一章十三話《五年後...》
それからは毎日休むことなく魔法と体力づくりに励み、五年が経つ頃には《十ノ頂》たちとの生活に馴染み始めていた。
「おお、お前魔法打つの早くなったな」
「ああ、そりゃどうも...な!」
今はお昼時を過ぎたあたりでガルムと一戦交えているところで、他のメンツも外に出て俺たちの戦いを見ていた。
最近は他のメンバーと戦うよりも自分で特訓する方が多かったため、他のメンバーは俺が戦うのが久しぶりって感じだった。
だが、五年間特訓したのにもかかわらず全然追いつける気がしない。
みんな強いのは当たり前だが、それ以上に自分の力を限界まで引き上げる戦い方を熟知しているため、どんどん不利な状況に持って行かれることが多い。
世界で最も実力の高い住人って言われているくらいだからこれくらいがちょうどいいのかもしれないが。
「で、さっきから遠距離で刃物飛ばしてるだけじゃ俺には届かねえぞ。もっとデカイの撃てるだろ。出し惜しみすんなよ」
「いや、これでも一撃でジャイアントゲイザーくらいなら木っ端微塵になる威力だぞ?!どんだけくらわせればいいんだよ!」
俺の魔法をガルムに駄目押しされたため言い返す。
俺の魔法で大量の巨大な剣を絶え間なく撃ち続けているのにもかかわらずガルムは平然と喋りまくるのでもう俺はそれに呆れてすらいる。
俺が出した全ての剣を燃やし尽くし反撃すら入れてくるので攻撃しているこっち側の方が押されてすらいる。
あたり一面の草は既に燃やし尽くされ焼け野原のようになっているが、なんでかここは戦いが終われば元に戻る仕様らしい。
初代《変皇》って本当に何者だろうか。
こんな風に考え事をしている間にも炎と剣が空中を飛び回り一見幻想的な風景となっているのだが、多分普通の人間がここに来た途端塵も残らない様子が想像できる。
「はい、そこまでよ」
少し距離を置いたところで見ていたグリーダから声がかかった。
俺とガルムが手を止めそちら側を向くと、俺とガルムを除く全員がそこに立っていた。
「まあ、五年の特訓でこれくらい強くなれば上等ね。今の実力だと人間界最強は少なくとも狙えるわね」
「いや、そんなのなりたくねえよ。というかみんな話すことが物騒なんだよ」
ここにいるみんなそうだが、いつも物騒なことを口にするので、たとえ冗談であっても俺は結構ビクビクする時がある。
「あら、それじゃあご種族全ての頂点に立ちたいのかしら」
「いやだからそういう問題じゃないっての」
最近、話し方も慣れて来たからか打ち解けて全然緊張して話すこともなくなった。
それに、みんなもそれを受け入れてそれが普通だというように接してくれているので少し前からこの話し方が定着していた。
「そうだ、僕あとで神世界に用事あるからグリーダお願いね」
「はいはい、行くときは読んで頂戴」
そういえばジークは今日、神世界で知り合いの者に用事があるらしい。
詳しくは聞かなかったが朝そう言っていた。
「あ、みんなも来る?」
「何言ってんのよ。あんた個人の知り合いの用事でしょう?私たちは完全な部外者よ」
ベルナードが提案を一蹴した。
「あの、そこまで言わなくても...」
マーナはベルナードにそう言ったが、俺は多種族の世界に行くのはなんか怖いので行く気にはならなかった。
「うん、じゃあ僕一人で行って来るよ。とりあえず帰りは明日以降になると思うけど、まあ心配いらないよね」
「そうだね、じゃあジーク用事が終わったらすぐ帰って来てね〜」
ミリアは呑気に力の抜けた返事をした。
「あ、夕飯の支度...、グリーダ、私は今から買い物に行かなきゃ...。送って」
「あ、そうだったわね。食材切れてるんだっけ?すぐ送るわ」
そう言ってグリーダはナーマの肩に手を当てナーマの足元に魔法陣が形成されて行く。
そして、激しい光が辺りを照らした次の瞬間には、もうそこにナーマの姿は無かった。
「ったく、最近暇だよなー。罪人も全然現れねえしよぉー」
ガルムがソファーに座ってくつろぎながら愚痴をこぼし何やらオブジェクトのようなものを眺めていた。
これはなんでも、グリーダがマーナの魔法世界眼を利用して作った魔道具らしく、他の世界にいる罪人を確認することができる。
オブジェクトは全部で六つあり、それぞれの種族の世界に今自分たちのいる世界をそれぞれ見ることができる。
かたちはどれも球状で、半透明なボールが浮かんでいるような感じだ。
ここ最近は1日に三、四人ほどしか確認されていないのでそこまで忙しいってほどでもない。
ちなみに、罪人に罰を与えなければいけないのだが、それは別に殺さなくてもいいらしくしなない程度に痛い目を見てくれれば再犯率は結構下がるらしい。
同じ人が何度も罪を犯したり、とても許されるようなことじゃ無かった場合は殺すことをいとわない場合もあるらしいが。
そういう観点で見れば、たしかにこの仕事は血にまみれているのかもしれない。
とりあえず俺も暇になったので部屋に戻って魔力の循環と制御を繰り返し行う練習をしていた。
これをすることによって、魔法を撃つときによりスムーズに魔法が撃てるようになる。
魔法を主体として戦うメンバーはみんなこの方法で特訓してるらしい。
グリーダやベルナードなんかは常時魔力を制御しながら生活しているので、妖精族と遜色ないほどの魔力制御力を持っている。
妖精族は、相当な魔力制御力を持つ種族の代表のような感じでみんなに知られている。
ナーマはとても物理的な戦いだがあれもきちんとした魔法を使っている。
そう、神速魔法だ。
神速魔法は周りの時を遅延させて自分の時だけを加速させるというものだ。
それによって、普通の時間の速さでは考えられないスピードを出すことができるという仕組みだ。
その魔法のおかげでまだ一度もナーマには勝てたことがない。
「大変です!この世界に誰かが侵入してきました。おそらくは堕天族です」
「っておいおい、いきなりだな...」
ガルムはソファーから勢いよく立ち上がるとそう言って背中を伸ばした。
「えっと、場所はどこだ?」
「は、はい。ここから結構離れていますがすごいスピードで近づいてきています」
マーナは少し焦っている様子だが、あまり取り乱してはいないようだ。
「おーい!みんな集合だ!」
ガルムがそういうと、部屋に戻っていたみんなが出てきてリビングに集まった。
「そんじゃ、早速誰が行くか?」
ガルムは勢いよくそう言って周りを見たが、みんなはシーンと静まり返っていた。
「よし、全員行くか」
「いや、どうしてそうなった?!」
思わず俺がツッコミを入れてしまった。
「黙るってことはいけるってことだ。というかみんな暇だろ?」
ガルムがそういうと、マーナを除く全員が頷いていた。
「ここ、暇人ばっかだな?!」
またもや俺がツッコミを入れてしまった。
「あのね、諦めなさい。近いうちにザインもこうなるわ」
ベルナードが俺の肩に手を置きため息混じりに呟いた。
いや、あんたも行く気満々だろ。
「それじゃあ、僕はこれが終わり次第神世界に行くとするかな」
ジークはいつのまにか腰に剣をさしているが、いつも使っている呪界剣ベルセルクではない。
剣は神々しい真っ白なデザインで、纏っている魔力もいつもとは違っていた。
「ジーク、それなんの剣だ?」
「ん?これ?これはただのグリーダに作ってもらった付与効果付きの剣だよ。一応暴走しないようにってことで、どちらにせよ勝てるならそうしたほうがいいと思ってね」
「はいはい、話もいいけど、そろそろ行きましょう?侵入者は死ぬ覚悟があってきてるのよ。グダグダする方が失礼ね」
グリーダはそう言って手をパンパンと叩いてすぐにみんなは静かになった。
「ふぉっふぉ、それじゃあ、始めるとするかのぅ」
グランの言葉によって、俺たちは外へ駆け出して行った。




