二章一話《ガルム、グラン編1》
堕天世界の街、スベーリアの町外れにある人気のない場所で男二人が話し合っていた。
「さてと、これからどうすんだ?グラン。金銭には余裕があるが俺は調査がどうしても苦手なんだが」
「そうかそうか。お主は生粋の戦闘民族じゃからな。じゃが、ワシとて調査が他のものよりも優れていると言うものでもないがの。そこらへんは期待しなさんな」
「ああそうかよ。ったく、よく考えたら危険はねえが面倒くさい仕事だな」
「ふぉっふぉ、それは同感じゃな。じゃが、ガルムにとって完全に無意味というわけじゃないと思うがの?」
「あ?そうだな...、面倒クセェが暇つぶしにはちょうどいいか?とは思うがな」
薄暗い影のさした路地裏で何やら話し合っているガルムとグランは冗談を挟みつつも今後の予定を立てている。
「今回の遠征の件は関係ねえが、危険の高い魔物がいたら片付けるぞ。調査はどうせ動いてても大した結果は見込めそうにねえがな」
「それはわからんが、情報収集だけでもせんとグリーダに小言を言われることになるのぅ。ワシとて説教を受けるのはごめんじゃわい。魔物討伐に関しては賛成じゃな」
「おう、そうと決まれば早速魔物討伐部隊に申し込みに行くぞ。それと、俺が言うのもなんだが偽名は忘れんなよ?俺たち正体バレたら大変なことになるからな」
「ふむ、ガルムがその心配をするとはのう。世も末か」
「おい老いぼれぇ。今の言葉もういっぺん言ってみろ?燃やすぞ?」
「やれやれ、近頃の若いもんは...」
「あ?血気盛んで悪かったなぁ。とりあえず後で一回燃やすわ」
「ほう、できるものなら今やっても良いのじゃぞ?」
路地裏で、ガルムとグランが今にも爆発しそうな勢いで口喧嘩をしていると、まるでその口喧嘩を諌めるかのように街の外から爆発音が響いた。
「ふむ、喧嘩してるようじゃなさそうじゃのう。すまんが後にしてくれんか」
「ああ、同感だ。あ〜胸糞悪い」
ガルムはイライラしながら頭をかきむしり不愉快そうに爆発した方に振り返った。
しかし、路地裏なので目の前には建物しかないが。
「おいグラン、詳しい方角教えてくれ」
「少し待てい。今計算しとる」
グランはしばらく無言で険しい顔のまま方角を調べてその距離まで調べ終えた。
「どうやら、南東の南寄り57度、距離は3724m離れておる。魔法はおそらく炎系統。これだけ調べれば十分じゃろう。さてガルム、お主の出番...もう行ってもうたか」
グランは少し呆れたようにため息をつきガルムが飛んで行った方角を見てこう思った。
(やれやれ、あやつの短気なところはどうにかならんもんかのう)
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「あれか、んだよ!魔物じゃねえか!しかもそこまで強くない奴だしよお」
ガルムが街の端あたりにある家の屋根に登り爆発の起こった場所を眺めると、そこには巨大な要塞のような亀がいた。
それは、体内で高熱のエネルギーを生成してそれを生命エネルギーに変換して生活していると言う魔物だ。
ちなみにこの魔物は魔力によってエネルギーを生成しているので食事の必要はなく、人を襲うことも滅多にないが、溜めすぎたエネルギーを消費するために高熱のガスのようなものを発射するため何かしらが巻き添えを食らうことも珍しくなかった。
そして、この亀はフレアフォートレスと呼ばれ中級の中でも上位に認定されるほどの魔物だ。
竜種には劣るものの、フレアフォートレスが街に入るだけで小さな街くらいなら崩壊する程度には危険視れている魔物だ。
「なあデカブツ、俺とどっちが熱いか勝負してみるか?」
ガルムが炎の勢いを利用して空中に飛び上がり猛スピードでフレアフォートレスに突進すると、そのまま真っ白な炎が腕から輝き次の瞬間には白から黄金に変わった炎が腕に纏わりつき籠手のような形状になった。
「そのでかい甲羅ごと吹き飛ばしてやるよ」
両腕に黄金の炎を纏い高速で接近するガルムにようやく気付いたフレアフォートレスは慌てて甲羅の所々にある噴射口のような所から高熱のガスを高出力で噴射するも、ガルムにとっては吹き付ける風と同じく全く動じない。
「ったく、でかいくせに硬いな」
ガルムの炎は甲羅に当たったものの、甲羅の広範囲にヒビが入るくらいにとどまった。
フレアフォートレスは甲羅が砕かれそうになりようやく目の前にいる者が無視してはいけない存在だと言うふうに気がついた。
「全くよぉ。これはジークの真似事みたいで好きじゃないんだがな」
ガルムは腰あたりに下げていた剣を抜きはなち、フレアフォートレスに向けた。
「さっさと終わらせたいからな」
ガルムはその剣を天に向けて、剣先に光が集まっていく。
神々しく輝く剣先は、やがて炎が宿り剣全体を覆っていく。
そして、この世のものとは思えないほどの魔力を凝縮した剣に宿った炎は剣を伝ってガルムの腕にまで巻きつくようにして纏わり付いた。
最後の仕上げにガルムが地面を軽く足で叩くと一軒家くらいの範囲に魔法陣が展開され赤々と輝いていた。
「魔術コード0001、魔術出力22%、圧縮倍率自動負荷。形状《円域型》。装填完了」
ガルムが魔術詳細詠唱という技術を使い、魔法自体の性質を設定する。
(ふうん?良いんだ。私の力使っちゃって。前は嫌だって言ってなかった?)
「うるせえ、黙って従っとけ」
ガルムの肩にはいつのまにか小さな赤い髪の女の子が座っていた。
(まあ良いか、力は貸すよ)
「黙って利用されてろ。俺がいなきゃ顕現できねえんだからそっちが感謝すべきなんじゃねえのか?偉そうになぁ」
(相変わらずだね。嫌いじゃないよ。それよりも、準備できたからいつでも良いよ)
「おう、そんじゃあ遠慮なく」
そうしてガルムは天に向けた剣をフレアフォートレスに振り下ろした。
「撃滅剣レーヴァテイン!」
視界を埋め尽くすほどの爆発に膨大な熱量によって周りがどんどん蒸発していく。
ただそれは、街の外だけだった。
グランの張った風の防壁によって熱も衝撃も街には届かなかったのだった。
「全く、血気盛んなことはいいことじゃが加減を知らんとはの。そして、あんな魔物に精霊の力なんぞ使って何のつもりじゃ?」
「あ?ただのストレス発散だ。でかいの決めてスッキリしようとしたんだよ。これから調査もあるからな」
「ふむ、ガルムが真面目に調査とは、この世も末かのぅ」
「おい老いぼれぇ。そろそろいい加減にしないと冗談抜きで燃やすぞぉ?」
「燃やされるのはごめんじゃが、手合わせだったらいつでもしてやらんでもないぞ?そうれ、今やるかの?」
「あ?望むところだかかってこいよ。老いぼれになんか負ける気しねえからな」
グランが街を守ったが、二人の戦いによって街が吹き飛びそうになったのは言うまでもない」




