作戦会議-明かされる事-
「作 戦 会 議 を 始 め る!!!」
「なんで劇画タッチなのですか!?」
タマちゃんよく分かったな。後でズギューン!ってしてやるよ。いや、しないけど。
ミニゲームが終わり、支度を終えた2人は不知火の部屋=監督室にやってきた。
ルナは髪の毛を纏め、ラフな格好でやってきた。うなじが素晴らしい...。それに、部屋に入ってきた途端、いい匂いが広る。
少しモジモジしながらこちらを見つめるルナは、とても色っぽかった。
「まぁ、ここで変なこと言ったらまた怒られるんだろうな...」
そっと心の中で呟き、何でもないよう装い、2人を席に座らせる。そこにはすでにアリアが座っていて、2人は畏まった様子でルナにお辞儀をした。
「そんなに改まらなくて大丈夫ですよ。楽にして下さい。」
「そうそう。そんなに畏まってちゃ疲れるぜ。」
「あんたは楽にしすぎよ!」
椅子にぐでーんともたれ、足を組む姿にルナが苦言を呈す。
場が収まらないと思ってか、カナデが口を開いた。
「えっと、それで作戦会議というのは...」
「あぁ、今後について話したい。」
今までのふざけた様子から一変、真剣な表情で話し出す。
「まず、対外戦だ。さっきアリアに聞いたんだが、1つ試合を申し込まれているらしいな。」
「はい。隼人さんが仰る通り、序列45位のパルスロストから試合が申し込まれています。」
この世界での対外戦は、その国の最高権力者を通して通達される。
王女であるアリアが知っていることに不思議はないが、よほどアリアは権力をもっているのだろう。
「まずはこの試合に関してだ。ルナ、キャプテンとして、この試合に勝算はあると思うか。」
「今の状態だと、9割は勝てると思うわ。ただ...」
「ただ、なんだ。」
「相手の10番がすごいんですよ...」
暗い表情でカナデが答える。
「チラッと資料は見たが、そんなになのか?」
「まぁ、調子の波が激しい子だから、その試合になってからじゃないと分からないけど...調子がよかったら手が付けられない。そんな選手よ。」
「その口ぶりからすると、対戦したことはあるんだな。」
「えぇ、まぁ。その時は負けちゃったけど。」
そのことを思い出してか、ルナは苦虫を噛み潰した様な表情をする。
「それで、提示された条件は何だったんですか?」
カナデがアリアに問いかける。
「出された条件は、二ホアニアが保有している聖剣の譲渡です。」
「聖剣?」
なぜそんなものを?と思い、おうむ返しをしてしまう。
「かなり高価なものではありますが、なぜこれを欲しがるのかは正直分かりません...」
アリアもどこか納得いかない表情で説明をする。
「相手の意図は読めないが、勝てない相手ではないってことだな。それならこちらとしては、わざわざ断る必要もない。それでいいか?」
不知火を除いた3人が頷く。
正式な手続きを行うため、アリアはこの部屋を去っていった。
緊張した雰囲気が少し和らぎ、次の話題へと移った。
「それじゃあ次に、ルナに聞きたいことがあるんだが。」
「何?」
吸い込まれるような瞳に、思わず目が奪われる。しかし、今は話をすることが最優先だ。
「さっき言ってた、お姉さんを取り戻すっていうのはどういうことだ?」
試合の時に泣き叫んで放ったその言葉。
それがどうしても不知火の心に引っかかっていた。
「それは、私が説明しますね。」
俯いたルナの代わりに、カナデがおずおずと手を挙げた。
「ルナさんのお姉さん、マリア・サルアージュは、以前は共に同じチームでプレーしていたんです。」
そう語り始めたカナデの言葉には、どこか後悔の色を感じられた。
「マリアさんはチームの中心で、皆を上手くまとめて、まさにチームの大黒柱だったんです。マリアさんのお陰でチームも勝利を収めていた。」
そこで一旦言葉を切り、どこか懐かしむ様子で視線を窓の外へ向ける。
「でも、負けてしまったんです。」
勝ち星を重ねていたこともあってか、当時の運営チーム(フロント)は浮かれ過ぎていた。
序列9位のポルトニアからの申請を何の考えもなしに受け、そして大敗を喫した。
ポルトニアは当然のようにマリアを引き抜いていった。そして、そこからチームは崩壊し、二ホアニアは最弱の烙印を押されるようになった。
窓の外を見ると、先程までとは打って変わって雨が降り始めていた。
「なるほどな。それでお姉さんを取り戻す、か。」
一通りの話を聞き、不知火は納得した様子でルナに言葉をかけた。
「今、お姉さんはどこのチームにいるのか分かるのか?」
「いいえ、分からないわ。引き抜かれた選手は、引き抜かれた時点で元いた国との連絡を禁止される。もしかしたらそのままいるかもしれないし、違うチームに引き抜かれてるかもしれない。」
「そうか。だから、勝ちに拘ってたんだな。」
勝てば必然的に誰かを引き抜ける。
そしていつか、マリアのことを引き抜こうと考えていたのだ。
「だから、私は勝たなくちゃいけないの。どんな手段を使っても。」
真剣な眼差しでこちらを射抜いてくる。
勝ちに拘る、何としてでも姉を取り戻す。そんな想いがひしひしと伝わってくる。
だか、「でもね」という言葉を紡いだルナの表情はとても柔らかかった。
「でもね。久しぶりに今日はサッカーを楽しめた。何の責任も感じずに、自分のしたいプレーが出来た。そのことは、本当に感謝しているわ。」
陽だまりのような柔らかいその笑顔を一生忘れることはないだろう。
いつの間にか雨は止み、綺麗な虹が空にかかっていた。
人物描写難しいよぉぉぉぉ。