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支配者の未熟者  作者: まっつん
人間世界調査編
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二章六話

皆を送り出したグリーダは、早速神世界にやってきた。


とは言ってもジークの居場所はグリーダ自身の魔道具で事前にわかっていたのでやってきて早々ジークのところを訪ねた。


「やあ、やっぱりグリーダだったか。入って入って。そこまでもてなすことはできないけどね」


「...ジーク。なによこれ」


グリーダが見たのは明らかに異常とも言えるほどの大きさの屋敷だった。


「は、はは...。ぼくは別にこんなところじゃなくても良かったんだけどね。この国の大臣からここに滞在するように言われてね。そこまで不便してるわけじゃないから別にいいんだけど」


ジーグは苦笑して事の成り行きを説明した。


「そ、そう。あなたも大変ね」


「いや、多分一番大変なのはザインあたりじゃないかな。ザイン遠征なんて初めてだしなにすればいいかわからないんじゃない?」


「それは一理あるわね。でも、ザインに何度も言ったけどそこまで深刻にならなくても大丈夫よ」


グリーダは腕を組み何気なくそういうと「お邪魔するわね」と言って屋敷に足を踏み入れた。


「あのねぇ、覗きをするならこんな設備じゃなくてもっとこっそりやりなさい」


グリーダがジークの私室に入った所で目にした物は、巨大なスクリーンにみんなのそれぞれの様子が映し出されていた。


「え、いや、だってさ。ベルナードもおんなじようなものでしょ?僕が見ててもなにも文句は言えないよ。それに、やましい事はなくてね、ただ、気になる事があるんだ」


「気になる事...ねぇ」


グリーダはジークの方をチラッと見てから窓から空を見上げてうっすらと目を細めた。


「グリーダ?どうしたの?」


「いえ、なんでもないわ。それよりも、今の映像を見て気づいたわ。ナーマの方に加勢に行ったほうがいいわね」


グリーダは早速転移魔法を使って移動しようとしたがジークが手を引っ張って止めた。


「...なんのつもり?」


「いや、落ち着いて。流石にあんな敵じゃあナーマは負けない。それに、もうベルナードが察知したみたいだよ」


ジークの指差した先には、宿を勢いよく飛び出したベルナードの姿が映し出されていた。


「なるほどね、一応はこれで対処はできそう...かしらね。けど」


「けど?」


グリーダが言葉を一旦切りジークが質問すると、グリーダが拳を握りしめて目を見開いた。


「私の子達に危害を加えた奴等を叩きのめしたいわね。個人的に」


グリーダは堂々と宣言した。


「わ、わぁー。どんだけ心配性なんだ。僕たちあんな雑魚相手にしても死にはしないと思うけどね」


「そ、それはそうだけど...」


グリーダは少し口ごもり頰を少し紅潮させてジークから目を背けた。


「私の唯一の想い人との約束を守るために...よ。無駄な犠牲は払いたくない。それに、単純にみんなが傷ついて欲しくもないもの」


グリーダが少し恥ずかしそうに言って目を下にそらしたのを見てジークは危うく悶絶しそうになった。


グリーダは見た目はまだ子供で、可愛げのある容姿に整った顔立ち。


ジークから見れば絶世の美少女がこんな仕草をすればトキめかない男はいない。


たまらずジークも目をそらし顔を赤くしてそれでも平静を取り繕って作り笑いを浮かべていた。


「そう...だね。グリーダの事情に関しては僕も詳しくは分からないけど、グリーダが僕たちを思ってくれるのはありがないかな〜。あはは」


ジークが作り笑いを浮かべるも、グリーダは顔を赤くしたまま俯いてしまってものすごく気まずい空気になってしまった。


「ジ、ジーク、お願いがあるんだけど...」


「ん?どうしたの?」


グリーダがまだ少し顔が赤いがジークに向き直り改まった口調で言った。


「久しぶりに飲まない?」


「え?」


数時間後。


辺りは暗くなり、夜になる頃にジークの屋敷から少し離れた人間世界で言うバーのような場所にジークとグリーダは訪れていた。


カウンター席でいくつか注文するとカウンター席に座り、しばらく待ってオーナーが酒をグラスに注いだ。


「いやー、久しぶりね。最近はお酒なんて全く飲まなかったもの。みんなの前では絶対にお酒はダメね。尊厳に関わるわ」


グリーダがジークの前でそんなことを言うが、ジークには当然の疑問が出てきた。


「あれ?僕の前では尊厳とかないの?」


「え?ああ、だって結構前からジークとは飲んでたじゃない。昔から一緒に飲んでた相手に対して隠す意味ないもの」


「そうなんだ...」


グリーダがジークと話している間にワイングラスを口に運んでいた。


「それに、ジークにはよく愚痴を聞いてもらってるから尊厳もなにもないわよ」


「そう言われても困るんだけど...。頼むから僕の前でも威厳のある姿でいてほしい」


ジークはため息をつくも自分もお酒を飲み始める。


見た目は明らかに子供だが、実年齢は何百歳もすぎているので何の問題もなかった。


ただ、明らかにシュールではあったが。


ジークは見た目年齢は12か13位でグリーダに関してはそれよりも幼く見えるだろう。


身長はナーマと同じくらいか少し高いかどうかだ。


バーでこんな子供のような容姿は明らかに目立つし、異常視されるだろう。


「おい嬢ちゃん方、あんたら本当に成人してるんだろうな?」


正直この世界では成人していなくても酒は飲めるが、このような場所で堂々と飲むようなことは流石に不味い。


「大丈夫よ。私たちは二人ともこう見えて結構歳はとってるわ。神族なら見た目年齢なんてあってないようなものよ」


昼頃とは違う意味で顔が赤くなってるグリーダはバーのオーナーであろう神族の男にそう答えた。


グリーダはほろ酔い状態で少し舌が回らなくなっていた。


「グリーダ、程度はわきまえてね。...頼むから二日酔いとかは勘弁してよ」


ジークが少し呆れてグリーダの背中をポンポンと軽く叩いて言った。


お酒で酔う世界の管理者というのはなかなかにシュールだが、それ以上にジークが気にかけていたことがあった。


「まさか、僕たちにもおもてなしをしてくれるみたいだね。数は...外に四人、いや隠れてもう一人いるから五人か」


ジークは外にいる敵の数を数えると、ワイングラスを持ったまま立ち上がりグリーダの手を取ってお金を適当に置いて店から飛び出した。


「来たぞ!殺れ!」


男が号令をかけると同時に連携のとれた動きでジークとグリーダに三人の男が襲いかかった。


「今日は久しぶりにいい気分になったのに...不愉快ね」


グリーダはそれだけ言うとジークの側から一瞬にして消えた。


「ど、どこだ!?」


「ここよ」


グリーダは屋根の上で紅い瞳で男たちを睨みつけていた。


「見たところ誰かの差し金みたいだね。みんなのところにも同じような感じで刺客が来てるんじゃないかな」


ジークが考察して一歩一歩男たちに近づきながら考えを口にする。


「な、くそっ、殺せ!さっさとしろ!」


男の部下のような立ち位置の三人は逆らうことができないのだろう、無言でジークの方に短剣を逆手に持ち軽やかな動きで間を詰め素早く一閃した。


「はは、すごいね。一般人だろうけどここまで精錬された動きはなかなかないよ」


そう言ってジークは短剣を指と指の間に挟んで受け止めた。


「けど、残念ながら僕にはどうあがいても通じないね」


ジークは短剣を折るとそのまま蹴りを入れて誰もいないところに吹き飛ばした。


「こっちは終わったわ」


グリーダは気絶した男二人を地面に置き、残るは男一人と木陰に潜んでいる一人。


「うん、わかった」


ジークは手を前に伸ばすと手の先に小さく、高密度な魔力が宿った。


その魔力は、天高く伸びていきやがて見えない高さまで届く柱の如くにそびえ立った。


ジークが手を離すと魔力は地面に刺さるようにして降りて地面に魔法陣を描いた。


「少しオーバーキルだね。別にいいけど」


ジークは魔法陣から出てきた剣を握るとそのまま地面から抜きはなち構える。


暴走しないように、専用の魔力拒絶手袋を装着してるので不用意に建物を破壊したりしないようになっている。


その代わり、結構なパワーダウンになってしまっているがそれでも事足りる。


「ジーク、流石に地形を考えなさい。ここら一体吹っ飛ぶわよ?いくら私でも全て元どおりにはできないわ」


「あ、そっか。...どうしよう」


ジークは少し考えると、木陰に隠れていた方に急接近してそのまま上空に服を掴んで投げ飛ばした。


「一人残す...方がいいよね」


ジークはそのまま空中に一閃、強力な風圧とともに空気が振動した。


「ひぃ!こ、こんな馬鹿な!」


男は尻込みし、腰を抜かして体をふるわしていた。


「死にたくないなら上に報告しておきなさい。手を出すなって」


グリーダは小さなナイフを地面に突き刺した。


「嫌ならここで自害しなさい」


わずかに魔力を纏い威圧的な態度で話しているグリーダに男は恐怖し思わずここから立ち去った。


「殺さないんだね」


「当たり前よ。ベルナードだってこうしてるだろうし、無駄な犠牲を出すくらいならこの方がいいわ」


グリーダはナイフを拾って懐にしまった。


「あと、関係ないけどグリーダ酔いが覚めるの早くない?今回僕は全然酒飲んでなかったけどグリーダ結構飲んでたよね?」


ジークが聞くとグリーダは少し笑いながら答えた。


「私、戦闘するときは再生能力使って酔いを強制的に消してるの。だから戦闘するときはそういうのは全然よ」


「なるほど、それは凄い」


ジークはその答えに苦笑し、気分が薄れたので屋敷に戻った。

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