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プロローグ
風が吹き、揺れる枝葉の間から差し込む木漏れ日。今日は昼寝日和だ。
「最近は忙しくてゆっくりする暇がなかったからな」
一本杉の木の幹に背中を預け、読んでいた魔導書を置く。大きく背伸びをすると思わずあくびが漏れてしまう。
「ふぁあ〜、一休みするか」
目をつぶり、昼寝の体制に入る。しかし
「カズキ〜!」
まぶたの裏にまだ光を感じるころ、俺の名前を呼ぶ女性の声が聞こえる。
「ああ、レナ。何かあった?」
「それが、ジャックとケリーが喧嘩しちゃって、二人とも魔力切れを起こして倒れちゃったの」
「それは大変だ。すぐに行くよ」
喧嘩して魔力切れを起こしたという教え子たちのため、俺は重い腰を起こしてヘレンとともに現場に向かう。
「 ──まったく、手のかかる教え子たちだ」
俺は思わずぼやく。しかしそうぼやきながらも駆ける彼の顔はどこか楽しそうだった。