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支配者の未熟者  作者: まっつん
入団編
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一章十九話《お見舞い》

「は、はい...うっ、ケホッケホ!どう...ぞ」


俺がマーナの部屋をノックすると、部屋の中から咳き込みながら返事をしたマーナの声が聞こえてきた。


「入っていいか?」


「えっと、は、はい」


マーナの返事が聞こえ、ドアを開けると寝間着でベッドで寝転がっているマーナと隣に心配そうにナーマがマーナをのぞいていたが、俺が入ってきたと同時に俺のことを睨んできた。


マーナの寝間着は、薄着で汗をすごくかいていたので濡れていて少し目のやり場に困る。


「どうして来た?殺されたい?」


「いや、ただお見舞いに来ただけだよ。あと、グリーダに言われてな」


「そう、ならいい」


ナーマはそれだけ言うと、部屋にあった水の入った容器から濡れたタオルを取り出すと水をある程度絞ってマーナの額に乗せた。


「ナーマ、マーナの症状は魔力器官の疲弊だよな?だったらなんで発熱なんてするんだ?」


先程から見ている限りマーナの顔は赤く苦しそうにしておりナーマは水で冷やしたタオルをマーナの額に乗せている。


この様子を見る限り熱があるのかと思いナーマに聞いてみた。


「魔力器官が正常に働かなくなると魔力が貯められなくて勝手に魔力を放出する。そうなると魔力の放出によって熱が発生して体に熱がこもってしまう。マーナの今の状態。さらに、魔力が正常に機能しないと体に悪影響で風邪のような症状が出る」


「なるほどな、それはきつそうだな」


多分その考え方で行くとマーナの魔力量によって発熱量が変わると言うことだ。


つまり、元の魔力量が高いマーナの場合物凄く苦しいに決まっている。


「お姉...ちゃん、ケホッケホ...。ありが...とう。ザインくん...も、お見舞いありがとう」


マーナは咳き込みながらもなんとか話せるようだった。


「ザイン、お見舞いに来たなら調理場から飲み物持って来て」


「え、まさかの雑用?まあいいけど」


唐突に飲み物を所望され少し驚いたがリビングに戻り台所の飲み物の蓋つきの金属の容器を持ってマーナの部屋に戻って来た。


「冷たい水でいいか?」


「それでいい。マーナ、飲める?」


「うん、一応」


マーナはベッドから半身起してコップに注がれた水を飲んで行く。


「汗だくだな。これ大丈夫か?むちゃくちゃ暑そうだけど」


「仕方ない。流石に私もこれはマーナの自業自得だと思う。マーナには前から魔法は控えるようにと私は言っていた」


「うう〜。それはもう謝ったからいいじゃケホッケホ!喉...痛い」


「ザイン、なんとかしなさい」


「んな無茶な?!俺にどうしろと?」


ナーマ、俺をなんだと思ってんだ。


「俺の魔法はそこまで万能じゃないぞ?人体の改変なんてしたことないしな。もしできたとしても危険だ」


「別に、魔法を使えと言ってない。何か喉を良くする方法がないか聞いただけ。他意はない」


「俺だってそこまで詳しくないぞ。安静にしろとしか言いようがないな」


「駄目、マーナが苦しそう」


「とは言ってもな...」


マーナが苦しそうなのはわかるが、グリーダから聞いたところによると魔力器官が回復するまでは数ヶ月かかる。


痛みや発熱なんかはすぐになくなるだろうがそれでも数日は苛まれるだろう。


「とりあえず、お粥でも作ってあげればいいと思うぞ。まあ、マーナがお腹空いたと思った時にナーマが作ってあげればいい」


俺の提案にナーマが少し考えたあと、こう答えた。


「一応、やってみる。みんなと同じものじゃなくてお粥を別で用意する」


ナーマは頷いて部屋のドアまで歩いて行った。


「材料買ってくる、マーナのこと見ておいて。変なことをしたら躊躇なく殺す」


そう言い残してナーマは部屋を出て行った。


「...相変わらず言葉遣いが物騒だな。もう少し穏やかにならないもんかな」


「すみません、うちの姉が」


「いや、マーナが謝ることでもないけど」


ナーマとマーナ、全然性格が似てないな。


見た目は髪の毛の色以外は顔つきや体型諸々結構似ているのに。


小さい背丈に幼そうな小顔。


髪は二人とも結んでおらず腰あたりまで伸びていて、動くたびに髪がなびいていた。


「ナーマ、黙ってれば可愛いのにな」


「あとでお姉ちゃんにいっておきますか?」


「いや、忘れてくれ」


俺の心の声がいつの間にか声に出ていて危うくナーマに殺されそうになった。


「マーナ、今のは本当にナーマには言うなよ。俺が殺される」


「ふふ、わかりました。まあ、私もあの態度には少し同情します。お姉ちゃん、うまくザインくんに接することができないんだと思います。ザインくんが来た当初、あの態度で接していたので今更変えることなんてできないんですよきっと。そこは、わかってあげてください」


「...ナーマ、俺に対してそんなこと思ってたんだな。まあ今更だけど」


マーナは一通り言い終わると息を切らして、数分後には寝息を立て始めた。


「さて、そろそろ戻るかな」


俺はマーナの部屋のドアを開け、部屋を出て行った。


「な〜んだ。うまいことできたか〜。正直心配して損した気分だよ〜」


部屋を出て自分の部屋に戻ろうとしたところでミリアと鉢合わせしていた。


「どこから聞いてたんだ?その様子だと結構盗み聞きしてたみたいだが?」


「ねぇ〜酷いよザイン。私は善意で様子を見に行こうとしたらザインたちが良い雰囲気だったからさ〜、ここで聞いてたんだよ」


「ミリアが善意でやっていたとしても盗み聞きしてたのには変わらなくないか?」


ミリアの言い訳を俺は一瞬で切り捨てる。


「ザイン、ミリアを責めないであげて。ミリアはマーナが心配でここにいたわけだから。別段悪意はないの」


隣からいきなり現れたのはベルナードだった。


「あ、ベルちゃんだけ隠れて〜。まあ結局見つかっちゃったけどね」


「いや、ミリアの場合わざと見つかってた気がするんだが...」


明らかに俺がマーナの部屋を出て行くときに声をかけてきたのだ。


そりゃあわざとだろう。


「うん。わざとだよ〜」


「やっぱりわざとだったか。ここにいたならミリアたちも一緒に入ってくればよかったのに。そうすればナーマによって俺が怖い目にあうことが少なくなる気がするから」


「それは明らかにザインが悪いでしょ」


「ぐっ、それは正論かも知れないが...」


ベルナードの言葉で俺のメンタルが傷ついているところで、ミリアが何か手に持っていることに気がついた。


「ん?あ、それは昨日の...」


「うん、昨日ザインが枕にしてた毛獣のモッフルって言うんだよ〜。マーナちゃんも気に入ればいいけど〜」


そう言ってミリアは手に持っていた毛獣ことモッフルを俺に見せびらかすように近づけてきた。


「モフ〜」


「やっぱり可愛いわね。うちにも一匹欲しいと思う時があるわ」


ベルナードは感慨深そうにモッフルを見つめながら言った。


やっぱりみんなこの子が好きなのか。


「確かに見た目可愛いしもふもふしてるし何よりあったかいからな。俺もミリアから貸してもらった時本当に寝心地良かった」


「ふふ〜。喜んでもらえてよかったよ〜。さて、マーナちゃんも多分寝てるだろうしこっそりこれをマーナちゃんの枕とすり替えますか〜」


そう言ってミリアはマーナの部屋に入っていき、数分もしないうちに出てきた。


「これでよし。あとはぐっすり眠ってもらって回復してもらうのが一番だね〜。この調子だと明日の朝まで寝ちゃうかな〜?」


「でしょうね。魔力器官の疲弊と身体的な疲労が同時に来てるんだもの。相当疲れてるわよ、きっと。今日はもうそっとしときましょ」


ベルナードもこう言ってるし、俺も今日はここまでにしておこうかな。


俺が自分の部屋に戻ると、部屋の中にある机の上に何やら紙が置いてあった。


天井の灯りに照らされて机の上にちょこんと紙が乗っているのだ。


俺はそれを不審に思いながらもそれを手に取り書いてあった文字を読み上げた。


「二次降神」


紙にはそれだけが書かれていた。

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