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支配者の未熟者  作者: まっつん
入団編
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一章二十話《試作品》

「これ、報告した方が良いのか?」


目の前の紙を手にとって報告するかしまいかを悩んでいた。


こんなのいたずらか?とも一瞬思ったが、多分俺の知ってるみんなは絶対にこんないたずらはしないだろう。


だとすると、俺の知らない誰かになるわけで...多分報告した方が良いような気がしてきた。


俺は部屋を出て階段を降りリビングに例の紙を持って向かった。


「グリーダ、これ何か分かるか?」


リビングにちょうどグリーダがいたので紙を見せてから質問した。


「いきなり慌ててどうした...って、それ私もわからないわよ?心当たりなんてあるはずもないわ」


グリーダは俺の持っていた紙をじっと見てから首を横に振って答えた。


「えっと...つまり?」


「誰かが侵入してこの紙を置いた...というのが妥当ね。マーナがいない分侵入くらいならできるんじゃないかしら?バレた瞬間死ぬ覚悟でやらなきゃこんなことしないだろうけど」


「まあ、そうなるか」


正直、これを見た時になんとなくそんな気はしていた。


最近、妙に不可思議な出来事が結構起きている気がする。


そう考えると、何か裏があると思うが多分みんなもそう思っているだろうし事実誰かが裏で何かを企んでいたりするのだろう。


「それにしても、私はこんな置き手紙を書く輩を逆に尊敬するわ。ここに侵入して誰にも気付かれずに手紙だけを置いていくなんて...まるで私たちを試そうとしているみたいじゃない」


「あのーグリーダさん?表情がガチで怖いんですけど...」


「ふふ、これからが楽しみね」


グリーダはいつものように余裕のある笑みを浮かべているが、周りの空気というか雰囲気というか...そういう次元ではなく魔力そのものが視認できるレベルでグリーダの周りを渦巻いて感情の高ぶりわあらわにしていた。


「まあ、グリーダが最近すごく退屈していることだけはわかった。けどさ、感情を表に出すだけで魔力が視認できるほど溢れるってなんだよ?!しかも、そこら辺の物がガタガタ言ってるぞ?!壊れたりしないよな?」


「ああ、それなら大丈夫よ。壊れたらまた買い足せば良いもの。私たち金あるから」


「ああ、金持ってるのね」


なんだ、金持って...ん?そういえばみんなが金を稼ぎに行くところを見たことがないんだが?


「いや、金の出元どこだよ」


あ、思わず突っ込んでしまった。


なんか聞かない方が良い闇だったりして、なんて一瞬考えたが。


「何言ってんのよ。みんな稼ぎに行ってるじゃない。暇つぶしに野生の魔物を狩ってその素材の売却や討伐の報酬諸々で。ザイン、まさか私たちが不正に金を手に入れてるとか思ってないでしょうね?」


「いや、流石にそこまでは思ってない」


まあ、正直にいえばそんなふうに思っていた時期が俺にはありましたよ。


「嘘ね、私たちの稼ぎの方法が知らないのだったら不正を疑って当然だもの」


...数秒でバレた。


「まあ、だからといってどうこうするわけじゃないわ。それに、私たちだって人間世界で言う下級貴族くらいしか稼いでいないわ。それ以上魔物関連で稼ぐと異常視されるもの」


「ああ、それは納得」


魔物って結構一般人から見たらほとんど手に負えないような奴らだからな。


そいつらを日常的にバッタバッタ倒してたらそりゃあ異常視もされるわ。


「それにしても、種族ごとの世界で生息する魔物も違うなんてな。人間世界の魔物しか実際見たことないけど。てか、人間世界の魔物も本でしか見たことないけど」


「あら?そういえばザインまだ他の世界に行ったことないのね。たまに罪人の処罰のために人間世界に送り出したことはあったけど、たまには他の世界にいってみたいと思ったりするのかしら?」


「まあな、興味はあったけどそこまで行きたいとは思わなかったかな。他の世界だと何が起こるかもわかったもんじゃないし。しかも、俺が人間族だってバレたら大騒ぎだろ」


他にもいくつか理由があるが、主にこれらの理由が大体を占めている。


「まあ、ザインはもう近いうちに人間世界に遠征に行くわけだし、他の世界に行くのは最低でもその後になるわね」


「だろうね。まずはマーナの魔力器官を直すのと人間世界の調査だな」


マーナが治るのは数ヶ月と聞いていたしそれまで調査をメインに活動すれば良いだろう。


「そうね、人間世界の調査はザインに一任するわ。あとすごく脱線したけど例の置き手紙のようなものはあまり敏感になりすぎるよりも警戒しながら様子見た方がよさそうね。行動に移しようがないからどうしようもないわ」


「そうだな、そうしとくよ」


「あと、人間世界へ行く日程は明後日になったわ。それまでに準備を整えておきなさい」


「お、おう。随分いきなりだな。まあわかったけど。とりあえず荷物は適当に用意しとくよ」


とは言っても私物なんてそこまでないからな。


第一必要なかったし。


「あと、これを渡しとくわね」


そう言ってグリーダは水晶のような球体の多分魔道具だと思われる物を渡してきた。


「これって...」


「帰還用の魔道具よ。空間魔法で個々に転移できるようになってるから緊急の時に使いなさい」


「ああ、あのみんな持ってるやつか」


「厳密には違うわ。みんなが持ってるのは転移機能だけのものよ。今渡したのは私の持ってる魔道具と連動して会話ができるものよ。まあ、長く会話をすることはできないけどピンチの時に報告するくらいには使えるんじゃないかしら?まあ、仮にも私が戦いを教えたんだから人間世界でピンチになるなんて考えられないことよ。ちなみに他のみんなは通信魔導具を別途で渡しているけどそれはその二つを合わせた試作品よ。今回の遠征のついでに試しにね」


「これ、通話できるんだ」


「まあ、私のやつとだけだけどね。ないよりはマシでしょう?」


「いや、結構ハイテクだな...この魔道具」


手のひらサイズの転移用魔道具を受け取るとグリーダは「話すことは一通り話したからこれで失礼するわね」と言って地下の方に行ってしまった。


...さっきは訓練しないとか言ってたけどやっぱりしとこうかな。


「よし、行くか」


拠点を飛び出し草原へ駆けて行った。


「おう、お前も特訓か?前みたいに俺が相手してやろうか?」


草原でいざ魔法の特訓を始めようと言う時に偶然さっきから特訓していたであろうガルムが声をかけてきた。


「別に断る理由もないか。それじゃお願いするかな。けど、流石にガルムの全力についてくるのは無理だからな?」


ガルムの場合、先に釘を刺しておかないと気付いたら本気で叩きのめしにくるからな。


たまに言っても本気で叩きのめしに来たこともあったけど...。


まあ、俺はガルムの本気の魔法も一撃くらいなら全力で回避と防御に徹すれば受け切って立っていられるくらいには成長した。


そして何より、改変魔法も使い続けた結果、簡単な改変なら大きさも感覚で自由に操作できるようになった。


いちいち厳密に計算しなくて良くなったのはほぼ毎日やっている魔力制御の特訓の賜物だな。


「そんじゃ、ほい」


ガルムが片手から手のひら大の火の玉を俺の方に向かって投げつけた。


ガルムの手から離れた瞬間にみるみる巨大化し、轟音を立て、草原をえぐりながら俺の方に迫ってきた。


「マジで加減を知らないんだな」


俺は愚痴をこぼしながら地面をオリハルコンに改変させながら隆起させ防壁を築いた。


巨大な火の玉はそのままその防壁に直撃しそれでもなお勢いも大きさも変わらず押し進んで行きついには貫通し、俺のいたところに爆発した。


「さすがに、これなら...ガハ?!」


防壁を作り、その素材として地面を使ったのでもちろん地面に大き目の穴ができる。


その穴を広くしてさらに深く掘り進め、ガルムの魔力を頼りに真後ろの位置に付く形で地面から出てきたのだが、一つ俺の考えが甘かったことに気づいた。


それは、ガルムの反応スピードと身体能力だった。


俺が不意打ちを行うタイミングで振り返り俺の腹に拳を一撃打ち込みそのまま蹴りを入れられ吹き飛んでいく。


「グフ、ペッ!さすがに甘かったか」


口に溜まった血を地面に吐き出しガルムに向き直るもガルムの方はさっきと同じように余裕の表情で指を動かし「来いよ」と言うようにジェスチャーをする。


「本当に、俺は何と戦ってるんだろうな」


思わずそう口に出してしまうほど相手が常識はずれだと思ってしまった。


「まあ、それによって俺も強くなれるんなら結果オーライか」


その後もナーマが夕飯のために呼びにくるまで戦い続けた

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