二章九話
獣系世界で魔物を適当に狩ってお金を稼いでいた二人は夕飯の為にそこらへんの屋台で外食することにした。
「いや〜、久しぶりだよぉ〜。いつもナーマの料理ばかり食べてたからね〜。たまにはこういうがっつりしたものも食べたかったから。ありがとね、ジェノ」
「ああ、それなら良かったよ。今日稼いだ金額ならしばらくは大丈夫だろうしね。これを毎日稼ぐとなるとむしろ増えるくらいだよ」
ミリアは骨付きの大きめの鶏肉を歩きながらかぶりついてジェノと話していた。
ミリアが持っている骨付き肉はどう考えても女の子が食べるようなものではないが、ジェノはそれをいつもの事だと軽く流していた。
「それにしても、昼間の暗殺者みたいな連中って明らかに私たちがいる場所がわかっていたみたいだったけどなんだったのかな〜?」
「さあ?私にはわからないかな。それよりも、個人的にきになるのはそっちじゃなくて、やつらが言っていたヴェンサーという人物だ。明らかに裏がありそう」
今日起こったプチ騒動について二人はそれぞれの考察を言ったはいいがそこまで有用な情報は無さそうと思ったのでそこそこ話してこの話は一旦保留ということになった。
「あと、少し話は変わるけど皆の体にも発信機になる魔物をつけておいて監視してたけどみんなも戦闘になってたらしいね〜。ザインのに関しては相当な実力者だね。人間世界の実力者の中ではダントツだね」
「なるほどね。私らだけではない...と。それで?誰か敗北したかい?」
「ううん?というかむしろ大半が手加減してる始末。でも少しナーマの所が一瞬雲行きが怪しかったけど本気出したら秒で終わったみたいだね。シャドウリッパーも使っちゃったか〜。たしかにナーマはあんな数には弱いもんね〜」
ミリアは皆の様子をジェノに話して二人ともまあそうなるよなって感じだった。
「ん?グリーダにつけた魔物がいつのまにか適当なところに転送されてるよ〜...。なんでこんなことするかな〜」
ミリアはグリーダとジークの様子を見ようとしたがどちらの方も発信機用の魔物を摘出されて遠くの方に転移魔法で飛ばされていたようだった。
「グリーダとジークはプライバシーを守って欲しいんだと思うよ。二人にも事情があるんだろうね」
ジェノはミリアにそう言うもミリアは納得のいかない様子で「なんでバレたのかな〜?」なんて言っていた。
「っと、それよりもそれを食べたらまた情報収集しに行くんだけど、何かミリアは考えはあるかい?」
「ん〜?とね、酒場とか?ならず者多いけどああ言う場所は情報源としては申し分ないかな〜」
「そうか、やっぱりそこに行き着くよね。あまりミリアを連れてそこには行きたくなかったけど。仕方ない、行くか」
「え〜?そんなに私のこと心配?」
「まあね、ミリアはすぐどっかいったりするから目を離せないからね」
「まさかの子供扱い?!嘘〜、私そんな風に思われてたんだ...。ちょっと残念」
ミリアはしゅんとしながらもジェノと一緒に酒場に向かった。
「はぁ...、いいかい?ミリア、こんな雑魚に絡まれたところで怪我なんてしないだろうけどくれぐれもはぐれないようね」
「うん、分かってるけど〜。ジェノって私の親だったっけ?」
ミリアはジェノの態度を見て少し困惑していあた。
「いや、私は親ではないが普通に逸れたらまずいから...いや、はぐれてもどうにかなるか。だが、はぐれたら面倒だからそこは気をつけてくれ」
「ほいほ〜い。安心してって〜。私そこまで周り見えないような子じゃないってば〜」
「ならいいんだが、ここは大衆向けの酒場で広い。あまり変なことはしないでくれよ頼むから」
歩きながらジェノはミリアに忠告する。
ミリアはそれを聞いているのかいないのか、軽い返事だけして意気揚々と中へ入って行った。
「ん〜、見てるだけじゃつまんないしなんか食べよっかな〜」
と呟いて周りをキョロキョロと見渡しながら歩いていると前方不注意で大柄の男にぶつかってしまった。
「わきゃう?!...あ、すみません」
「あぁ?ッチ、少しは気をつけろ」
感じの悪い態度で悪態つけられ、舌打ちまでされて気分が悪くなったのかミリアは眉をひそめてその男を少し睨む。
「なんだその目は...喧嘩売ってんのか?」
「へえ〜、わかってるんだ〜」
いつもと口調は変わっていない、だが明らかに挑発しているような雰囲気を漂わせる。
「喧嘩売ってんなら...分かるよな?」
「え〜、ここで始めるの?暴力はダメだよ〜。だって天罰が下りちゃうもん。後悔しちゃうよ〜?」
「っは、笑わせんな!んなもん伝承だろうが。たった一発殴ったってそんな大層なもん起こりゃしねえよ」
男はミリアの言葉に馬鹿馬鹿しくて笑い始める。
いつのまにか面白いもの見たさからか獣系族が集まり始め、軽い人集りが出来ていた。
「ふ〜ん、それじゃもう何言っても無駄だよね〜。じゃあもう遠慮なく叩きのめング?!」
「はいストップ、申し訳ございません。この子は私の知り合いなんですよ」
「は?知り合い?」
危険な流れを察知して二人の間に入ったジェノは先ほど適当に買った肉をフォークに刺したままミリアの口に入れ、素早く丁寧に男に謝罪する。
「んぐぐ〜、んふぉほんふぁ。んっク、あ、これ美味しい〜」
「ったく、連れ子の面倒くらい見とけや」
「面目無い。誠にそのとうりです、ですがこの度は大目に見てやってください。この子も本心から悪気はないんです」
「あーめんどくせえ、邪魔だからとっとと失せろ。気に食わねえガキだな」
興が冷めて殴りかかる気にもなれない男はモヤモヤしたままミリアのことを一瞥しこの場を離れた。
「案の定だった。気に食わないのはわかるがあれはミリアが悪い」
「う〜ん、多分...」
「それで、何かわかった感じはあるか?言い合いしていたのは分かるが周りを見ていて気づいたこととかな」
「見た感じここにはそこまでの実力者はいないみたいだね。見当違いだったかな〜」
ミリアはまた辺りを見渡しながらため息を吐いて残念だと首を横に振った。
「あ〜、もういっそ敵の本拠地見つかるまで覇龍使って暴れよっかな〜?」
「それは当たり前だが却下だ。市民を皆殺しにしてどうするんだ?」
ミリアが自分の魔物を使って暴れたいという主張に少々引きつった顔をするジェノは、当たり前だがその主張は断念させた。
「そっか、それもダメなの〜?」
「当たり前だ。この街はミリアのストレス発散用の道具じゃないからね。あと、ここにきたからには暴れちゃダメでしょ」
ジェノがミリアの頭を軽く叩きながらそういうとミリアも少し嫌な顔をしていたがそれからは暴れることもなく飲んでいた。
周りの人たちには目立っていたが誰もミリアに近づこうとはしなかった。
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「予想はできていたが、まさかこれほどとはな」
人間世界の地下の教会のような場所で円形の机を囲うように座っている十四人の黒ずくめの衣装を着た者たちが頭を抱えていた。
「くそっ!全ての世界に人員を派遣して分散させたというのに、なんて事を...」
黒ずくめの中の一人が感情が昂ぶって机をドンと叩いた。
「なあに、そうなればまた新しく送り出せば良い。コマはたくさんあるんだ」
小柄で子供っぽい体型の一人が笑いながら話しに参加する。
「確かに奴らは強い。だが、万能でもなければ最強でもない。ただ、強いだけだ。ならば不可能ではないのだろう」
黒ずくめのうち一人の発言によりみんなは頷いて策を練っていく。
この場にはありえないほどの魔力が渦巻いているが結界によって地上に漏れることはない。
つまり、《十ノ頂》に気づかれることもないので、関係者以外は誰一人としてここにこの者たちがいることに気づいていない。
「現在やられてるのは精霊剣を持つエルと、トラップを使うアイル...それと相方のエーデル。魔物使いのコーリウスに光魔法を使うカルン。その他有象無象がやられたか。まあここまでは予想がついている」
「それと、さっき連絡が入ったけど暗殺者のカーレアもやられたらしい。なんでも、人間世界の地上からここまで叩き落とされたらしいよ」
「なんと、そんなことが...しかし、人間世界にいた者は《十ノ頂》最弱のはず、それにまだ二つ名も得ていない餓鬼だ。そこまでの強さなど」
この場にいる一人が声を張り上げると、それを隣の者が手で遮って言葉を続けた。
「ありえない、そう思うのも無理はない...だが、条件さえ揃えば素人でもこの手口は使えるさ。ただ地面を掘れば良い。問題はそこじゃない、我々の目的が大半奴らに露見していると考えた方がいいだろう。そして、この程度では奴らは負担にさえ思っていないだろうな」
現時点で、既に多大な人材の被害を出している事に頭をかかえる面々の中に一人だけ気味の悪い笑みを浮かべた者がいた。
「クヒヒ、我々の目的の一つは既に達成されている。魔力と血のサンプルが手に入った事でこの計画は一歩進展する」
気味の悪い笑い声がこの空間一面に響き渡った。




