に無数の刃を改変魔法で地面を素材にして創り出し、いつでも射出できる状態で待機していた。
「召喚...とは少し違いますわね。そちらは何もしてないようですが、罠か何かですわねぇ。そちらばかり魔法を見せて私だけが見せないのはフェアじゃありませんわ。少し、見せて差し上げますわ」
突然、チヨの目の前の空間に穴が開き、そこに手を入れて扇子を一つ取り出しそれを広げてゆっくりと仰いだ。
「異空魔法か〜。初めて見るけど、まあなんとかなるね。黒天、出番だよ〜」
そう言ってミリアは手を前に突き出すと、黒天と呼ばれた黒い獅子は歯を剥き出しにして飛びかかった。
「暴力的ですわねぇ」
「させねえよ!」
チヨは横に跳ねて黒天の攻撃を避けると、ザインの無数の刃を異空に流して何事もなかったかのように着地した。
「おかしいくらいに強いな」
「でも、多分制限はあるんじゃないかな〜?だってザインの攻撃は異空を使ったのに黒天には使わないからね〜」
ザインも、だいたい予想はできていた。
それは、異空を開ける大きさ、それか生き物は入れられないかのどちらか。
おそらく高確率で後者だろう、なぜならそうじゃない場合は出会った時点で異空に放り込めばいいのだから。
「じゃあ私の独壇場だね〜」
ミリアもその結論にたどり着いたらしく、次々と魔法陣が展開されて行く。
「これはすごいですわね...全ての魔物が高水準の強さ、魔力量を誇る。それはそれはすごいですわね」
「褒めるのは良いんだけどさ〜...死ぬよ〜?」
ミリアは言いながらニコッと笑うと迷路の道の中にあふれた魔物によって横の壁が破壊され魔物が地面や壁を突き破って何十匹と湧き上がってきていた。
「黒天の相手をしながらこんな数を相手するのは流石の俺でも無理だな。黒天単体ならまだしもなぁ...」
ザインは後ろに下がって事の成り行きを見守ることにした。
流石にこの数の魔物の中援護しようものなら巻き添えを食らうかミリアの魔物に間違えて攻撃してしまうかもしれない。
「私が...異空魔法だけだと勘違いしてるようですわね」
チヨはこの魔物の軍勢を見てもなお笑顔を崩さずに魔力を怪しく漂わせていた。




